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映画「パパは、出張中!」  監督:エミール・クストリッツァ

上
妻のセーナ、マリク、兄ミルザ、メーシャ

 マリク6歳の父、メーシャの浮気が引き起こした思わぬ展開は、不運にもマリク一家に苦難を与えることになります。(しかしラストは苦いですが、ハッピーエンドで終わります)

01-_20180427113923b92.jpg 思わぬ事態になった原因は、メーシャの浮気もさることながら、1950年のユーゴスラビアの政治情勢でした。 
 当時、独自の社会主義を目指すユーゴスラビアは、反ソ連(反スターリン)の姿勢でした。

 ある日、愛人と一緒にいたメーシャは、ソ連を批判するユーゴスラビアの新聞の挿絵を見て、「これはやりすぎだ」と、つぶやきました。(挿絵は下記)
 のちにこのことを、愛人はユーゴスラビア人民委員会のお偉方にふと漏らしました。
 お偉方は、メーシャのつぶやきを「親ソ連」的発言ととって、メーシャを国家反逆の罪で、強制労働させることになります。(裁判なんて開かれません)

 映画は、こんな時代のユーゴスラビアのサラエヴォを舞台に、主に6歳のマリク目線で、2年間の間に起った出来事を、語っていきます。(つまり柔らかい語り口です、ナレーションはマリクです)

 事の発端。
 メーシャが「これはやりすぎだ」とつぶやいた逢瀬の時、愛人は「奥さんといつ離婚してくれるの」とメーシャに強く迫っていました。
 その翌日、愛人は女性グライダー乗りとして、人民委員会主催のグライダー曲芸飛行ショーに出場しました。
 メーシャは奥さんと二人の息子(マリクと兄ミルザ)を連れ、多くの見学者が集まった飛行場にいました。

 そこには人民委員会のお偉方も参列しています。このお偉方がメーシャに近づいて来ました。
 そうです、このジーヨというお偉方は、メーシャの義理の兄、つまりメーシャの妻セーナの実の兄なのです。
 さてショーが終わり、メーシャの愛人はジーヨの車に乗ります。この時です、「これはやりすぎだ」発言を、愛人はジーヨに軽い気持ちで話してしまいます。(ジーヨがメーシャの義理の兄であることは、愛人も知っていましたから)

2-0_20180427115051598.jpg その夜すぐ、メーシャは人民委員会へ呼び出され、義兄ジーヨのオフィスで彼の口から、遠くの地での強制労働を告げられます。
 しかしその夜は、メーシャの息子マリクの、割礼の祝いの日でした。
 メーシャの家の食卓には、メーシャ、妻セーナ、二人の息子、同居のセーナの両親など、そしてジーヨがいます。
 ですが、皆沈みがち。メーシャもセーナもセーナの両親(つまりジーヨの両親)の誰もが、ジーヨに話しかけません。
 そしてセレモニーが終わるや否や、メーシャは強制労働の炭鉱へと家を出ました。(ジーヨは家の外に、連行するための車を待たせていました)

 この日から「パパは出張中」の日々が始まるわけです。(妻セーナは息子たちに父親は出張中ということにしたのです)
 なぜなら、日ごろからメーシャは仕事で家を空けることはたびたびでしたから。(ちなみに、実はこれまでメーシャの浮気は出張中のことでしたし、セーナは相手は知りませんが感づいていました)

 そののち、セーナは兄ジーヨの家を訪れます。セーナは夫へ送る荷物を持っていました。
 しかし兄は、メーシャがどこにいるのか、いつ帰れるのかの問いに答えません。このことは誰にも言うな、会いに来るな、と言うばかりでした。(ジーヨは独り身ですが、彼の家には女がいました)

 炭鉱での強制労働は厳しいものでしたが、一度だけ、セーナはマリクを連れて炭鉱を訪問できました。
 この時、セーナは夫に、どうしてこういう事になったのかと問いますが、「わからない、ジーヨに聞け」と言います。
 セーナは「ジーヨは何も言わない、そういえばジーヨの家にあのグライダー乗りの女性がいたけれど、あの人に聞こうか?」
 「やめとけ」と言い、メーシャは話題を変えました。
 後日、セーナはグライダー乗りに会いに行きます。女の勘は鋭いです。セーナはその女に襲い掛かりました。
 
 続いた強制労働もやっと終わり、メーシャは、今度はこれまたサラエヴォから遠い田舎ズヴォルニクという所へ移され、その地である上司の元で仕事を始めます。
 ここでは家族を呼び寄せることができました。家族4人はまたひとつになれました。

 ここでちょっと、メーシャの下の息子マリクのこと。
 父親が強制労働へ行ったあと、マリクは夢遊病になり、夜、家を出て出歩くようになります。ストレスです。
 日ごろの「パパは出張中」とは明らかに違うことを、幼いながらもマリクは感じ取っていました。(夢遊病のシーンは、監督の持ち味であるコミカルな仕立てです)
 ズヴォルニクに引っ越してからマリクは、あるロシア系の男の一人娘マーシャを好きになります。幼い恋、相思相愛でした。
 ですが、マーシャは不治の病におかされていました。幼い恋は長くは続きませんでした。

03-.jpg そんなある日、メーシャに恩赦がでました、やっとサラエヴォに帰れるのです。
 帰ってまもなく、メーシャの義弟(妻セーナの弟)の結婚式がありました。一族郎党が集まりました。
 3人目の子をお腹に宿すセーナは、兄ジーヨに近づきもしません。
 メーシャはジーヨに、すべて水に流そうと少し話しました。ジーヨはアル中のように酒に酔っています、重度の不眠症に陥っていました。

 そのジーヨの横に、メーシャの元愛人がいます。(この2人は公然の関係になったようです)
 そして、こともあろうに、メーシャは、式をよそに人気のない部屋に元愛人を連れ込み、「なぜジーヨに言ったのか」と問い詰めながらも、ふたりは激しく交わります。でも、この様子をマリクはじっと見つめていました。
 (このあと、元愛人はトイレで首吊り自殺を図ろうとしますが失敗しました)

 この時もうひとり、式をよそにして、そっと出て行く男がいました。彼は自らの意思で老人ホームに入所するため、いま旅立とうとしています。
 その男は、ジーヨ、新郎(次男)、セーナの父親ムザフェルでした。
 ムザフェルはマリクの兄ミルザにこう言いました。「やつらに言っておけ、政治なんてクソ食らえだと」

 ラスト。ラジオからはユーゴ対ソ連のサッカー試合の実況中継が流れます。
 ユーゴはソ連を負かし金メダルを取りました。人々はじっとこれを聴き喜んでいます。1952年のことでした。

オリジナルタイトル:Otac na sluzbenom putu(When Father Was Away on Business)
監督:エミール・クストリッツァ|ユーゴスラビア|1985年|136分|
脚本:アブドゥラフ・シドラン|撮影:ヴィルコ・フィラチ|
出演:マリク(モレノ・デバルトリ)|父メーシャ(ミキ・マノイロヴィッチ)|母セーナ(ミリャナ・カラノヴィッチ)|セーナの兄で人民委員会のジーヨ(ムスタファ・ナダレヴィチ)|グライダー乗りで体操教師のアンキッツァ(ミーラ・フルラン)|マリクの祖父ムザフェル(パヴレ・ヴイシッチ)|マリクの恋人マーシャ(シルヴィア・プハリッチ)|ほか
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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めてはや9年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

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 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

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