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映画「誘惑されて棄てられて」 イタリア映画  監督:ピエトロ・ジェルミ

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ペッピーノとアニェーゼ

 「誘惑されて棄てられて」とは、なんとも悲しい題名ですが、これはビターなドタバタ・コメディです。
 お話は、シチリアに住む2人、16歳の娘アニェーゼとペッピーノが結婚に至るまでの、てんやわんやな物語。
 ただしラブロマンスではない。アニェーゼとペッピーノは互いに敵対しながらも、結婚してしまいます。なぜ?

1-0_2018030510014608b.jpg 脚本は監督自身の作。監督は本作の舞台、イタリアの離島シチリア島※の社会規範を喜劇仕立てで批判しています。(※シチリアはイタリアの自治州)

 そのシチリアの社会規範を体現する役回りが、アニェーゼの父親ヴィンチェンツォ。この喜劇の主人公です。
 家長であるヴィンチェンツォは、唯一の誇りである「名誉」を最優先にして生きる男。(シチリアの社会規範、その1)
 だから世間体を悪くすることには断固立ち向かうのです。

 さて、物語の切っ掛けは、アニェーゼの姉で太っちょのマティルドに、父が認める許婚(いいなずけ)のペッピーノがいるのですが、このペッピーノが美人のアニェーゼに手を出して妊娠させてしまったことでした。
 苦しむアニェーゼは教会で懺悔しますが、ことはどうにもなりません。
 ヴィンチェンツォにとっては、このことが世間に知れては、彼の名誉(家名、家長責任等)が大きく傷つきます。こうなったら、何としてもアニェーゼとペッピーノを結婚させなければ・・。

 一方、ペッピーノは開き直ります。婚約者マティルドをないがしろにして置きながら、婚前交渉を許したアニェーゼを尻軽女と罵り、俺はアニェーゼとは結婚しないと、彼の両親にわめきます。

 これを聞くに及んだヴィンチェンツォは怒り心頭、怒髪天をつく。アニェーゼも愛想が尽きました。
 姉のマティルドとの婚約は流れ、アニェーゼは今後誰とも結婚できないかもしれない。憎っくきペッピーノ!

 そこでヴィンチェンツォは、いとこの弁護士に極秘で相談します。
 弁護士は「これは未成年誘惑罪だ、ペッピーノはアニェーゼと結婚する以外に罪は免れない。しかし法の力で結婚させては噂の種になるだろ?」と言うと、「奴を殺す!」と怒鳴るヴィンチェンツォを制して「いや、それでは殺人罪で20年になる」
 しかしと、弁護士は刑法を読み上げる。
 「法には『自己の配偶者、娘、姉、妹が不法なる肉体関係を結ぶ時、これを発見し激昂の上殺害せる者は、3年以上7年の刑に処す』とある」と・・。
 つまり、シチリアでは「名誉を汚された」場合、殺人の罪はとても軽いのです。(シチリアの社会規範、その2)
2-0_20180305100559139.jpg
 ヴィンチェンツォは早速、気弱な長男アントニオに拳銃を持たせ、隠れ住むペッピーノを射殺しに行かせます。
 一方、これを知ったアニェーゼは警察に告げ、警察が現場に急行し二人を連行します。人殺しは回避できました。

 そして事件は殺人未遂事件として裁判になります。
 ペッピーノはアニェーゼはもとから淫乱な女だったと証言します。(そういうシーンが挿入されます)
 ま、とにかく、これは喜劇ですから、裁判シーンは可笑しく混乱します。何も解決しません。

 ヴィンチェンツォは、徐々に世間に漏れ出す不名誉にいら立ちを隠せません。
 そんななか、彼にひとつのアイデアが浮かび、ペッピーノ一家を巻き込んで、自力で解決しようとします。
 つまり、公権力に頼らず、自分の力で問題を解決しようとします。(シチリアの社会規範、その3)
 
 先に書いた通り、どの道、ペッピーノの未成年誘惑罪はアニェーゼと結婚する以外に罪を免れないのですが、しかし法の力で結婚したとなれば、ヴィンチェンツォは笑い者になってしまうわけです。
 これを切り抜けるアイデアは、ペッピーノによる強引な誘拐結婚という大芝居でした。衆目を集める狙いで、町の祭りのさ中に行われました。これでヴィンチェンツォに限らずペッピーノの両親も面目が立ったわけです。??
 その社会の人々にとって、正しく至極当たり前だとして、日々空気のように存在する「規範」が、おかしい事もあるわけです。
 それは本作のように、シチリア独特の風習や法律であったりします。広くみれば、その規範の範囲はひとつの国、あるいは、ある時代であったりします。

3_2018030510100064a.jpg ちなみに、姉のマティルドは父親から貧乏貴族の独身男性(→)を紹介されますが、ペッピーノ事件に翻弄されて貴族男は去りました。かわいそうにマティルドはその後、修道院に入ります。
 
 町の警察署で、壁に貼ってあるイタリア全土の地図を前にして、警部がシチリア島を手で隠しながら嘆くシーンが印象に残ります。
 もうひとつ印象に残るのは、アニェーゼ役の女優ステファニア・サンドレッリがとても妖艶。その後この女優は妖艶さが売りになったそうです。
オリジナルタイトル:Sedotta e Abbandonata
監督:ピエトロ・ジェルミ|イタリア|1963年|115分|
脚本:ピエトロ・ジェルミ 、ルチアーノ・ビンチェンツォーニ 、アージェ&スカルペッリ|
撮影:アイアーチェ・パロリン|
出演:アニェーゼ(ステファニア・サンドレッリ)|ペッピーノ(アルド・プリージ)|アニェーゼの父ヴィンチェンツォ(サーロ・ウルツィ)|アニェーゼの姉マティルド(パオラ・ビッジョ)|アニェーゼの兄アントニオ(ランド・ブッツァンカ)|ほか

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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めてはや9年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

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