Home > 洋画評だけ見る 直近50作 > 映画 「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」 監督:ジム・ジャームッシュ

映画 「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」 監督:ジム・ジャームッシュ

上

 何世紀も生きて来たヴァンパイア夫婦の話。

1-0_201708041043400af.jpg その昔、人間の首筋に噛みついて生血を吸った彼らも、21世紀では、それはもう蛮行で、節度あるヴァンパイアはドリンクとして血を飲んでいる。

 夫のアダムは、病院の血液検査室の男に大金を渡し、輸血用の新鮮な血を横流ししてもらっている。
2-0_20170804105034de4.jpg 妻のイヴは、ヴァンパイアの老作家(ジョン・ハート)がどこかから仕入れてくる信頼度の高い血を分けてもらっている。

 なにせ近年、人の血の多くは汚染されていてヴァンパイアにとっては危険である。汚染されていない清い血の継続的供給はヴァンパイアにとって死活問題であった。

 アダムは何世紀も前から作曲家で、今ではクラシックの作曲家となってしまった人々とも活動してきた。
 ただしアダムはヴァンパイアなので、「人間」の歴史の表舞台には出て来れず、自身の曲を他の(人間の)作曲家に託したりしてきた。アダムは控えめな男であったが、そのことが不満と言えば不満であった。

 そして、20世紀半ばからは作曲するロックミュージシャンとして生きて来た。
 彼の部屋は、1960~70年代のエレキギターの名器や、1905年製のギブソンのアコースティックギター、エフェクター類やドラムセット、ヴァイオリンやリュートなどなど、様々な楽器がグチャグチャ無造作にそこらじゅう。そして、自宅録音のために、スタジオ録音用の往年の機器類が所狭しと並んでいる。
 イヴの部屋には、あらゆる国のあらゆるジャンルの書物がそこらじゅうに積まれている。(日本の文庫本もある)
 夫婦とも、実にマニアックな方々である。監督の理想の部屋なんだろうか。

 さて、お話の方はというと、大したこともないので割愛。観てのお楽しみ。(123分、一応飽きずに見通しました)
 敢えて言えば、ストーリーのスジよりも、ストーリー設定に重きがある映画といえましょう。
 あるいは、監督の世界観を覗き見ることができる作品なのかもしれない。

 気に入った台詞が2つありました。
 イヴが、鬱になりかけのアダムに言う。「自分の心にとらわれるのは、生きる時間の無駄づかいよ」
 もうひとつは、モロッコの港町のライブハウスで夫婦して聴いた、素晴らしい若手歌手を指して、アダムがイヴに言う台詞。「有名になるには、もったいない才能だ」 (確かに素晴らしい歌手です!伴奏は控えめなギターと不思議なパーカッションだけ)
 有名になったが故に才能が消えていくミュージシャンを、何世紀に渡ってたくさん見て来たアダムの言葉。(監督の名言か)

 とても驚いたことがありました。
 映画の半ばあたりで、突然、ある曲が流れます。
 その曲は、女性ソウル歌手のデニス・ラサールが歌う「TRAPPED BY A THING CALLED LOVE」(デニス・ラサール作詩作曲)
 この曲は、デニス・ラサールのアルバムのA面1曲目に収録されてる曲で、私が好きなソウルのベストに入るLPなのです。 (Westbound Records ‎– 1972年)
 いや、ビックリ!
 イヴはこの曲をかけて、元気のない旦那とダンスします。

 つっこみを3つ。
 アダムが病院で輸血用血液を分けてもらうシーン。
 病院の男(人間)がアダムに言う。アダムが首にかけている聴診器を見て、「それ、古いね、70年代のモノかい?」
 私がアダムなら、こう言いかえす。「あんたの座ってる、その椅子、古いね、70年代の椅子だろ」
 男が座ってる椅子は、スチール製、キャスター付のねずみ色のくたびれたオフィス家具なんです。
 ちなみに、監督は1953年生まれ。70年代が懐かしいのでしょうかね。

 アダムの手足となっている男(人間)が、アダムが欲しがった貴重なエレキギターを探しだして納品しに来たシーン。
 ケースからおもむろにギターを取り出して、アダムが試奏する。しかし、だ!
 何か、気の利いたリードのフレーズを弾くのかと思いきや、たどたどしく2フレットで指3本のAしか押さえない・・・、それだけ。オイオイ、これ失笑でした。(楽器店で恐るおそる試奏する中学生みたい)

 3つ目は、本作の題名です。英語タイトルをまんまカタカナにしただけ。ハナから売る気がない素振りが素晴らしい。

 最後に、これまでに記事にした映画で、ヴァンパイアの映画「SUCK サック」、これもロックがらみでした。

下 
オリジナルタイトル:Only Lovers Left Alive|
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ|アメリカ イギリス ドイツ|2013年|123分|
撮影監督:ヨリック・ルソー|音楽:ジョセフ・ヴァン・ヴィセム|
出演:アダム(トム・ヒドルストン)|イヴ(ティルダ・スウィントン)|イヴの妹のエヴァ(ミア・ワシコウスカ)|老作家マーロー(通称キット)(ジョン・ハート)|アダムの手先として動くイアン(人間)(アントン・イェルチン)|ワトソン医師(人間)(ジェフリー・ライト)|


【ジム・ジャームッシュ監督の作品】 ~これまでに記事にした映画から
(題名をクリックしてご覧ください)

パーマネントバケーション」「ナイト・オン・ザ・プラネット」「ストレンジャー・ザン・パラダイス」

【 一夜一話の 歩き方 】

最新の記事はこちら

直近の記事100 リストは、こちらから (All Archives)

邦画評だけ見る (直近掲載の50作品)   洋画評だけ見る (直近掲載の50作品)  

TOPページ (映画記事の人気ランキング、新作映画みました、映画の特集)

邦画の題名リスト    ◆洋画の題名リスト

邦画の監督名リストから記事を探す   ◆洋画の国別リストから記事を探す

一話 (京都、旅行、美味など)      書評   美術

クラシック音楽    ポピュラー音楽   



関連記事
スポンサーサイト

Comments: 0

Comment Form
Only inform the site author.

Trackback+Pingback: 0

TrackBack URL for this entry
http://odakyuensen.blog.fc2.com/tb.php/1636-60d07211
Listed below are links to weblogs that reference
映画 「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」 監督:ジム・ジャームッシュ from 一夜一話

Home > 洋画評だけ見る 直近50作 > 映画 「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」 監督:ジム・ジャームッシュ

タグクラウド
プロフィール

やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

RSSリンクの表示
Tree-CATEGORY

Return to page top