FC2ブログ

Home > 洋画評だけ見る 直近50作 > 映画「10話」  監督:アッバス・キアロスタミ

映画「10話」  監督:アッバス・キアロスタミ

上
アミンと母親


 この映画は、イランの首都テヘランに住む女性たちを登場させ、女性ならではの諸問題を、リアルに時にコミカルに描き出そうとする、素晴らしい作品です。
 特徴は、ドキュメンタリー風な、さらりとした描写と、斬新な映像表現です。
 特に、映画のすべてのシーンは、主人公が運転する自動車車内に限られ、かつ助手席に座る人との会話シーンだけで話は終始します。

【 登場人物と10の話 】 
 映画は、題名「10話」が示す通り、10章から成り立っています。

 主人公は、自家用車を運転する女性※。(※役名が無いので、演じている女優名マニア・アクバリを代用します)
 マニア・アクバリは全ての章で、運転席に座り、ドライバーを演じます。
 そのほかの登場人物は、この車の助手席に同乗する人々です。

0-1 その人たちとは、マニア・アクバリの息子アミン(小学生)、マニア・アクバリの妹、老女(敬虔なイスラム教徒)、売春婦(夜、客の車と間違えて乗車した女)、たまたまマニア・アクバリに拾われた女性(昔、信者ではなかった女)といった人たちです。(この5人はそれぞれの章に割り当てられ、一人で登場します)

 このうち映画は、マニア・アクバリの息子アミンのために、10章のうち4つの章を割いています。
 母親マニア・アクバリは、離婚して さほど時を経っていない様子です。
 今、息子アミンは母親の元で生活していますが、アミンの心は母親と父親の間を揺れ動いています。シーンの様子では、どうやらアミンは、父親の元に居たいらしいです。
 アミンは、運転する母親の隣りで、チョット大人びた物言いで母親を批判しながらも、母親にすねて、わめき、押し黙り、またわめきます。
 案外、的を得たアミンの物言いに、母親は真っ向から発言します。そして、ついにアミンはプイッと車を降りてしまいます。いつもこの繰り返しです。
 そしてアミンは父親の所へ泊まりに行くのですが、結局 最終章で母親の元に戻ってきます。
 こんな様子がとてもリアルです。それもそのはず、アミンはマニア・アクバリの実のお子さん。(離婚も実話でしょうね。この母子には申し訳ないが結構、可笑しいシーンです)

0-2.jpg 以上4つのアミンの章は、10章中に分散配置され、そのほかの章には、アミンに代わって助手席に座る大人の女性たち4人が交互に登場します。
 つまり、マニア・アクバリの妹と、たまたまマニア・アクバリに拾われた女性(それぞれ2つの章を割く)そして老女と売春婦です。
 映画はここで、マニア・アクバリと同乗女性との、ごく日常的な会話を通して、男女間の身近な難題や、宗教に関わる問題を語ります。(さらにはイランの現状をも考えさせます)

 これらの登場人物の演技は、マニア・アクバリと実の子アミンの「実際」と比べれば、演技なのですが、すべて素人俳優だそうです。そして台本は無く、全部アドリブだとか。よってセリフはごく自然で、ドキュメンタリー映画っぽく感じます。

 そしてマニア・アクバリの車は、登場人物を乗せテヘランの街中を走ります。
 登場人物の背後の、車窓から見える風景は、いろんな店やモスクやビル、行き交う車、それを縫って横断する人、舗道を行く人、クラクション、高速道路など、どれも今のテヘラン風景です。
 車窓からの風、街の匂いも感じ取れ、観客はテヘランにいる感じがしてきます。

【 斬新な映像表現 】
 映画を観ていて、一番に印象的なのは、カメラアングルです。

 撮影カメラは、運転席のマニア・アクバリだけを写すカメラ1台と、助手席だけ写す1台の、計2台のカメラだけで撮影されています。
 かつ、このカメラは、ボンネット上に据え付けられ、アングルが固定されています。
 つまり、全シーンにおいて、この2種類のアングルだけなのです。

 映画は、こうした2つの映像を、交互に淡々と見せることで、観客の気を、車内の会話に集中させようとします。
 一方でその淡々さは、車窓からの流れる風景、これに観客の目を向けさせようとします。
 ともすれば閉塞感を感じる車内映像ですが、車外が見えることで、広がり感解放感や街の生き生きとした様を、映像に呼び込むことができています。

 ちなみに可笑しいのは、アングル固定ですから、子供のアミンはいつも胸から上が映るのですが、大人は鼻から下しか映らないことも多い。これ結構、映画のお作法を逸脱していて、やってくれましたという感じがします。

オリジナルタイトル:Ten
監督・脚本・撮影:アッバス・キアロスタミ|フランス、イラン|2002年|94分|
出演:マニア・アクバリ|アミン・マヘル|ほか

【 一夜一話の 歩き方 】

最新の記事はこちら

直近の記事100 リストは、こちらから (All Archives)

邦画評だけ見る (直近掲載の50作品)      洋画評だけ見る (直近掲載の50作品)  

TOPページ (映画記事の人気ランキング、映画の特集)

邦画の題名リスト    ◆洋画の題名リスト

邦画の監督名リストから記事を探す     洋画の国別リストから記事を探す

一話 (京都、旅行、美味など)  書評  美術

ポピュラー音楽!!  クラシック音楽



関連記事
スポンサーサイト

Comments: 0

Comment Form
Only inform the site author.

Trackback+Pingback: 0

TrackBack URL for this entry
http://odakyuensen.blog.fc2.com/tb.php/1792-12112e7c
Listed below are links to weblogs that reference
映画「10話」  監督:アッバス・キアロスタミ from 一夜一話

Home > 洋画評だけ見る 直近50作 > 映画「10話」  監督:アッバス・キアロスタミ

タグクラウド
プロフィール

やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めてはや9年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

RSSリンクの表示
Tree-CATEGORY

Return to page top