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台湾映画「ジョニーは行方不明」,ワン・ビン監督香港映画「ファンさん」,インドネシア映画「見えるもの、見えざるもの」 ~第18回東京フィルメックス上映作品

この3作品の中では、冒頭の「ジョニーは行方不明」が抜きんでて良い。

『ジョニーは行方不明』   Missing Johnny|強尼・凱克|【コンペティション対象作品】
台湾|2017|105分|監督:ホァン・シー(HUANG Xi)|
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 いい映画です。
 インコを飼う女と、知的障害が少しある少年、そして建物修理便利屋の男が登場する。舞台は台北の街。

 女がひとり住むアパートに少年の家族も住んでいる。だからこの2人は見知らぬ関係ではない。
 便利屋の男が働く現場に少年も下働きとして働いているが、男が少年を雇っているわけではない。
 女の部屋はアパート屋上にあるペントハウスで、その屋根に登って、ある日、男が雨漏り修繕をする。

 映画はこのように、3人は互いに浅い関係にあることを示していく。
 観客の方は、ここから次に何か物語が紡ぎだされるのではと期待しつつ待つことになるが、この導入部的なものが、物語の前奏曲的なものが、実は後半まで続いていく。
 その前奏曲に描き込まれるのは、台北の都会の中で、3人それぞれが抱える孤独の事情だ。
 この前奏曲はとても静かで繊細で美しい。

 そして映画はラストに向かう。
 同郷の男がアパートに現れる。女はこの男に長年囲われて来たのだが、その夜、もう耐えきれずに女は部屋を出て逃げる。
 出たところに偶然、便利屋の車が駐車していた。
 買い物を終えた便利屋が車に乗ろうとして、車内の女に気付く。ふたりの無言が続く。
 そしておもむろに便利屋は車を走らせる。

 ラストシーン。一番の見せ場である。
 夕暮れの台北市街を背景に、高速道路インターチェンジの遠景映像。
 その遠景の中、女を乗せた車が突然、インターチェンジ入口へ向かう登り坂で止まってしまう。エンジン故障で道をふさいでしまった。
 すぐに渋滞発生。車を降りて慌てる男と女。女は車を懸命に押す、後ろの車の運転手も手伝い始める。
 やがて、後続車が動き出す。
 陽が落ちるのは早い。映像は夜景となり、幾重にも交差する高速道にたくさんのヘッドライトが行き交う。
 それは台北に住む幾多の人生が行き交う夜景。その中に男と女もいる。 
 そして、どこかから舞い降りた安堵が観客を包む。

 本監督のデビュー作。
 あのホウ・シャオシェン監督に教えを受けて来たとのこと。
 作柄は、ホウ・シャオシェンに通ずるところもあるが、より繊細で21世紀的。
写真
便利屋の男
写真
知的障害が少しある少年

『ファンさん』   Mrs. Fang|方繡英|【特別招待作品】
香港、フランス、ドイツ |2017| 87分|監督:ワン・ビン (WANG Bing)|
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 認知症の老婆が自宅で衰弱死していく。
 その様子を凝視する監督独特のスタイルで映画はすすむ。

 老婆はもう話はできない、表情は無く意識はもうろうとしている。娘や息子や孫、親せきが集まって来る。
 彼らはベッドサイドで老婆を見守りながらも、静かではない。

 彼らの間で会話が絶えない。大きな声の話。
 それは、親族の集まり具合が悪いの、誰それがどうのこうのといった話。向こうの人はよく言い合いよくしゃべる。
 こういうシーンが長回しで続く。
 そおして、このごく普通の田舎の人々それぞれの生活意識が少し見えてくる。

 今回の作品は定点観測だ。撮影場所は屋外もあるが、多くはこの家のベッドサイド。
 一点を掘り下げる。がしかし、展開に乏しく飽きる。字幕に現れない情報を我々が取れないからかもしれない。

 安らかな死とは言えなくとも、事故死や突然の死ではない限り、見送る時、当事者は意外に冷静なものだ。
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『見えるもの、見えざるもの』   The Seen and Unseen|【コンペティション対象作品】
インドネシア、オランダ、オーストラリア、カタール|2017|86分|監督:カミラ・アンディニ(Kamila ANDINI)|
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 仲の良い双子の姉弟の話。
 弟がある日突然に倒れ入院した。脳腫瘍だった。
 病室で姉が弟に寄り添う。
 弟に寄せる姉のその思いを、バリの民話になぞらえて映画は幻想的に表現していく。

 こういう表現はアニメに向いている。
 実写だと、どうしても、大人が振り付けをした子供の芝居にしか見えない。
 そうは言っても、白い服の精霊(?)役の子供たちが、身体を丸くして病室の床や草原をマリのようにゆっくり転がる振り付けは、実写でも幻想的だった。舞踏派の舞台のようであれは悪くない。

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