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映画 「天使の涙」   監督:ウォン・カーウァイ(王家衛)

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 二人の男と、三人の女の話。舞台は、夜の香港です。
 このお話は、実は、話の底に、たっぷりのコミカルさをたたえながらも、それをシャープな映像で覆い隠して、ニヒルに冷たく自虐的に、明日に希望ない人々を描こうとしています。
 久々に観ましたが、今もって新鮮。賞味期限は、まだまだ先。

1-0_201701131244473d4.png 殺しのエージェント(ミシェール・リー)と、殺し屋(レオン・ライ)の二人は、タッグを組んで完璧な仕事をして来た。
 仕事をする上で、二人は決して顔を合わさない。エージェントの女は現場を下見しお膳立てして、ドライに指示を出す。殺し屋も女の指示通りドライに仕事をこなす。しかし、エージェントの女は密かに、殺し屋の男に気がある。片や殺し屋は、そろそろこの商売から足を洗おうとしている。

2-0_20170113124630322.jpg 口がきけないモウ(金城武)は、真夜中にあちこちのいろんな店で商売をしている。
 例えば、ある日は散髪屋、ある時はアイスクリーム移動販売車、次の日は屋台の豚肉屋、そして、ある夜はハンバーガーショップ。
 つまり、夜中に勝手に他人の店舗をこじ開けて、その店に入り込み、通りがかりの人間に、無理やり押し売りしている。時に腕力も使う。だが、モウはいたって善人だ。もっと言えば、幼い心のままに大人になってしまった男。

 その女(チャーリー・ヤン)は、愛する彼に電話していたが、その電話で彼が結婚することを知り、突如失恋した。そして、偶然その場にモウがいた。
 その後、なりゆきでモウは、逆上する失恋娘が彼の結婚相手に殴り込みをかけるのに付き合うことになる。でもなぜ?、それはモウの一方的な初恋だった。

3-0_2017011312594148c.jpg 殺し屋商売から足を洗おうとしているロンリーな殺し屋は、雨降る夜のマクドナルドで、いつになく人恋しかった。
 人けのない夜のマクドナルドに、もうひとりの客がいた。客の女は、殺し屋に近づき彼の気を引こうとする。その客は、金髪の女(カレン・モク)。結局、金髪の女は自分の部屋に殺し屋を引き入れて、夜が明ける。

 密かに殺し屋の男に気がある例のエージェントの女は、情緒不安定だった。
 ある夜、それは偶然だった。エージェントの女が金髪の女とすれ違った。そして互いにハッとする。互いに殺し屋の男との関係を嗅ぎ取ったのだ。
 その後エージェントの女は、引き際を探っている殺し屋に最後の仕事を出すが・・・。

 その夜、モウは勝手にこじ開けたハンバーガーショップにいた。
 ふと気付くと店の前に、あの失恋娘がキャビンアテンダントの制服で立っている。人待ちの様子。口のきけないモウは、女の気を引こうとするが、彼氏が現れ二人は去って行った。


4-0_2017011313204129c.jpg エージェント役のミシェール・リー、失恋娘役のチャーリー・ヤン、金髪の女役のカレン・モク、この三女優の演技の競い合い、これが見どころです。
 この映画、台詞は少ない。エージェントの女とモウの、独り言のようなナレーションが、それぞれの登場シーンに入る。これがうるさく感じないところが良い。

 登場人物五人のそれぞれの様子にも注目したい。
 ベストマッチングであった、エージェントの女と殺し屋の関係はご破算となり、完璧だった殺し屋は相手に撃たれてしまう。
 これに比べ失恋娘は、初恋するモウの助けを借りて、自身の失恋を克服し、新しい彼氏をさっさと見つけ、かつ航空会社に就職する。この現実的な失恋娘の、明日への行動力は素晴らしい。
 一方、金髪の女は、あいかわらず成り行き任せに、ひとり気ままに世間を浮遊する。
 残るモウは、いつまで経っても、子供の心。お人好しで失恋娘にいいようにされ、これまた、たまたまだったが、エージェントの女の面倒もみることになる。
 そうしてモウ自身は、焼き鳥屋でやっとまともな仕事を得るが店が閉店となり、また夜中の勝手な商売に逆戻り。おまけに、二人暮らしだった父親が他界し、モウはひとりになる。

 製作時の1995年当時、とうとう二年後に迫った香港返還は、香港の誰もが考えざるを得ないことだった。そう思うと、(映画は香港返還を語らないが)、この登場人物五人それぞれの生きざまは、不安を抱えて返還を迎える人びとの、対応の比喩だとみると、意味深長に思えて来る。

 最後になるが、同じくウォン・カーウァイ監督の映画「恋する惑星」(1994年)と本作、混同しないように。
 なお、本作の美しいビジュアル表現は、イギリス映画「ひかりのまち」(1999年、監督:マイケル・ウィンターボトム)に受け継がれているとも思える。(この二つの映画の記事は、題名をクリックしてお読みください)

5-0_20170113134827646.pngオリジナルタイトル:堕落天使
監督・脚本:ウォン・カーウァイ(王家衛)|香港|1995年|96分|
撮影 クリストファー・ドイル
出演:殺し屋(レオン・ライ)|エージェント(ミシェール・リー)|モウ(金城武)|失恋娘(チャーリー・ヤン)|金髪の女(カレン・モク)|

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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

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 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
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 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

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