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映画「赤ちょうちん」 監督:藤田敏八  主演:秋吉久美子

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 飾り気をえぐり取った殺伐とした荒い感触と、この先を見失った時代の、いかにも1970年代前半の映画といった趣きの作品です。

 熊本県天草から出てきた17歳の幸枝(秋吉久美子)と、二十歳そこそこの政行(高岡健二)との、不安定な幸せの道筋を描く。
 時は冬、ふたりの幸せは政行が住む、中央線大久保・東中野駅間の高架脇の、一間のアパートで始まった。

 話は引っ越しを繰り返す場面展開で進み、その中で映画は、幸枝と政行の愛の行方を追いかける。
 ふたりにとって引っ越しは、あてのない幸せ探しであり、同時に若いふたりにとって、世間を学ぶ旅であり、かつ、いわれのない試練の旅であった。


1-0_2018051012361124e.jpg アパート建て替えで追い出された政行は、京王線幡ヶ谷にあるキッチン付きトイレなしの部屋に越し、幸枝との同棲が始まる。
 ところがある日突然、この部屋にかつて住んでいた男(長門裕之)が無断で居候しだして、奇妙な3人住まいが始まる。
 その上、この部屋は幡ヶ谷斎場のそば。斎場を怖がる幸枝は引っ越しを望んだ。

 次は新宿高層ビルがすぐそこの西新宿の部屋へ。
 ここで幸枝の妊娠が分かった。しかし生活はふたりだけでも苦しい。ふたりは悩む。政行は中絶を求めた。
 そんなある日、幸枝は近くを流れる神田川に身投げしようとした。

 反省した政行は男として覚悟を決め、幸枝の出産を前提に郊外へ引っ越し。周りは畑が残る土地、キッチンもトイレもある一階だ。
 幸枝は病院で無事出産しふたりは喜んだが、幸枝は産後の鬱なのか、周囲の住民や家主(悠木千帆)との折り合いが上手くいかない。
 赤ちゃんが眠る窓際のガラス窓が投石で割れる、近所の子供かも知れない。さらには買い物途中に店前に停めて置いたはずのベビーカーが、坂道を暴走する事故を家主のせいにする。政行は四度目の引っ越しを決意した。

 安い家賃を求めて葛飾の土手近くの長屋へ越す。
 長屋の隣家は彼らを優しく歓迎した。政行は隣家から工場の職場を斡旋してもらった。良き人情の長屋住まいが始まる。
 だが住み始めてから知ったことは、ここは一家心中の悲惨な部屋であった。
 でも何故か幸枝は政行が思うほど動揺しない。いや政行より平気。もっと言えば今までの幸枝よりも、幸枝は変になっていたのだ。
 しかし政行はそれに気づかず、隣家のおばさんに幸枝の様子が変だと言われる。御用聞きの男にわけもなく殴りかかったりしていた。
 そんなある日、政行が務める工場に電話が入る。おばさんからだ、すぐ帰って来い、幸枝の行動が・・。

 シーンは精神病院のベッドで身体拘束された幸枝と、ベッドサイドの政行のシーンに移る。
 そしてラストシーン、政行は赤ん坊と二人だけの、5度目の引っ越しをするのであった。(終)

 映画は幾つかのエピソードを差し入れて、話を膨らませている。
 話の冒頭で、とある立体駐車場の係員として政行が働いていた職場の先輩・修(河原崎長一郎)、その彼女・利代子(横山リエ)のふたりは、幾つものシーンで政行と幸枝のストーリーと絡み合う。

 全編を通して思うに、秋吉久美子演ずる幸枝の表情が終始硬い印象が残る。
 ちなみに本題ではないが、幸枝の出産時に病院が赤ちゃんを取り違えるエピソードがある。
 幸枝と赤ちゃんのツーショットを政行が撮った直後に、看護師が取り違えたことを言いながら、幸枝の赤ちゃんを抱いて病室に入って来る。政行は再度、写真を撮るが、ふたりの心は落ち着かない。これも印象に残る。

監督:藤田敏八|1974年|93分|
脚本:中島丈博、桃井章|撮影:萩原憲治|
出演:久米政行(高岡健二)|霜川幸枝(秋吉久美子)|中年男(長門裕之)|牟田修(河原崎長一郎)|利代子(横山リエ)|幸枝の兄(石橋正次)|吉村クニ子(悠木千帆)|ミキ子(山科ゆり)|広村ヒサ子(中原早苗)|深谷ウメ(三戸部スエ)|松崎敬造(陶隆)|松崎文子(南風洋子)|松崎進(山本コウタロー)|管理人(小松方正)|

【 藤田敏八監督の映画 】
これまでに掲載した作品です。画像をクリックしてお読みください。

写真
「妹」
主演:秋吉久美子、林隆三
写真
「もっとしなやかにもっとしたたかに」
主演:森下愛子、奥田瑛二
写真
「修羅雪姫」・「修羅雪姫 怨み恋歌」
主演:梶芽衣子

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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めてはや9年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

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 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
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