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映画「西陣の姉妹」 監督:吉村公三郎

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長女・芳江(三浦光子)、次女・久子(宮城野由美子)、三女・富子(津村悠子)


 生活の糧を失う弱者たちを、新藤兼人が「京都」を舞台に脚本化、これに「偽れる盛装」「夜の河」と京都を描くを得意とする監督、吉村公三郎が腕を振るう。(下線部から当該記事をご覧ください)
 物語は昭和27年ごろ、西陣の織元の老舗「大森屋」の三姉妹を描く。

 振り返れば戦前から、和装のニーズは減っていた(と、セリフにある)。
 くわえて、手工業から機械化工業化へと進む中、京都西陣は手工業の伝統を守り、かつ高級品を生産するがゆえに沈滞、衰勢の状況であった。

 日本中の呉服屋に名の通った老舗大森屋、ここのあるじ大森孫三郎がある日、ピストル自殺。
 しかるべき各方面に借金を重ねても資金繰りがうまく行かずのことであった。
 残されたのは、妻のお豊(東山千栄子)と、長女・芳江(三浦光子)、次女・久子(宮城野由美子)、三女・富子(津村悠子)の三姉妹に、番頭の幸吉(宇野重吉)や大森屋の機(はた)を織る織り子たちと、西陣にある下請け工場(こうば)の織り子たち。そして莫大な借金。

2_201711300845125bc.jpg もとより、妻のお豊と三姉妹の女四人の誰もが、大森屋の今後を考えることはできなかった。
 そこで番頭の幸吉が、再建に向けての手はずを整えた。幸吉の申し出にお豊が承諾したのだ。幸吉は番頭でありながら心底、大森屋の人間であった。
 しかし、結果これがうまくいかなかった。肝心の問屋が破産し納品できなかったのだ。

 織り子たちがざわめき始める。
 わけても、高利貸しの男・高村(菅井一郎)が一気に高圧的な態度に出る。
 高村は既に、大森屋のあるじに金を貸していた。そして番頭・幸吉の手はずには、高村からの新たな借金も含まれていたのだ。
 高村は大森屋所蔵の掛け軸、器など道具類を持っていく。
 一方、下請けの織り子達が、何かしらの金を求めて談判にくる。
 これらに対応したのは、唯一気丈な次女・久子(宮城野由美子)であった。

 また、高村の高圧的な態度に刃向かったのは、日ごろ従順でおとなしい番頭の幸吉であった。
 事件の発端は偶然の出来事だった。
 高村に差し出す大森家の道具類の中に、袋に納めた日本刀があった。その日本刀を高村が、幸吉の手から強引に奪い取ろうとしたその時、高村は袋ごと刀の鞘(さや)の部分を握って引っ張ったため、結果、抜き身の刀を幸吉が持つ格好になり、そのままに幸吉は高村をじっと見た。

 そして幸吉は日本刀片手に高村に歩み寄る。恐れをなした高村は後ずさりし玄関へ。ここで幸吉が高村に切りつける。
 傷を負った高村は、あわてふためいて大森家を飛び出し、大通りへ。
 刀を持って追いかける高村。この沙汰を見守る通り沿いの人々。
 ついに警察が駆け付け、野次馬が取り囲む中、幸吉は現行犯逮捕。

 結局、人が中に入り情状酌量の末、幸吉は大森家に戻って来る。
 戻った幸吉の胸に次女・久子が顔を埋める。これまでの久子の緊張が解けて行く瞬間であった。

 しかし、大森家に金を貸した人々、高村はじめ、大森屋あるじと幼なじみの佐藤(進藤英太郎)などは、ついに土地家屋の引き渡しを迫る。
 そんな中、久子は幸吉に頼みごとを言う。戦争で夫を亡くした姉の芳江(三浦光子)と結婚してくれと。
 これを聞いて幸吉は静かに驚く。私はあなたが好きだった、そしてそれをご存知ですよね。久子は承知とうなずいた。
 そののち、大森屋の人々は散り散りに去り、家屋が取り壊され、敷地が露わになったころ、久子は西陣を去っていくのであった。

 菅井一郎演ずる悪役・高村の悪行に観客が打ちのめされる中、大通りを逃げ走る高村を、幸吉が日本刀を片手に追いかけるシーンで、観るものみな、幸吉アッパレと溜飲を下げることになるのでしょう。

 大森屋のあるじは、祇園の芸者・染香(田中絹代)を囲っていた。あるじの死後、この染香は、あるじが彼女のために建てた家を売って金に換え、妻のお豊に差し出した。また、再びお座敷に出ることにした染香は、お茶屋で高村に会うが皆の前で彼を罵倒する。ここでも観客は喜ぶだろう。

 大森屋が自殺した現場は、先斗町の鴨川に面したお茶屋の座敷であった。彼は幼なじみの佐藤(進藤英太郎)をこのお茶屋に呼んで再度の借金を頼んだが素気無く断られてしまう。そのあとの自殺であった。
 映画冒頭、このお茶屋の外観をカメラは鴨川から構える。二階でどんちゃん騒ぎをする景気のいい人々を撮影し、そして一階の大森屋がいる部屋を映し出す。

 番頭の幸吉が、兄に会うシーン。このシーンは堀川にかかる橋の上。2人が立つ背景に路面電車(京電)が堀川の鉄橋を渡っていくのが見える。ここは、堀川中立売。
 京電とは私鉄・京都電気鉄道でのちに京都市電に併合された。堀川を走るこの京電は北野天満宮から京都駅間を走った。
 吉村公三郎監督の1956年製作の「夜の河」では、京電が堀川の橋を渡って川の東を走るシーンが出てくる。
 ついでに言えば、1952年の本作「西陣の姉妹」では街の道は舗装されていない。「夜の河」ではアスファルト舗装はされてないが、奇麗に地固めされているのが見える。

監督:吉村公三郎|1952年|110分|
脚本:新藤兼人|撮影:宮川一夫|
出演:長女・芳江(三浦光子)|次女・久子(宮城野由美子)|三女・富子(津村悠子)|西陣の織元「大森屋」の主人・大森孫三郎(柳永二郎)|その妻・お豊(東山千栄子)|番頭の横山幸吉(宇野重吉)|大森屋の主人の二号さんで祇園の元芸者・染香(田中絹代)|大森屋の主人と幼なじみで西陣出の男・佐藤義右衛門(進藤英太郎)|高利貸しの男・高村義雄(菅井一郎)|三女・富子の婚約者・安井浩(三橋達也)|大森屋の直雇いの織り子(織工)の長・次郎爺(殿山泰司)|番頭の幸吉の兄、名古屋で工場を経営・横山岩次(近衛敏明)|ほか

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