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映画「シークレット・サンシャイン」 監督:イ・チャンドン

上2

 
 とても良く出来た、いい映画です。
 脚本も演出も女優チョン・ドヨンの演技も、どれもが素晴らしい出来。

1-0_2017102214411826c.jpg ですが、テーマは実に重いです。(ここで引いても結構)
 家族愛、夫との死別、誘拐犯による息子の死、神の愛・救い(信仰の喜び)と癒えぬ心、救われぬ信仰、自殺未遂、救いのないその先。

 映画は、総じては安易な表現(例えば劇画的な)にならず、リアルでていねいな描写に徹しています。
 もう少し言えば、登場人物のその場の様を、セリフに頼らず上手に感情表現し、映像表現しています。 
 主人公のみならず脇役たちについても、いるいるそんな人がというように活き活きと描かれ、映画の中で息づいています。
 
 未亡人シネ(チョン・ドヨン)は一人息子のジュンを連れ、ソウルから密陽(ミリャン)に引っ越してきた。
 港町プサンから北へ入ったこの小さな街は、亡夫の故郷であった。シネは、母子の人生の再出発を、夫が愛したこの街に託したのだった。

 シネは、ものをストレートに言う女で勝気。夫の親・親戚と、またシネの唯一の肉親である実弟とも疎遠なのは、彼女のそういう性格がそうしているのかもしれない。

 シネは商店街にある住宅付き店舗でピアノ教室を始めた。
 ソウルという大都会から来たそんな未亡人シネに、田舎街の人々の視線が集まるのは当然だった。

 シネは、同じ商店街で自動車修理店を開くキムという独身男性(ソン・ガンホ)と知り合いになる。キムは下心を抑えながら、新参者のシネの面倒を親切にみてやり始める。
 そんな中、シネは、郊外の土地を買う不動産投資の姿勢をキムに見せ始める。キムはさっそく彼の人脈で不動産屋を紹介した。
 しかし実は、シネにそんな金はない。街の人々の、未亡人母子へ向けての好奇心や哀れみを強く感じるシネは、持ち前の勝気さから、こんな虚勢を張ったのだ。

2-0_201710221443474a5.png だが、未亡人が金を持っているという噂は、男の心に悪を呼び込む。(これが息子ジュンの誘拐、身代金要求につながってしまう)

 シネは身代金を指定場所に置き、警察が動き出し、そして無情にも、シネは息子ジュンの死に遭遇する。(誘拐犯がジュンを殺してしまった)

 一方、シネに哀れみを感じた信者たちは、彼女にクリスチャン信仰を勧めた。
 その時、シネは言った、「なぜ神はジュンの命を奪ったの」

 子を失ったシネの悲しみは、絶望の域を超え耐えがたきものだった。
 張り裂ける心を抱えるシネは、すがるように救いを求めて、ついに教会の扉を開けた。

 従順な信者になったシネは、神のあふれる愛を感じ始める。教会での礼拝、布教活動、地域集会に加わることで、語り合える友もでき、シネはやっと心の安定を得られるようになる。心は癒され幸せであった。
 しかし、家でひとりポツンといる時、シネはジュンの気配を感じ、聞こえるはずのないジュンの声を聞くのであった。

 シネの信仰が深まるなか、彼女は、「汝(なんじ)の敵を愛し許せ」という神の言葉通りに、誘拐殺人犯の男を許そうと思うと信者仲間に打ち明ける。
 自動車修理店のキムは、シネが刑務所で男と面会しようとするのを止める。牧師は「あなたが刑務所に行くとき、神はともにいます」と言った。信者に付き添われ、キムの運転で、シネは刑務所へ向かい、男と面会する。

03-.png 「神の恩寵と愛を伝えるために、私はここへ来ました」
 これに対し男は言った。
 「神は、この罪深き罪人にも訪れました。私の罪を許したのです」
 「えっ、神が・・・罪を許したですって?」
 「そして、心の平安が訪れました、あなたのためにも私は祈ります」

 なんというすっきりした男の笑顔!男は刑務所内で信者になっていたのだった。
 シネの動揺はあまりに強烈であった。刑務所の駐車場で彼女は気を失い倒れてしまった。
 家に戻ったシネは狂気のさた、信者集会所のガラス窓に石を投げつけ、そのあと家で手首を切って自殺を図り、血まみれで前の道にさ迷い出て、精神病棟に入院。
 
 なぜにシネは・・・。
 退院後、信者の集まりでシネは吐くように言う。
 「汝の敵を愛し許せと神は言うが、許したくても、私は許せない。
  男は、もう神に許されて、心やすらかだって言った。
  私が男を許す前に、なぜ神は許したの?
  私が苦しんでいる時に、あの男はすでに許され、救われていたわ。
  なぜ、そんなことが!」

 その後のシネは、まるで抜け殻の様だった。

 韓国の人口の約3割がキリスト教徒で、キリスト教が最大勢力の宗教らしい。
 シネとの出会いから、ここまで、キムはずっとシネを案じている。このキムという男にも注目してください。
 ちなみに、タイトル名「シークレット・サンシャイン」は、シネが住み始めた街・「密陽」の「密」をシークレット、「陽」をサンシャインと読んで名付けたと、トークショーで監督が言っていた。


オリジナルタイトル:밀양(ミリャン)|密陽 Secret Sunshine|
監督:イ・チャンドン|韓国|2007年|142分|
原作:イ・チョンジュン|脚本:イ・チャンドン|
出演:イ・シネ(チョン・ドヨン)|キム・ジョンチャン(ソン・ガンホ)|ジュンが通う塾の教師・誘拐殺人犯(チョ・ヨンジン)|シネの弟・ミンギ(キム・ヨンジェ)|シネの一人息子ジュン(ソン・ジョンヨプ)|犯人の娘チョンア(ソン・ミリム)|薬局の女性キム執事(キム・ミヒャン)|カン長老(イ・ユンヒ)|シン社長(キム・ジョンス)|洋品店の女主人(キム・ミギョン)|牧師(オ・マンソク)|

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