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映画 「ションヤンの酒家 (みせ)」 中国映画 監督:フォ・ジェンチイ

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 お話の舞台は、市街地再開発が盛んな頃の、中国の大都市、重慶市です。
 この重慶の片隅にある下町、吉慶街(チーチンジェ)という所は、10数年前に出来た小さな飲食街ですが、店内で調理して、道にテーブルと椅子を出して客をもてなす、昔ながらの雰囲気を残す飲食街です。
 独身で美人の女主人ションヤンは、長年、ここで鴨の首(鴨肉)を「売り」にする、酒家を営んでいます。
 ですが、この吉慶街の一画については、今まで幾度も再開発の噂がありました。そして、また、新たな計画の話が噂され始めました。

 映画は、ともに苦労人の男女のラブストーリーに、この再開発の一件を絡ませます。
 ただし、この映画、登場人物の説明が、いろんな場面のセリフの中でなされるため、字幕を見過ごすと、身分差がある単純な恋愛ものにしか見えないかもしれません。(過去を振り返るなど説明のために挿入するシーンはありません。)

 さて、主人公の女主人ションヤンについての話を始めましょう。
 長年、吉慶街で店を営んでいると言いましたが、それにしてはションヤンは若くみえます。でもたぶん、30代前半でしょう。
 ションヤンは10代の頃、切羽詰まってこの商売を始めたようです。
 彼女の母親は、彼女の弟を産んで他界し、そして父親は愛人が出来て、家を出て行きました。
 ションヤンは生きて行かねばなりませんでした。そのうえ弟のジュウジュウを母親代わりに育てなくてはなりません。彼女は、何ごとも自分のやり方で問題解決する、勝ち気さを身につけて行きました。
 実はこの映画、ションヤンの恋物語以外に、たくさんの事を語りかけます。以下、ションヤンという女性の背景です。

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 ションヤンの弟ジュウジュウが、この2年前から麻薬に手を出してしまいます。ミュージシャンになれなかったからでしょうか。
 中毒症状が激しくなって、ションヤンはジュウジュウを、重慶にある薬物中毒の更生施設に密かに入れました。
 
 ションヤンの店には、住込みの女の子が働いています。アメイといいます。働き者です。ションヤンも頼りにしています。
 アメイはジュウジュウが好きです。でも、この愛は一方通行のようです。まして施設内で禁断症状のジュウジュウは、それどころではありません。ですが、ションヤンはジュウジュウとアメイを一緒にさせようと思っています。
 また、田舎に住むアメイの親が、我が娘をションヤンに預ける時に、「都市の戸籍が欲しい」とションヤンに頼んだことも、彼女は忘れてはいませんでした。

 かつて、ションヤンの父親が家を出た後、父親は住んでいたアパートを人に貸したのですが、その後、今の住人(その甥)は、部屋を明け渡してくれません。ションヤンは、この部屋をジュウジュウとアメイが住む部屋にあてたいと前から考えていました。
 そこでションヤンは、実家のこの権利問題を何とか解決したいと、何度も役所(住宅管理所)に通っては、その所長に相談していました。

 その所長には、ウツ症状の大学生の息子がいることを、ある時ションヤンは知ります。
 実家を取り戻したいションヤンは、所長にうまく取り計らってもらいたいために、彼の息子とアメイを一緒にさせようと画策します。天秤に掛けたのです。
 アメイにジュウジュウをあきらめさせ、同時に実父にも働きかけて、実家はションヤンの名義となりました。
 のちにションヤンは、高層マンションに住まう裕福なアメイを訪問します。(重慶の戸籍を取得しました)

 そして、もうひとつのサイドストーリー。
 ションヤンには、影の薄い兄がいます。株に熱をあげる女房の尻に敷かれています。
 兄夫婦にはトアルという一人っ子がいます。出産時、この女房は母乳が出ず、流産したばかりのションヤンが母親代わり(乳母)をしました。そして今も、ションヤンは小学生のトアルを預かっています。
 これまで、恋多きションヤンですが、どれも長続きしませんでした。そして、まだ若きションヤンですが、弟のジュウジュウとトアルを我が子のように育ててきました。
 なのに、兄嫁はションヤンに辛く当たります。将来、トアルが住むべき部屋を、勝手に名義変更したと。

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  さて、こうした面倒な事の真っ最中に、ションヤンは恋をしました。
 相手は中年の客、卓さん。当初、彼は足しげく店に通って来ては、いつも離れた席から遠目にションヤンを眺めていました。
 彼は高級車に乗っています。ふたりの噂は吉慶街で広まって行きます。
 しかし、実は彼は吉慶街地区の再開発プランを推進する民間側のボスだということが、郊外に出たデートの帰りに発覚します。ションヤンは怒りを抑えることができませんでした。
 さらには、彼はションヤンの今後については、十分面倒見ようと言いますが、結婚する気はありませんでした。
 ションヤンは激しく降る雨の中、卓さんの車を降りて、ひとり立ち去って行きました。
 
 この話、小説という方法ではうまく表現できても、映画にするには難しい題材です。
 映画は、込み入った多くの事を、ていねいに語るには向いてないかもしれません。
 でも、ションヤン役の女優・タオ・ホンを起用し、一点突破したようです。
 ただ、少し残念なのは、ションヤンに対する態度を急変させる卓さんの唐突さ、及びアメイのその後が、十分に描き切れていないこと。

オリジナルタイトル:生活秀
監督:フォ・ジェンチイ|中国|2002年|106分|
原作:チ・リ|脚本:チウ・シー|撮影:スン・ミン|
出演:ションヤン(タオ・ホン)|卓さん(タオ・ザール)|弟ジュウジュウ(パン・ユエミン)|兄(チャン・シーホン)|兄嫁(ウー・ルイシュエ)|兄の息子トアル(リー・ショウチェン)|アメイ(ヤン・イー)|住宅管理所所長(ロ・ドーユァン)|所長の息子(リュウ・ミン)|ションヤンの父(ジャン・ミンショウ)|ションヤンの義母(ズン・メイズウ)|

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