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映画 「幕末太陽傳」   監督:川島雄三

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 佐平次 (フランキー堺)は仲間と連れだって、女郎屋で飲めや歌えの豪勢な遊びをするが、実は無一文。
 勘定を払えず、女郎屋の納戸(布団部屋)に留め置かれる。「居残り佐平次」のお話は、ここから始まるのです。

 女郎屋があるこの町は、東海道五十三次の第一番目の宿場町、品川宿。
 品川宿の町並みは海沿いに連なっていて潮の香りがするところ。女郎屋の部屋からは、広い海が見渡せて絶景地。東京湾の波がひたひたと岸辺を洗う。女郎屋の裏は、もう舟着き場だ。
 実は佐平次、結核にかかっていて、良くない咳をする。医者から転地療養を勧められていた。風光明媚な品川宿は、転地療養には最適の地。つまり、佐平次の居残りは、初めっから確信犯だった。

 さて佐平次、払えぬ勘定を女郎屋で働いて返そうとする。
 店の使用人たちに分け入って、使用人たちより上手に客あしらい。客からのチップをかすめ取る。
 また、客とのもめごとで女郎が困っていると、間に入って、太鼓持ち(男芸者)よろしく、なだめすかして問題解決。女郎から、ハイお駄賃。番頭よりも機転がきく佐平次は、そのうち、店のあるじから重宝がられるようになる。世渡り上手。

 これに加え、指名ナンバーワンを競い合う、女郎・こはる(南田洋子)と、おそめ(左幸子)のドタバタを映画は描きます。
 一方、「曾根崎心中」があるなら「品川心中」も、なんて洒落を女郎たちに言ってた、貸本屋金造(小沢昭一)が、憧れのおそめと舟着き場から飛び込んで・・・なんてエピソードも交え、あれやこれやの女郎屋を映画は面白おかしく描きます。そうそうそれから、こはるとおそめは、頼りになる男・佐平次を巡っても競い合います。

 ところで、そんな日々が過ぎて行くなか、佐平次と共鳴し合う男が二人現れます。
 その一人は、高杉晋作(石原裕次郎)でした。
 高杉も居残りだ。志士たちと一緒に遊んだ代金60両が払えない。
 高杉はこれまでに海の向こう上海を経験している。当時にしちゃ広い視野の持ち主だ。また、密かに江戸小唄(流行歌)の作家でもあった。硬軟を持ち合わせている男。
 一方、佐平次は、横浜でどうやって手に入れたのか、結核に効く蘭方(舶来の医術)の新薬を飲んでいる。佐平次は器用な男だがとりわけ、高杉が持つ舶来懐中時計を修理できる。この時、高杉は佐平次にシンパシーを感じたのです。そして佐平次も同様でした。
 のちに、高杉を見送る佐平次は、別れ際に高杉に言い放った。「サムライにしておくには、もったいない男だ!」 

 もう一人、佐平次と共鳴し合う男は、女郎屋の息子・徳三郎(梅野泰靖)だ。
 ある日、徳三郎は吉原遊郭の附馬を連れて家に帰ってくる。(附馬とは、勘定の不足を回収するため、遊客と一緒に家までついて行く遊郭の使用人)
 あるじからしてみれば愚息!の徳三郎だが、そんな徳三郎は自分の店で粋に立ち働く居残り佐平次に、共感を覚える。佐平次のやつ、ああして真面目にみえるが、実は俺と同じ、やさぐれだ。
 やがて佐平次と徳三郎は、店の使用人たちに交じって、賭け事に興じる仲になる。一方、佐平次は、徳三郎のなかに、徳三郎にゃ不似合いな、正義の心を発見しシンパシーを感じるのです。この二人には、無頼という同じ血が流れている。(徳三郎の正義感って何さ?、は観てのお楽しみ)

 やがて高杉は、大志を抱いて志士たちと共に女郎屋を去る。徳三郎は、幼なじみの女中おひさ(芦川いづみ)と駆け落ちを決め、女郎屋を去って行く。
 佐平次はというと、勘定の返済はもうとうに済ませていて、今や居残りでは無くなっていた。さりとて、このまま皆と一緒にこの女郎屋で働く気もない。
 何かぽつんと取り残されたような格好だった。結局、高杉や徳三郎らを見送った佐平次も、女郎屋を去るのであった。

 佐平次に、これという大志は無い。だが、高杉に出会い、大志を抱く者を身近にした佐平次は、大志を持てる器のある人間を密かに羨望する。佐平次のその気持ちの裏返しが、「サムライにしとくにゃ、もったいない男だ!」というセリフに出た。 
 利に聡く新しもの好きな佐平次は、でも所詮、やさぐれな男。
 そして、その場その場はチョコチョコ器用に立ち回れるが、自分の道、俺の人生を見い出せないでいる。おまけに結核、先は長くないかもしれぬ。
 頃は、明治まであと6年の幕末。世はおおいに揺らぎ始め、不安な日々は足早に過ぎて行く。
 はたして佐平次は、その後、明治の世を見たのだろうか。

 川島雄三監督の映画 「貸間あり」の主人公・与田五郎(フランキー堺)も佐平次と同類の男だった。(「貸間あり」の記事はこちらからお読みください)
 
監督:川島雄三|日活|1957年|110分|
脚本:山内久、川島雄三、今村昌平|撮影:高村倉太郎|
出演:居残り佐平次(フランキー堺)|高杉晋作(石原裕次郎)|女郎おそめ(左幸子)|女郎こはる(南田洋子)|貸本屋金造(小沢昭一)|女郎屋の息子・徳三郎(梅野泰靖)|女郎屋の女中おひさ(芦川いづみ)|やり手おくま(菅井きん)|女郎屋の主人・伝兵衛(金子信雄)|その女房お辰(山岡久乃)|番頭善八(織田政雄)|生粋の品川っ子・若衆喜助(岡田眞澄)|女郎屋の客・千葉の杢兵衛大尽(市村俊幸)|女郎屋の客・仏壇屋倉造(殿山泰司)|その息子で店で鉢合わす清七(加藤博司)|佐平次の連れ・気病みの新公(西村晃)|佐平次の連れ・呑込みの金坊(熊倉一雄)|ガエン者権太(井上昭文)|ガエン者玄十(榎木兵衛)|久坂玄瑞(小林旭)|志道聞多(二谷英明)|伊藤春輔(関弘美)|ほか多数
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【川島雄三監督の映画】
 これまでに記事にした映画から。
 それぞれ、題名をクリックしてお読みください。

 「貸間あり」、「洲崎パラダイス 赤信号」、
 「しとやかな獣」、「雁の寺」、「特急にっぽん




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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

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 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

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