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“かつて、「21世紀」は素敵な未来だった。”  ・・・「過去カラ来タ未来」,「31世紀からふり返る未来の歴史」,「2050年の世界 - エコノミスト誌は予測する」,「シリコンバレーで起きている本当のこと」 最近読んだ本。

  • Posted by: やまなか
  • 2017-03-15 Wed 06:00:00
  • 書評
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 かつて、「21世紀」と言えば、素敵な夢の響きを持つ「未来」を指した。 
 少なくとも1960年代前半(昭和30年代)までは、そうだったように思う。

 空を越えて ラララ 星のかなた
 ゆくぞ アトム ジェットの限り
 こころやさし ラララ 科学の子
 十万馬力だ 鉄腕アトム      (谷川俊太郎作詞)

 小学生の子たちは、図画の時間に未来の生活や未来都市を思い思いに描いたりした。
 東海道新幹線(0系)開業を心待ちにして、子供も大人もマスコミも皆が「夢の超特急」と呼んでいた。 
 無邪気であった。もちろん、当時は東西冷戦の時代、核兵器による第三次世界大戦が、明日にも始まるかもしれぬ不安はあった。しかし同時に、平和ための科学技術の進歩も目を見張るものがあった。明日への夢は、まだ残されていた。

 それが、いつしか、我々は「未来を楽しめなく」なり、未来に不安を覚えはじめ、そして現在、我々は「未来の不安」を真剣に考えている。

 夢見るような楽しい未来予測。
 現在に不安を抱きながらも、今よりもずっと先に、良い未来があるかもしれない、という「夢先送り」の未来予測。
 そして21世紀が近づき、科学技術のこの先は、おおよそ予測可能と考えられ始め、逆に一層に見えないのは、(科学技術では解決できない)、世界や地域の経済に、民主主義と資本主義の関係。
 そうこうするうちに、暴走する資本主義を問題視しながらも傍観するしかなく、「時間かせぎの資本主義 - いつまで危機を先送りできるか」※のタイトルのように、今の世は未来に「危機を先送り」する世の中になってしまった。
 そんなことを思いながら、下の本を読んでみた。
 ※社会学者 ヴォルフガング・シュトレーク (著)  みすず書房 (2016)

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 「過去カラ来タ未来」は、19世紀末1899年にフランスのイラストレーターが描いたイラスト集。そして、その各イラストに、アイザック・アシモフがひねくったコメントをつけている。
 (本の表紙と右のイラストは、クリックすると拡大します)

 イラストの世界を覗き見ると、陸海空の輸送技術や通信技術(電信)の発達によって、移動の自由や、居ながらにして情報を得ることが、未来では可能となるだろう、と各イラストは言っている。
 それは、欧州鉄道網、大西洋太平洋貨客航路、そして航空機が発達する1920~30年代や、第一次世界大戦を遠望していた。そしてその先、20世紀後半に向けて、明るい未来が拡がると考えた。
 地面や地域に縛られていた人々の、無邪気な開放感を感じる。裏返せば、かのイラストレーターは19世紀の気分を背負っていた。
 ちなみに「百年前の二十世紀 - 明治大正の未来予測」(ちくまプリマーブックス86)も面白い。


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 「2000年から3000年まで - 31世紀からふり返る未来の歴史」は、1985年発行の本。
 これは大胆な本だ。21世紀の100年間ではなく、なんと1000年先を予測しようとする。
 著者の2人は共に、ノンフィクションやSF小説などの著作がある人。
 著者のひとりは言う。「先進国の産業社会は、いずれ危機の時代を迎えるだろうという議論がここ20年あまり(1960~1980年代)広くなされている。自らの開発によって生じる諸問題に対処しきれないであろうというわけだ。人口過剰、資源の枯渇、環境破壊...。
 危機が訪れた時に我々のとるべき道は二つしか無いのではあるまいか。つまり、エネルギーをそれほど必要としないようにテクノロジーのレベルを下げてしまうか、もしくは劇的な転換をもたらすテクノロジー革命を待つか、である。
 続けて著者は言う。こうした議論は、どちらかと言えば悲観的な見方が支配的であるが、本書は後者の考え方を基礎にしている。現在の発展がなおも続くような未来。本書はそうした未来を描いてみた。」(下記の目次参照)
 現在の発展がなおも続くような未来。1985年当時の延長線上には素敵な未来があるという。
 ただし苦難はある。この本は、その苦難は「技術が解決」してくれるという楽天的技術信仰であり、多難な時期を乗り越えれば、1000年先は明るい未来が待っているという。

 本書は、「過去カラ来タ未来」と同じく、科学の発展と、こういうあういう技術があったなら、という夢物語。つまり伝統的な未来予測本。SF小説を書くヒントには、なるかもしれない。
 ただし、右上の表に、2200年に関東大地震があり東京壊滅、日本の全人口は1/4になってしまう数字がある。(世界10各国とその主要都市の人口推移1950~3000) 表はクリックして拡大します。
 
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 「2050年の世界 - 英『エコノミスト』誌は予測する」は、2012年発行の本。
 本書は英『エコノミスト』誌編集部の人々が書いた本なので、おのずと世界的視野でかつ主に経済ビジネスの観点から書かれた、38年後の未来予測となっている。
 本書冒頭で編集長が次のように述べている。
 「2050年の世界を予測することは、一見、非常識なほど大きな野望に思われるかもしれない。「専門家の予測はサルにも劣る」という本があるが、人類の歴史には100パーセントでたらめな予言が散りばめられている。
 だが、(我々は真の専門家なので大きなトレンドを正しく把握しているので)、2050年を予測することは、来週や来年を予想することよりも容易い。今後40年間に起こる重大な変化の一部はかなりの高精度で予測可能だ。」(下記の目次参照)
 と言われてしまうと、なんだ、自分たちの情報収集力や分析力を誇示するための本なのね、ということに帰着する。

 これからのわが社は...と、社長が全社員へ語りかけるには、明るい話大きな話(+ちょっと苦しい話)で終始しても(身内の事だから)いいのかも知れない。よその会社は大変なこともあろうが、わが社はうまく行くよ、本書の論調はちょうどそんな感じがする。
 かつ、本書を眺めて思うのは未来予測と言いながら、実は結局、今(2012年)現在のことを言っているに過ぎない様に思う。例えば、中国は一党独裁国家ならではの脆弱性に直面しなければならないだろう。世界的な高齢化によって、年金と健康保険医療費の増大は国家財政にとって大きな負担になるだろう等々。
 ちなみに、EU問題や、本書発行4年後の欧州への難民流入のことは一切ない。想定外?

 最終章(20章)の「予言はなぜ当らないか」には次のように書かれている。
 「今から40年前になされた予言をみると、悲観的な予言ばかりで、しかもそれはことごとく外れている。
 なぜ、そうした予言が外れるかと言えば、理由は二つある。ひとつは、良いニュースは目立たず、人々の記憶に残りにくいからだ。悪いニュースだけが記憶に残り、そのため人々は悲観的予言を受け入れてしまう。もうひとつは、人間が対策を講ずることを無視しているからだ。」 これは、一体何を言いたいのか...。

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 「シリコンバレーで起きている本当のこと」は、2016年発行の本。
 シリコンバレーで起きることは、遠からぬ先に、他の先進国でも起きる可能性があると著者は言う。
 本書によると、サンフランシスコやシリコンバレーを車で走って驚くのは、ガタガタの道路や壊れた道路標識らしい。
 地元に世界一、二位の時価総額の企業がありながら、自治体は財政難にあえぎ、インフラ整備にも十分なお金が回らない。IT企業の税金逃れに原因を求める声も上がっているらしい。
 シリコンバレーでは、激増するIT関係の富裕層と、低所得者層の間には埋めがたいほどの所得格差が生まれていて、極端な金持ちと貧困層に二極化した町となっていると言う。
 IT企業に勤める富裕層の流入で家賃が高騰し、昔からの住民が家を追われ、ホームレスとなるケースが続出しているらしい。そして、公的扶助が必要な世帯は3割、ホームレスの人口は全米3位。だが2015年の調査によると、シリコンバレーの平均世帯年収は約1280万円でこれは全米平均の約2倍。
 しかしシリコンバレーの企業は地元に対して何もしていない訳ではないらしい。自治体のプログラムに寄付している例は多い。納税をしないが寄付はする。
 フェイスブックCEOは次世代のために、保有する自社株の99%(5兆5千億円)を将来的に寄付すると発表しているが、寄付の受け皿になる新たに作った団体が問題になっていて、結局は寄付という名の新手の投資手法だという批判を受けているらしい。
 小さな政府、巨大な民間企業のロビー活動に左右される議会政治、放置される二極化する格差、弱まる民主主義...。 
 さて、日本の未来は、どこから見えるのだろうか。

【 目次 】

「過去カラ来タ未来」 アイザック アシモフ (著)、石ノ森 章太郎 (監修)  パーソナルメディア (1988)
原題:Futuredays: A Nineteenth Century Vision of the Year 2000


SOS!グライダー発進せよ!|ヘリコプターから偵察中|街角のエアー・ターミナル|飛行船の参戦 - ウィークポイントはガス袋|いたずらなエンジェル|密輸業者を追跡せよ|青き空、血色のしずく、弾け飛ぶ|飛行機野郎のごひいきカフェ|ハンティングはお好き?|みんな大好き、愉快なレース|のどかな光景 - 渋滞のない空の旅|未知の土地へ - 探検家の乗り物|羽を背負って、いざ仕事!!|旅の乗り物 - 海外旅行編|いなせなミスター・ポストマン|ある日の飛行機事故|深海にモンスター現る|海底ゲートボール大会?|サカサマ生活|ようこそ、潜水定期船へ|森のお散歩 - 海底編|鯨のバスと一人乗り海馬|ディナー・パーティーにはピルをどうぞ!|はいからなモデル・キッチン|ボタンを押せば、ハイ出来上り!!|教師より機械の声が響くとき|レディーの秘密 - プライベート・エステティックサロン|家事ロボット待望論|自動演奏交響楽団がやって来る|顕微鏡から怪物が!|ラジオでニュースを|ビジネスマンの必携アイテム|機械の織りなす農村風景|スピード・ヒヨコ・メーカー|あこがれの南極旅行|ユカイな高速ボート?|戦闘車はでくのぼう|"快適"移動住宅|"珍獣"!!!"馬"|平和のために|カードの由来|

「2000年から3000年まで - 31世紀からふり返る未来の歴史」 B・ステイブルフォード、D・ラングフォード (著)  パーソナルメディア (1987)
原題:The Third Millennium: A History of the World AD 2000-3000


◆第1章 2000年の世界
◆危機の時代:2000~2180
第2章 21世紀の戦争と平和|第3章 軍備拡張競争の終焉|第4章 東西の出合うところ|第5章 細菌戦争|第6章 「エネルギーの氷河時代」|第7章 核融合エネルギー時代の到来|第8章 エネルギー経済の改革|第9章 温室効果危機|第10章 新しい食品|第11章 失われた10億|第12章 海洋農業|第13章 都市革命|第14章 テレスクリーンの王国|第15章 雇用と再雇用|第16章 21~22世紀のレジャー|第17章 大減速|
◆復興の時代:2180~2400
第18章 エコトピアの創設者|第19章 苦しみの改善|第20章 人口の制御|第21章 世界送電網|第22章 産業のルネッサンス|第23章 世界経済の計画|第24章 月の開発|第25章 マイクロワールドの製作|第26章 宇宙産業と宇宙探検|第27章 バイオテクノロジーの新しい革命|第28章 生きた機械|第29章 人間の改造|
◆転換の時代:2400~2650
第30章 青春の泉|第31章 新しいライフスタイル|第32章 攻撃にさらされる都市と国家|第33章 人工のエコスフェア|第34章 太陽系の征服|第35章 恒星の地平線|第36章 人間の多様化|
◆新世界の創造:2650~3000
第37章 生と死の問題|第38章 長寿社会への適応|第39章 地球の相続|第40章 冒険的大事業|
◆エピローグ:進歩の終焉

「2050年の世界 - 英『エコノミスト』誌は予測する」 英 『エコノミスト』編集部 (著)  文藝春秋 (2012)
原題: Megachange: The World in 2050


第1部 人間とその相互関係
人口の配当を受ける成長地域はここだ|人間と病気の将来|経済成長がもたらす女性の機会|ソーシャル・ネットワークの可能性|言語と文化の未来|
第2部 環境、信仰、政府
宗教はゆっくりと後退する|地球は本当に温暖化するか|弱者が強者となる戦争の未来|おぼつかない自由の足取り|高齢化社会による国家財政の悪化をどうするか|
第3部 経済とビジネス
新興市場の時代|グローバリゼーションとアジアの世紀|貧富の格差は収斂していく|現実となるシュンペーターの理論|バブルと景気循環のサイクル|
第4部 知識と科学
次なる科学|苦難を越え宇宙に進路を|情報技術はどこまで進歩するか|距離は死に、位置が重要になる|予言はなぜ当たらないのか|

「シリコンバレーで起きている本当のこと」 宮地ゆう (著) 朝日新聞出版 (2016)

第1章 「世界を変える」情報発信地|第2章 富を生み出す町の知られざる顔|第3章 新しい技術と既存社会との衝突|第4章 IT企業vs.国家、新たなる対立|第5章 それでも、フロンティアを求めて|

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