Home > 洋画評だけ見る 直近50作 > 映画「黄金のアデーレ 名画の帰還」 主演:ヘレン・ミレン 監督:サイモン・カーティス

映画「黄金のアデーレ 名画の帰還」 主演:ヘレン・ミレン 監督:サイモン・カーティス

上
「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I」

1-0_20171218161131722.jpg
 事実に基づいた映画ですが、ハラハラワクワクのエンターテイメントな仕上がりになっています。
 この有名な絵画の背景を知ることができる面白い映画です。
 映画は、絵画の所有権を巡って主人公が裁判で勝訴するストーリーですが、法廷内の論争シーンは多くなく簡潔。よって字幕を懸命に追わないと置いて行かれるという様なことはありません。

 オーストリアのユダヤ人実業家がクリムトに描かせた妻の肖像画(1907年完成)は、戦時中、ナチスドイツによって強奪され、戦後その絵は、オーストリア政府の美術館にて所有されていたました。(ウィーンのベルヴェデーレ宮殿内にあるオーストリア・ギャラリーという美術館)

2-0_201712181613257fe.jpg しかし、肖像画に描かれた女性アデーレの姪にあたるマリア・アルトマン(アメリカ在住)は、この肖像画の所有権をめぐってオーストリア政府を相手取り裁判を起こし、2006年にやっとオーストリア政府から取り戻しました。
 映画はこのマリア・アルトマンを主人公(ヘレン・ミレン)にして、ことの顛末を物語にしています。

 事実はこうでした。
 実業家のフェルディナント・ブロッホ=バウアーの妻アデーレ(1881- 1925)は、自分の肖像画をオーストリア・ギャラリーに寄贈するようにと遺言を残し、1925年に死去しました。
 しかしその後、夫のフェルディナント(1864- 1945)は、肖像画の所有権はもともと自分にあるとして、絵画をオーストリア政府へ寄贈せず、遺言で甥姪に相続するとして1945年に死去しました。(芸術愛好家フェルディナントはクリムトへの発注主でありクリムトのパトロンでした)

 つまりオーストリア政府はアデーレの遺言に基づき肖像画を所有してきました。
 一方、相続人の一人、マリア・アルトマンは弁護士とともに、叔父のフェルディナントの遺言書を資料館から発見し、オーストリア政府を相手取り訴訟を起こします。

 この有能な若き弁護士は、マリア・アルトマンの友人の息子ランディ・シェーンベルク(ライアン・レイノルズ)でした。
 ランディの祖父は、オーストリアの作曲家アルノルト・シェーンベルクというのも興味深い話です。
 
 肖像画は、138 x 138 cm 、油彩で描かれその上に金彩を施した絵画。
 勝訴までは「黄金のアデーレ」と呼ばれた肖像画は、その後「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I」という名に変わりました。
 マリア・アルトマンは勝訴したのち、絵は家に置かず、美術館で公開展示していました。
 そこへ、ナチスがユダヤ人から強奪した美術品を収集することを使命とする人※が、この絵を買い取りました。
 買取額は156億円(1億3500万ドル)で、現在ニューヨークのノイエ・ガレリエに展示されているそうです。

 ※ロナルド・ローダー
 ノイエ・ガレリエは、かつてナチスがユダヤ人から収奪した美術品を現代の所有者から取り戻し、所蔵。
 ローダーは自身が駐オーストリア米国大使だったころからこの問題に取り組んでおり、「ユダヤ人損害賠償世界機構(World Jewish Restitution Organization)」の一員であり、クリントン政権時代にはナチスの略奪事件の査問委員会にも属していた。
 ローダーは本作の獲得について「これは我々にとってのモナ・リザである」とコメントしている。(なるほど)
 (wikipediaの「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I」から引用)
 ノイエ・ガレリエの公式サイト:http://www.neuegalerie.org/

 ちなみに、20世紀初頭、画家クリムトは上流階級の婦人たちの肖像画を多く手がけていたようです。

オリジナルタイトル:WOMAN IN GOLD
監督:サイモン・カーティス|アメリカ、イギリス|2015年|109分|
脚本 アレクシ・ケイ・キャンベル
出演:マリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)|弁護士ランドル・シェーンベルク(ライアン・レイノルズ)|ほか

【 一夜一話の 歩き方 】

最新の記事はこちら

直近の記事100 リストは、こちらから (All Archives)

邦画評だけ見る (直近掲載の50作品)   洋画評だけ見る (直近掲載の50作品)  

TOPページ (映画記事の人気ランキング、新作映画みました、映画の特集)

邦画の題名リスト    ◆洋画の題名リスト

邦画の監督名リストから記事を探す   ◆洋画の国別リストから記事を探す

一話 (京都、旅行、美味など)      書評   美術

クラシック音楽    ポピュラー音楽   
関連記事
スポンサーサイト

Comments: 0

Comment Form
Only inform the site author.

Trackback+Pingback: 0

TrackBack URL for this entry
http://odakyuensen.blog.fc2.com/tb.php/1694-c49c52a6
Listed below are links to weblogs that reference
映画「黄金のアデーレ 名画の帰還」 主演:ヘレン・ミレン 監督:サイモン・カーティス from 一夜一話

Home > 洋画評だけ見る 直近50作 > 映画「黄金のアデーレ 名画の帰還」 主演:ヘレン・ミレン 監督:サイモン・カーティス

タグクラウド
プロフィール

やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

RSSリンクの表示
Tree-CATEGORY

Return to page top