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映画「譜めくりの女」   監督:ドゥニ・デルクール

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譜めくりの女メラニーと、ピアニストのアリアーヌ   (デボラ・フランソワ、カトリーヌ・フロ)


 女が女に、10年経って仕掛け始めた復讐。ドラマは、じわじわ進む。

1-0_2018081410432895a.jpg 10年ほど前、2人は、ピアノコンクールに参加した「少女」と、大勢を審査する審査員の筆頭、「著名ピアニスト」というかたちで出会った。
 その時、著名ピアニストのアリアーヌが犯した罪は、少女メラニーの演奏中に、その演奏を真摯に聴こうとしなかったこと。(審査中にも関わらず審査室に、付き人がアリアーヌのブロマイドを持って入って来て、それにアリアーヌはファンから頼まれたサインをした)
 それを見てしまったメラニーは演奏を中断してしまう。集中力と緊張の糸が切れてしまった。幼いながらも音楽家としての自尊心を傷つけられた。
 しかし、アリアーヌはまったくの無意識であり、なぜメラニーが演奏を中断したのかの疑問もなく、ましてや自身が加害者であることを微塵にも思いよることはなかった。
 よって、アリアーヌはメラニー個人を認識することはなく、このことはその後、忘却の彼方に消えていった。
 しかし、精肉店の娘メラニーはコンクールに向けて、どれだけ懸命であったことか。メラニーの落胆は激しかった。この日をもってメラニーは自宅の小さなアップライト・ピアノに鍵をかけ、ピアニストへの道を封印してしまった。
 これが、復讐の起点であった。

2-0_201808141048106c2.jpg そして10年後、メラニーは就職できる歳になった。
 アリアーヌは今もピアニストだが、ある時、交通事故が発端で精神的に病み始め、一時引退したのち、最近復帰したてであった。
 精神的な病みとは不安症、安心できる付き添いがないと落ち着かない。これがメラニーとアリアーヌをふたたび出合わせた。

3-0_20180814105533635.jpg メラニーは、アリアーヌが夫と共に過ごすバカンスの間、住み込みで、その息子のお守り役(兼家政婦)として雇われた。(アリアーヌの住む家は貴族の館の豪邸だ)
 その後アリアーヌは、言葉にうまく表現できないが、何とも言えぬ相性の良さをメラニーに感じ始める。
 何が好感を誘うのか、それはメラニーのキリリとした清楚な風貌と、仕事を任せられるしっかりした安定感。これがアリアーヌの心のよりどころとなりはじめる。
 そんな折、アリアーヌはメラニーが譜面を読めることを知り、(館に住み込みで)練習時も含め、専属の「譜めくり」になってくれと頼んだ。(譜めくりは演奏家との相性があり、それ如何によって演奏の出来が変わってしまうらしい)
 これを聞いてメラニーは、心の奥底で、ほくそ笑む!
 ここへ至るために、メラニーが計画的に行動してきたことは、アリアーヌの夫が営む著名法律事務所に一般事務として就職し、アリアーヌの夫から信頼を得る働きをしてきたのであった。その結果、息子のお守り役となれたのだった。
 

4-0_20180814110435935.jpg いわゆるサスペンス的緊張感は薄いが、この映画の売りは、別なテイストで引き込まれていくところ。
 それは、メラニーの際立つ清楚さと時に見せる優しさ、その一方で、終始保つ無表情と復讐へのゆるがぬ意志。この混在が観る者を惑わせる。
 かつ映画のその語り口が、復讐の手法を、話が進む前に明かしている様でいて、そうでもないところ。
 さらには、ふたりの女の間に生まれる「信頼と愛」をていねいに描いていく。
 だから観る者は、ドラマが進むにつれ、一体どうするんだ?、復讐するの?と、いろいろ想像させられる。エンターテインメント!


 結局、その信頼と愛こそが、実は復讐の武器だった。
 メラニーは信頼を得るように振る舞い、その先で想定外だったが、アリアーヌのメラニーに対する愛の芽生えに出会い、これも利用する。
 そしてアリアーヌへの復讐のため、アリアーヌの夫もその息子も、そしてアリアーヌが属すピアノトリオのチェリストの男も利用され、みな犠牲となる。 
 陰湿と言えば陰湿だが、観ればわかるが意外とあっさりしている。エンターテインメント!
 その、あっさりさは、メラニー演ずる女優、デボラ・フランソワの起用によるのかもしれない。
 あとは観てのお楽しみ。

オリジナルタイトル:La Tourneuse De Pages
監督・脚本:ドゥニ・デルクール|フランス|2006年|85分|
撮影:ジェローム・ペイルブリュンヌ|
5-0_201808141108209b3.jpg出演:メラニー・プルヴォスト(デボラ・フランソワ)|アリアーヌ・フシェクール(カトリーヌ・フロ)|その夫ジャン・フシェクール(パスカル・グレゴリー)|トリオのバイオリニストの女性ヴィルジニー(クロティルド・モレ)|チェリストの男性ローラン(グザヴィエ・ドゥ・ギユボン)|メラニーの一人息子トリスタン・フシェクール(アントワーヌ・マルティンシウ)|メラニーの父(ジャック・ボナフェ)|メラニーの母(クリスティーヌ・シティ)|メラニーの少女時代(ジュリー・リシャレ)|ほか

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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めてはや9年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

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 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

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