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映画 「タクシードライバー」   監督:マーティン・スコセッシ

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 話の舞台はニューヨーク、マンハッタン。
1-00_20170224184413844.jpg 1973年に海兵隊を除隊して3年が経つ、トラヴィス(ロバート・デ・ニーロ)という26歳の孤独な男の話。

 重度の不眠症に悩む、無職のトラヴィスは部屋にいても仕方がなくて、夜間夜通し、街を歩いたり地下鉄やバスに乗って、ひたすら時間をつぶしていた。そうしてトラヴィスは、深夜の街、ニューヨークの裏側の醜さを、いらだたしく感じ取っていた。
 「夜の街は、売春婦、街娼、ヤクザ、ホモ、オカマ、麻薬売人といった人間のクズが歩き回っている。奴らを根こそぎ洗い流す雨は、いつ降るんだ。」トラヴィスはそう思い続けている。

 ある日トラヴィスは、食うためにタクシー運転手になった。勤務は夕方6時から朝の6時まで、休日は週一。
 タクシーのフロントガラス越しのネオンや、窓からの風や街の匂いに、トラヴィスの塞ぐ心は、少しは癒やされ静かに開放されるようだ。
 一方、深夜、街を流していれば、否が応にも売春婦やらが目に付くし、男が売春婦を同伴し騒ぎながらタクシーに乗り込んでくる。
 そんな毎日のなかで、トラヴィスの妄想は膨らんで行く。この先いつまでもタクシー運転手じゃだめだ、何かしてみたい。   

 ある夜、次期大統領候補の議員が偶然にも彼のタクシーに乗って来た。その時トラヴィスが知ったことは、社会階層の高みで世直ししようとする特権階級がいること、そしてその大統領候補はトラヴィスが考えるニューヨークの夜の街の浄化に無関心であったこと。
 つぎに、トラヴィスの心のどこかを動かすことになったもうひとつのことは、その大統領候補の選挙事務所にいる女性に恋したことだった。しかし、彼女はトラヴィスが住む世界とは違い過ぎた。

2-0_20170224184746e21.jpg それからのトラヴィスは、より深く考え始める。
 「俺の人生に必要なのは、きっかけだ。自分の殻だけに閉じこもり一生過ごすのはバカげている。」
 トラヴィスの妄想は、社会に対しての正義、世直しへと進んで行く。

 だが、彼に社会的地位も力もない、また世に認められる正義の思想や活動も持たないトラヴィスにとって、自身の正義をひとり貫くには、世間より、クズの相手より、優位な高みにいなければならない。
 トラヴィスは銃を手にし射撃訓練をはじめる。肉体も鍛えた。いつしか、トラヴィスは鏡の前で英雄になって行く。
 その結果、手ごたえがあった。行きつけの店が強盗にあっている場に居合せたトラヴィスは、その黒人青年を射殺。店のあるじは喜んだ。頭をモヒカン刈りにして大統領候補の街頭演説に出向いたが、ボディーガードに疑われてうまく行かなかった。

 そして、「俺の人生に必要なのは、きっかけだ。」と言う、そのきっかけになったのが、ひとりの娼婦だった。
 その娘はアイリス、まだ少女だ。それを知ったトラヴィスは、アイリスと話し、その稼業から救うと誓った。
 そののちトラヴィスは売春婦宿に押し入り、撃たれはしたが、ポン引きの男(ハーヴェイ・カイテル)やボスら3名を射殺した。

 後日、この事件はマスコミにとりあげられ、トラヴィスの正義と、アイリスの両親の感謝の言葉は、広く知れ渡ることとなった。
3-0_2017022418525549a.png しかし当のトラヴィスは、舞い上がることもなく、また淡々と、無数の無名のタクシードライバー達の中に戻って行った。
 ただし、ひとつ、トラヴィスは夢想した。それは、彼が一度は恋した選挙事務所の女性を、タクシーに乗せ彼女の家まで送る情景だった。

 公開から40年以上経ったこの映画をいま観て思うこと。
 ニューヨークの怖さや荒みを、当時、我々は今日思う以上に感じていて、この映画が描く世界をとてもすさんだ世界と思っていた。
 だから、トラヴィスをアクション映画のヒーローとして観る人がいたのかもしれない。
 でもいま観て思うに、この映画、案外、繊細な映画ですね。

オリジナルタイトル:Taxi Driver
監督:マーティン・スコセッシ|アメリカ|1976年|114分|
脚本:ポール・シュレイダー|台詞:ケイ・チャピン|撮影:マイケル・チャップマン|
出演:トラヴィス・ビックル(ロバート・デ・ニーロ)|選挙事務所の女ベッツィー(シビル・シェパード)|娼婦のアイリス(ジョディ・フォスター)|ポン引きのスポーツ(ハーヴェイ・カイテル)|ウィザード(ピーター・ボイル)|トム(アルバート・ブルックス)|大統領候補のパランタイン上院議員(レナード・ハリス)|タクシー会社の受付(ジョー・スピネル)|ポルノ映画館の売店の女(ダイアン・アボット)|銃のセールスマン(スティーヴン・プリンス)|ほか

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