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映画 「故郷」(1972) 倍賞千恵子、井川比佐志、笠智衆、渥美清  監督:山田洋次

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砕石を満載し、今にも沈みそうな木造運搬船が、小舟を曳いてゆっくり瀬戸内の海を行く。船は老朽化している。
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船長で一家のあるじ、精一。
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船の機関士でもある、妻の民子。子供が二人いる。

 

 どっしりと腰を据えた脚本、じっくり観るに値する、いい映画。

1-0_20170723141037d2f.png 話の舞台は、瀬戸内海に浮かぶ小島と、海上を行きかう木造の砕石運搬船という、日ごろ馴染みのないドラマ設定が、観る者に異色な印象を与えてくれる。
 くわえて、ドキュメンタリー映画の要素も加わり、1972年当時のライブな感覚が味わえる。

 広島県の倉橋島という島に住む、石崎一家の物語です。
 一家の稼業は、一抱えもある砕石を採石場で積み込み、沿岸の埋立て地造成現場の沖合まで航行し、そこで石を海に投棄する仕事。
 この砕石専用の運搬船は「石船」と呼ばれ、特に倉橋島の各家では、この石船を持ち稼業に励む家々が多かったのです。

 石崎の家は、精一(井川比佐志)、民子(倍賞千恵子)の夫婦に、子が二人、そして精一の父(笠智衆)の、五人家族。
 夫婦はそろって船に乗るので、子は専ら祖父が面倒をみている。
 海を見下ろす島の丘には、小さな畑があって民子はそこで野菜を作っているが、買い物に行く間がなく、毎日の食材に困ることがある。
 それを補ってくれているのが、軽トラ行商の魚屋の松下(渥美清)だ。家族同然で、「今日の余りモノだよ」と言って、気安く魚を分けてくれるのだ。

 倉橋島は今も、のどかな様相を見せるが、この島にも時代の波が押し寄せていた。
 石船の運搬単価は下落し、ダンプトラックの陸送に取って代わろうとしていた。これに対抗するには、船体を大きくした鋼鉄船に乗り換えるしかなかった。しかし、石崎に毛頭そんな金はない。
 そんなことより、石崎の早急の課題は、今の木造船のエンジンが寿命に来ていること。砕石運搬の仕事を差配してくれる親方に相談したが、金の融通は無理だった。

 かつて精一と一緒に船に乗っていた弟は、先のない石船の仕事に見切りをつけ、島を離れて今は勤め人になっていた。
 そして、ついに、精一も石船稼業を諦めた。
 人の紹介で、広島県尾道にある造船所に勤めることになったのだ。家族の移住である。精一の父は島に残ることになった。

 東京から来てこの島に移り住んだ魚屋の松下(渥美清)が、映画の中で独り言のように言っている。倉橋島というこんないい島に、どうして住み続けることが出来ないんだろうね。
 また精一は、零細な稼業に押し寄せる時代の波について、妻の民子にこう言っている。「なんで、わしらは大きなもんに勝てんのかいの・・・」と。


監督:山田洋次|1972年|96分|
原作:山田洋次|脚本:山田洋次、宮崎晃|撮影:高羽哲夫|
出演:石崎精一(井川比佐志)|精一の妻・民子(倍賞千恵子)|精一の実父・石崎仙造(笠智衆)|精一の弟・石崎健次(前田吟)|魚屋の松下松太郎(渥美清)|ほか

【 山田洋次の映画 】 ~これまでに記事にした作品から (下記題名をクリック)

二階の他人」「下町の太陽」「馬鹿が戦車でやって来る」「霧の旗」「故郷

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