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映画 「真夏の素肌」 ロシア映画 監督:ニギーナ・サイフルラーエワ

上
手前がセルゲイ、奥がサーシャ、右がオーリャ。オーリャの実父が、このセルゲイ。

 娘と父をテーマにする佳作。一見、青春映画らしい爽やかな表現をとっているが、少々トゲがある。

 モスクワに住むオーリャとサーシャは共に17歳で、卒業間近な女の子。
 このふたりの女の子が、真夏の黒海の海辺で過ごした、数日を描く物語。

1-0_20170428144553f3b.jpg オーリャは父親を知らず、母親と義父に育てられた。サーシャも父親が無くて育った。
 頭はいいがいつも控えめなオーリャ、一方サーシャは特に男性に対して奔放な子、ふたりは親友だが性格は正反対。

 黒海へ行く旅のプランは、実は、オーリャが実の父親に会ってみたい、と言い出したことが発端だった。
 しかし、行くことに決心したものの、初めて会う父親はどんな男なのか、会って何を話せばいいのか、そんなことに悩むオーリャに、サーシャは「ふたりが入れ替わろう」と提案する。つまり、オーリャがサーシャに、サーシャがまだ見ぬ父親の娘に、成りすます。

 そうして、ふたりはオーリャの父親セルゲイを訪ねた。彼は、黒海の海辺に建つ、粗末な一軒家にひとり住んでいた。
 事前に知らせはしたようだが、セルゲイはふたりを拒否するでもなく歓迎するでもなく、黙って家に招き入れ、そしてそれから、この三人の、数日の物語が始まる。

 セルゲイも、娘のオーリャを一度も見たことは無い。
 かつて、黒海のこの地に住むセルゲイと、モスクワから来たオーリャの母親はここで愛が芽生えた。
 しかし、何があったのか、彼女はその後ひとりモスクワへ帰ってしまった。それ以来、セルゲイはオーリャの母親に会っていない。そして母親はモスクワでオーリャを出産したのだった。

 “父と娘の初めての出会い”を演ずるサーシャを、そばで見守るオーリャは、恥ずかしさも不安も無く、父親を客観的に見ることができた。
 片や、父親がいないで育ったサーシャは、セルゲイに父親的な存在感を感じてうれしい、そして、ちょっといい男。
 でも、セルゲイは娘に対して、いい感情を抱けないでいる。露出度の多い蓮っ葉なファッション、村の男キリルに積極的に迫って行く娘。(実はサーシャだが) 

 だが、そんなセルゲイ自身も、若い女性とその一時を楽しんでいることがわかる。
 オーリャは思う。こんな粗野な男をなぜ母親は好きになったのか。おまけに、セルゲイの稼ぎは夜間の密漁のようだ。

2-0_20170428145316252.png そんなこんなを見たオーリャは、実父に嫌悪感を抱き始める。
 「私が実の娘です」と言う気も無くなり、行き詰ったオーリャは自暴自棄に陥る。オーリャはその夜、サーシャが付き合いだしたキリルとドラッグパーティで一夜を明かした。
 そしてまた、その夜は、サーシャがセルゲイや密漁仲間と一緒に漁へ出かけた夜だった。このことがきっかけで、サーシャとセルゲイの距離は縮まった。

 オールナイトのドラッグパーティが終わったその朝、砂浜で下着姿で目を覚ましたオーリャは、実父に(嫌悪感を抱きつつも)涙ながらに、私が娘だと告白の電話をした。
 セルゲイはこれを聞いて、漁から帰ったサーシャを家から追い出した。しかし、サーシャは夜になって密かにセルゲイの納屋に入り込むのであった。

 ラストシーン。オーリャとサーシャが、海の見えるバス停でバスを待っている。
 オーリャは二つ目の告白をサーシャにする。「私、あなたの彼キリルと寝たわ。」
 それを聞いたサーシャは、「そう」と言いながらオーリャに背を向け、海の方を見ながら、ひとりそっと微笑んだ。そう、それは言わぬ方がいい。

 さて、ふたりがやってきた黒海のこの海辺は、ウクライナの東、黒海に突き出たクリミア半島です。
 この映画製作の2014年、この地域はクリミア自治共和国としてロシア連邦に編入されました。ただし、ウクライナ政府およびアメリカ、欧州連合(EU)、そして日本などは、ロシアへの編入を認めていません。

オリジナルタイトル:Kak menya zovut|
英語タイトル:NAME ME
監督:ニギーナ・サイフルラーエワ|ロシア|2014年|91分|
脚本:リュボーフィ・ムリメンコ|ニギーナ・サイフルラーエワ|
出演:サーシャ(アレクサンドラ・ボルティチ)|オーリャ(マリーナ・ヴァシリエヴァ)|セルゲイ(コンスタンチン・ラヴロネンコ)|キリル(キリル・カガノヴィッチ)|スヴェタ(アンナ・コトヴァ)|

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