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映画「生きない」  監督:清水浩

上候補3
沖縄バスツアー客9名と、添乗員・バスガイド・運転手あわせて13名の‥


 ブラック・ユーモアたっぷりの「2泊3日の、沖縄初日の出バス・ツアー」の旅。

 「私は3つなんですが、あなたは?」 「私は4つです」
 これはツアー客同士の会話。
 何のことかというと、借金が3000万ある、相手は4000万。
 そろいもそろって、そんな額の借金を抱えてニッチモサッチモ行かなくなった9名がツアーに参加し、12月30日、バスが待つ那覇空港に降り立った。(ただ、1名だけ、当日キャンセルが出た)

0_20190309121553dd2.png 空港のバス乗り場でツアー客を待ち受ける新垣(ダンカン)という男は、旅行会社サンシャインクラブを立ち上げ、毎回、こういったニッチモサッチモ行かなくなった問題解決型の特殊なツアーを企画している起業家。

 客にとっては、新垣はファイナンシャル・プランナーでもある。
 新垣は、ツアー参加希望者から、その負債額、その理由、家族構成などの情報を聞き出して、それを基に将来のライフプランに即した資金計画やアドバイスを行って、ツアー参加手続きをしている。
 ただし今回、新垣は添乗員として自身もツアーに同行する。

 さて、9名の誰もが背負う多額の借金、これを返済する資金計画とは‥‥、
 実は、沖縄のある町に、切り立った海岸沿いを走る、ガケ際の道路(町道)がある。
 この町道は、今までも車の転落事故が幾度もあった難所であるが、未だに町の町道整備はおろそかなままになっている。
 ここを突くのが、このツアー企画。
 つまり、この難所で、「バスもろとも」ガケから落ちれば(全員死亡の転落事故偽装)、町道整備の瑕疵(かし)で損害賠償請求は確実にできる。(新垣の売り口上)

 この金と保険金で借金を返済するのが「2泊3日の、沖縄初日の出バス・ツアー」プランであり、返済したのち金が余れば残された家族が潤う、とまあ、こういうことになる。(町からの見舞金4000万+保険金あわせて1億2千万というスキーム)
 要するに、借金完全返済保証付き自殺ツアーなのだ。
 決行その日は12月31日。元旦の初日の出を見ることは、まず無いだろう。

 さて、さっき、9名そろいもそろって多額の借金と言ったが、ひとりだけそうでないのがいる。
 それは若い男で、失恋で心に痛手を負い、仕返しに相手に嫌な思い出を作ろうと自殺を考えるに至った男。
 あっ、もうひとり、いや、一組、恋愛がらみの自殺志望がいる。バスの運転手とバスガイド、あってはならぬ恋。
 そう、バスもろとも、ガケから真っ逆さまに海に落ちるわけだから、運転手もガイドも‥。
 もちろん、旅行会社サンシャインクラブの新垣も自殺希望なのだ、ただし映画はその理由を言わない。

 問題 は、美つき という若い女性がこのツアーに紛れ込んでしまったこと。
 那覇空港で皆と同じくバスに乗り込んできたのだが、彼女は自殺希望でもなんでもない、ただの観光客。
 ツアーをドタキャンした伯父から、ツアーを譲ってもらったらしい。(この伯父も自殺希望のはずだが…欠席と譲った理由を映画は言わない)

 元気はつらつな 美つきを前にして、新垣は一瞬、悩んだ。
 殺人になってしまう。しかし断るわけを言えば、ツアーの魂胆が事前に世にばれてしまう恐れがある。
 これは絶対に避けねばならない。
 よって客9名と、運転手・ガイド・新垣の計12名の自殺希望者と、何も知らぬ楽しそうな女性・美つきを乗せてバスはゆく。

 名所旧跡遊園地を巡り、ホテルに着いて湯に浸かり、宴会では各自隠し芸も出て、その後はカラオケ、ストリップなど楽しんだ。
 美つきの持ち歌は、「ぼくらはみんな 生きている、生きているから 歌うんだ」の「手のひらを太陽に」だけでした。

 そして、12月31日の夜は明ける。
 バスが計画のその町道に差し掛かった時、想定外のことが起き、結果、ガケ上に立った新垣だけを置いて、皆はバスに乗ってその場を去る。
 さらには、そのあと、バスは‥‥言いません。
 ブラック・ユーモアどんでん返し。楽しんでください。 


 言いたくないがひとつだけ。
 話の中頃で、ついに新垣がツアーの趣旨を美つきに明かすシーン、美つきの長ゼリフがまるで高校の演劇部のようで、聞いてられなかった。


監督:清水浩|1998年|100分|
原案:中原文夫|脚本:ダンカン|撮影:柳島克己|
出演:新垣(ダンカン)|美つき(大河内奈々子)|バス運転手田口(砂丘光男)|バスガイド福田(春木みさよ)|
以下、ツアー客たち
1.複数回の離婚の慰謝料と子供の養育費の借金に苦しむ伊藤(村野武範)
2.女に騙され借金を背負った教師の木村(尾美としのり)
3.経営不振の町工場を抱える小沢、ダジャレ好き(左右田一平)
4.病弱な子を持つ生真面目な男・神田(小倉一郎)
5.バブル期に銀座接待で美味しい想いをし過ぎ、金銭感覚を忘れて落ちた野口(石田太郎)
6.借金ばかりでなく難病で余命幾ばくもない八代(温水洋一)
7.借金に苦しむ宗教家の能勢(グレート義太夫)
8.設計技師の望月(岸博之)
9.自分を振った女へのあてつけに自殺を考えている小松(三橋貴志)

映画「生きない」は、いわば、同じバスに乗り合わせた乗客の話でした。
こういう、バスの乗客を扱った面白い映画は、ほかにもあるんで特集を組みました。
これをクリックして特集ページをご覧ください。
キャプチャ10-2


【 一夜一話の歩き方 】 下記、クリックしてお読みください。

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