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映画 「大人は判ってくれない」   監督:フランソワ・トリュフォー

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 例えば、ミュージシャンのファーストアルバムの中には、「えも言われぬ素晴らしさ」を、今も維持し続けるものがある。
 フランソワ・トリュフォーの長編第一作、この「大人は判ってくれない」は、そんな魅力がある、いい映画。

0_20161224112719755.png それにしても、この映画を観て感じるこの新鮮さは、何だろうか。
 ファーストアルバムで名を揚げ、以後、技量を磨き経験を重ね、ビッグネームになるわけだが、大抵の場合、その第一作の魅力は、消えていく。映画についても、そうかもしれない。
 敢えて言えば、第一作の魅力は、(その時点で)才能を秘めた「素人」が、失敗を恐れずに作るからこそ生み出せる。若さかも知れない。とりわけ若い感性、これは、どうあがいてもベテランには出せない味。だから光る。

 物語は、子供の養育を嫌う両親と、その子の話を、子の視点で描こうとする。
 母親は再婚で、その子・アントワーヌ12歳 (ジャン=ピエール・レオ)は、母親の連れ子。共働きの両親は不仲で、母親には恋人がいる。家は中流の下レベル。

 アントワーヌが学校から家に帰っても、いつも親は居ず、日曜日も親は彼を構わない。しかし、アントワーヌは家事手伝いはすなおにしている。一方、学校では教師に反抗的で、要注意の悪い生徒。

 アントワーヌは悪友・ルネとつるんで、パリの街をぶらつく、学校を無断欠席し映画館に行く。世間的には不良予備軍。
 そしてアントワーヌはついに家出する。家を出て、ルネの叔父の印刷工場の片隅で一夜をあかし、さらにはルネの家に密かに居候。
 ルネの家はマンション最上階の金持ちだが、年老いてくたびれた風の父親(と若い母親?)はルネに対し、とても放任主義。

 アントワーヌは父親が勤務するオフィスから、タイプライターを盗み出し、ついに警察に保護される。そして、この機会を逃さぬ両親は、アントワーヌの養育を放棄する。つまり、親は警察にアントワーヌを少年院に入れてくれと願うのであった。これは、まさにネグレクトだ。(養育すべき者が子供の世話を怠り放置すること。)

 なんとも殺伐とした話にみえるが、そうでもない場面もある。
 アントワーヌに対する両親の(気まぐれな)愛情も描いているのだ。(例えば母親が息子をバスタオルで包んでやったり、一家で映画館に行ったり) この辺りは、話があまりに殺伐になり過ぎないようにとする、監督のバランス感覚か。
 また、ネグレクトに軸足を置いて観るのじゃなく、アントワーヌ少年の反抗期の話という見方もある。
 さらには漠然とだが、カウンターカルチャーの文脈で観る見方もある。(保守的な教師像や官憲や親の表現など)

 巨匠フランソワ・トリュフォーの映画ということで、大いに持ち上げられる作品だが、正直、お話の作りは平凡。
 しかし一方、これまでに、どれだけ多くの作り手が、この映画からいろいろの事を学んだことだろうか。それはたぶん、映像表現の素晴らしいセンスだろう。
 ま、しかし、ひたらく言ってしまえば、結局のところ、アントワーヌ12歳 (ジャン=ピエール・レオも当時12歳)のさりげない爽やかさが、この映画の最大の魅力、ということに落ち着く。

オリジナル・タイトル:Les Quatre Cents Coups|
英語タイトル:THE 400 BLOWS|
監督:フランソワ・トリュフォー|フランス|1959年|99分|
脚色:マルセル・ムーシー、フランソワ・トリュフォー|
撮影:アンリ・ドカエ|
出演:アントワーヌ・ドワネル(ジャン=ピエール・レオ )|その親友・ルネ・ビジェー(パトリック・オーフェー)|母親・ジルベルト(クレール・モーリエ)|父親・ジュリアン(アルベール・レミー)|ほか
下

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