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映画 「大統領の理髪師」 韓国映画  監督:イム・チャンサン

上
左から、理髪師のソン、大統領、側近。

 
 社会的にとてもシリアスな題材を、敢えてコミカルなタッチで映画化にするには、勇気が要ると思います。

 大企業による公害被害とその訴訟勝利という実話を扱った、ジュリア・ロバーツ主演映画「エリン・ブロコビッチ」が、まさしくそうした映画でした。(この記事はこちらからどうぞ)

1-0_201708011416255d3.jpg 本作の「大統領の理髪師」も、基本こうしたコミカルタッチな映画です。
 ここでのシリアスな題材とは、1960年代、韓国大統領の独裁政治によって犠牲となった一般市民の悲劇です。
 でも、観てみるとわかりますが、意外に軽い仕立てに作られています。

 「大統領の理髪師」で終始一貫、固有名詞なしで登場する「大統領」とは、実は第5代大統領の朴正煕です。(1917-1979)
 (その娘は第18代大統領のパク・クネ(朴槿恵)ですね。)
 ただし、理髪師のお話は創作です。つまり創作のお話を語ることで、映画は朴正煕の独裁政権を批判しています。

 「エリン・ブロコビッチ」は、ジュリア・ロバーツ演ずる普通一般の女性が、ある偶然の機会で、弁護士代行として公害訴訟に立ち向かうコミカルな話でしたが、本作「大統領の理髪師」は、ソン・ガンホ演ずる理髪店の男が、ある日、無理やり、大統領の専属理髪師にされてしまいます。このことから喜劇と悲劇が始まります。

 ジュリア・ロバーツ演ずる女性は高卒で、弁護士として求められるハイレベルな専門知識からは、ほど遠い人物でした。一方、ソン・ガンホ演ずる理髪師は文盲で世事に疎い男です。両作品ともに、この知識ギャップが喜劇設定になっています。
 
 さて、ソン・ハンモは定期的に官邸(青瓦台)に呼ばれ、官邸内に新設した理髪室で、国で一番偉い男(独裁者)の、髪を切りヒゲを剃ることになります。こりゃ、誰でもビビります。しかし名誉でもあるわけです。

 ここで事件が起きます。
 細菌性の下痢症状を抱えた北朝鮮の兵士(スパイ)が、ソウルに侵入して来ます。そしてソウル市内にこの細菌が拡がりはじめます。
 韓国当局はこの細菌をマルクス病菌と名付け、下痢をした人間は北朝鮮と接触したヤツだと断定し検挙し始めます。
 また同時に当局は、急に下痢の症状になった市民は、「スパイと接触したヤツ」に接触して、下痢になった人間だと断定し、尋問をし密告を促します。
 ソン・ハンモの理髪店がある町内では、彼の知り合い幼なじみ数人が疑われ、尋問を受け拷問を受け処刑されてしまいました。

 そんなある日、ソン・ハンモの店に、大統領側近の偉いサンが散髪に来ていました。(店は官邸のお膝元の街にあります)
 そして運命です。その時、ソン・ハンモの息子ナガンが、お腹が痛いと父親に訴えました。偉いサンはギロッと睨みます。
 大統領から寵愛を受けているソン・ハンモですから、国の民としてもっとも模範的態度を示さねばなりません。

2-0_201708011423262e7.jpg 彼は息子を連れて近くの交番に出頭します。交番は町内にあって警官とは親しい間柄です。まさか、息子を当局に渡すことはなかろうと踏んだのですが、ナガンは当局に送られ電気拷問を受けます。
 しかし、ナガンの身体は電気を通されても、なぜかただ、ムズガユイだけでした。

 数日後、送り返されてきたナガンは半身不随になっていました。
 ソン・ハンモは体制に対し煮えたぎる怒りを覚えますが、大統領や側近の前では平静を装います。
 一方で、ソン・ハンモは息子を背負い、息子の足を治せる民間医療の医者や仙人を訪ね歩きました。そして、韓国一の仙人に会うことができました。

 映画のラスト近く、大統領が側近によって暗殺されてしまいます。
 ソン・ハンモのその後は、いかに。彼の息子の足は一体どうなるのか! 観てのお楽しみ。

 ちなみに、映画はクーデターで政権を掌握した朴政権についてだけではなく、ベトナム戦争で負傷した韓国軍兵士の心、朴大統領の前任の不正選挙についても語っています。


オリジナルタイトル:孝子洞理髪師|효자동 이발사|
監督・脚本:イム・チャンサン|韓国|2004年|116分|
撮影 チョ・ヨンギュ|
出演:ソン・ハンモ(ソン・ガンホ)|その妻のキム(ムン・ソリ)|その子ナガン(イ・ジェウン)|大統領(チョ・ヨンジン)|警護室長チャン・ヒョクス(ソン・ビョンホ)|中央情報部長パク・ジョンマン(パク・ヨンス)|ほか

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