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中国映画 「苦い銭」 監督:ワン・ビン ~第17回東京フィルメックス上映作品(特別招待作品)

 第17回東京フィルメックスで上映された作品について、順次書いて行きます。今日はその第11回です。
 本作品はフィルメックスの招待作品です。
 この映画は香港製作ですが、ワン・ビン監督の作品ですので、便宜上、中国映画とします。
 なお、上映作品の「まとめ」記事は、こちらです。

「苦い銭」  Bitter Money|苦钱|香港、フランス|2016|163分|
 監督:ワン・ビン  (WANG Bing|王 兵)
1_20161201130525456.jpg
 いいドキュメンタリー映画ですね。
 舞台は、中国浙江省湖州。上海市に近い。
 ここら一帯には、たくさんの縫製工場がある。大きな仕事を一手に引き受ける郊外の大きな工場から、そんな工場の下請けをする町工場まであって、また小さいながらも直で受注する町工場もあるようだ。

 この「苦い銭」では、街中で働く人々を描きます。ですが、監督作品特有の武骨な感触、包み隠さぬ現実描写、登場人物の剥き出しの感情は健在です。

 映画は、ベテラン従業員6人ほどを抱える、ある子供服の縫製工場の様子を描いて行きます。
 登場人物の従業員は、リンリンという女性以外は皆、地方から湖州に単身で来た出稼ぎの人たち。彼らは工場の階上にある共同宿舎に住込みで働いている。
 雲南省からはるばる来たばかりの15歳・新人の男の子と女の子(都会に来れてウキウキ)。工場近くの店で夫が商売をしている女性従業員のリンリン(写真の人)。もう一人の女性は子供を故郷に置いて出稼ぎに来た。
 そのほか、温和で無口な中年男性のベテラン従業員や、飲むと手が付けられない不満分子の年配従業員、作業の手が遅いのを悩む若手男性もいる。(時給ではなく、何着仕上げたかなのだ)

 シーンの様子は例えば、こんなだ。夫によるDV一歩手前のリンリン夫婦の激しい夫婦喧嘩にカメラが入り、延々と撮る。
 昼間の作業風景はもちろんだが、突然に急ぎの仕事が入り、夜中に起こされ仕事を始める様子も撮る。
 宿舎の部屋で自分に閉じこもる人の、心の中にもカメラは入り、つぶやきが聞こえる。(ここは街だが遊ぶ金がないのだ)
 社長は従業員に意外と優しいそんなやり取りもあるし、出荷の荷造り共同作業では働く場の絆が浮かび上がる。

 彼らの仕事はしんどいが、ミシン相手に座ってする屋内仕事。監督のほかの作品に出てくる、例えば炭坑製鉄所などの野外の肉体重労働じゃない。けれど、縫製の仕事に携わる彼らの様子からは、監督作品特有の武骨な感触、包み隠さぬ現実描写、登場人物の剥き出しの感情が、とても生々しく感じられる。言い換えると、NHKテレビ番組「鶴瓶の家族に乾杯」のような取材者と取材対象者との、表層的な慣れないは一切見られない。

 この作品は、市井の人々のありのままを、それも広大な国土の極一点の様子を描いたドキュメンタリーだが、でも、「中国の今」をしっかりと感じとれるのは、何と言ってもワン・ビン監督の魅力。
 ドキュメンタリーの対象となる事象をあまたの中から探し出し、その場を特定する力、出演を依頼する交渉力。そして取材撮影中に起こる予期せぬことも、見られたくない内面が剥き出しになる時も、それを許す出演者と、遠慮なく撮影する監督との人間関係。ワン・ビン監督の魅力だ。

【ワン・ビン監督の映画】  これまでに記事にした作品です。題名をクリックしてお読みください。

 「石炭、金」(2009年)、「無言歌」(2010年)

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