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映画「男性・女性」  監督:ジャン・リュック・ゴダール

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 1965年の、20歳前後のパリの男女を描く映画です。(公開は1966年)
 主人公ポール役のジャン・ピエール・レオ(当時21歳)や綺麗な女優さん達、そしてファッションやパリの街角をモノクロ映像で描いています。
 映画で流れるフレンチポップスは、かわいいボーカル、軽いリズム。
 これらが本作の魅力のひとつと、すなおに言ってもいいでしょう。

ここで、まずは予告編を観てみましょうか。


0_20190315032130dda.jpg ところが、こんな軽快な映像に対し、セリフは監督の政治意識が反映され、かつ不条理劇風な突飛なエピソードも挿入されているので、実際の映画はちょっと難解に感じるかもしれません。 
 また、映画のタイトル副題が「15の事実」となっていて、話はエピソード集の形態で、パッチワークの様相。
 その中には、登場人物に最新時事についての問いを、矢継ぎ早に浴びせるインタビュー(らしくみせる)シーンが、いくつかあります。

 なにしろ50年以上前の最新時事ですから、よって観る方は、1965年当時の政治/文化の時事を少し思い返す必要はあります。
 当時の時事を知ってこそ、この映画がドキュメンタリーっぽいとも言えるでしょうし、知らなければ、そうは感じない。

 まずは、シーンの3年後にフランスで起きた五月革命へ向けて、政治的ボルテージが徐々に高まりつつある、こんなムードが1965年のパリの世間を、なんとなく包んでいたでしょう。(映画ではポールの友人ロベールが政治活動に熱心)
 「自由と平等と自治」を掲げた約1000万人とされる労働者と学生がパリでゼネストを行った。

 そんな中で、アメリカ軍による北ベトナム爆撃(北爆)が1964年、開始される。(ベトナム戦争:アメリカはじめとする資本主義・自由主義陣営と、ソ連など共産主義・社会主義陣営との対立が背景にあった
 映画の中では、ポールとロベールが、アメリカ軍の黒塗り公用車にペンキで「ベトナムに平和を」と落書きするシーンが織り込まれている。
 そして1966年、中国では毛沢東による文化大革命の時代に入ります。(これが当時、監督に大きな影響を与えつつあった。その真っ最中の、監督の政治意識がこの映画の背景にあるようですし、フランスでは毛沢東熱が高まる過程にあって毛沢東語録は五月革命に強く作用したとされる)
 
 でも、政治に関心の無い若者(ノンポリ)もたくさんいました、そんな人達が映画の主な登場人物です。
 だから監督は、世界はこれで良いのかという思いで、矢継ぎ早に問いを若者に浴びせる、そんなインタビューシーンを作ったのかもしれません。


 次いで1965年の文化にまつわる時事を少し。
 この映画に「マルクスとコカ・コーラの子供たち」と表現する字幕が出てきて、なるほど登場人物たちをそう捉えているんだという、監督の視点がはっきりして、印象に残ります。
 コカ・コーラは繁栄するアメリカ、資本主義のアメリカを象徴すると言われました。(登場人物の女の子たちはコーラを飲んでいますが、ポールが飲むシーンは無いようでした)
 そのアメリカから、政治メッセージを打ち出したボブ・ディランのプロテスト・ソングがフランスにも流れたでしょう。
 またセックスや避妊の話が映画に出てきますが、これは1964年にカトリック教会が経口避妊薬の使用を非難する声明を発表した事が背景にあるのかもしれません。
 ちょっと付け加えると、当時映画館では、シェルブールの雨傘、マイ・フェア・レディ、サウンド・オブ・ミュージック、メリー・ポピンズや007なんかも上映されていたでしょうね。


 さて本作は、50年以上前の、かつ、遠い国フランスの映画ですが、これを、も少し私たちの身近に引き寄せてみましょうか‥。(パリの香りを削ぐことになりますが)
 ジャン・ピエール・レオは1944年生まれで、日本で言う団塊の世代のちょっとお兄さんといった位置。
 登場人物の18歳の女性は団塊の世代に当てはまる。
 こんな世代の若者が日本でどうだったかに思いめぐらせば、「男性・女性」の理解が進むかもしれません。
 1965年といえば昭和40年、70年安保闘争の学生たちは、団塊の世代です。
 どこかの大学のどこかの新左翼や学生新聞部とか、あるいは北爆を機にスタートしたベ平連(ベトナムに平和を!市民連合)とかに属していた人々や、その取り巻きでは、監督やポールやロベールのような問題意識の人間が、日本にもたくさんいました。もちろんノンポリの方が多勢だったですが。
 ちなみに音楽はフォーク・ソングブーム、でも加山雄三の「君といつまでも」なんかは誰でも歌えたでしょう。
9_20190315033412979.jpg ついでに言うと、ポールの恋人マドレーヌ(シャンタル・ゴヤ)は歌手で、レコードデビューしたての女性という設定で、彼女の歌が日本でヒットしたというセリフがありました。※このページの一番下へ

 もし、この映画を日本に置き換えるとすると、マドレーヌ役はさしあたり吉永小百合(1945年生まれ)とか和泉雅子(1947年生まれ)あたりの年代の女優が演じる、反体制的な主張を取り入れたATG製作の青春映画風になるのでしょうか。
 そうそう、「男性・女性」は1968年に日本公開され配給はATGでした。
 他の映画会社とは一線を画す非商業主義的な作品を製作・配給した映画会社

 とにかく本作を、シネマ・ヴェリテ・スタイル云々と、まるで映画専門の学芸員解説風に書き連ねても、映画の良さは分かりにくいと思う。
下 要するに、この映画は表面的には軽い青春劇映画風ですが、1965年のパリの空気が臭うという意味でドキュメンタリーとして観るのが一番でしょう。

 ついでに言えば、五月革命後のパリを描く映画に「ママと娼婦」(監督:ジャン・ユスターシュ)があります。
 これを日本に置き換えれば「もう頬づえはつかない」(監督:東陽一)あたりかな。 
 (それぞれの映画記事は、タイトルをクリックしてお読みください)

 実際、シャンタル・ゴヤは日本でヒット。そのうちの1曲。
 乙女の涙/シャンタル・ゴヤ(Une échape, une rose - Chantal Goya) 1965
  試聴 https://www.youtube.com/watch?v=VTFUrnLhOpY


オリジナルタイトル:Masculin Feminin
監督・脚色・台詞:ジャン・リュック・ゴダール|フランス・スウェーデン|1966年|103分|
原作:ギイ・ド・モーパッサン|撮影 :ウィリー・クラント|
出演:ジャン=ピエール・レオ(ポール)|シャンタル・ゴヤ(マドレーヌ)|マルレーヌ・ジョベール(エリザベート)|ミシェル・ドゥボール(ロベール)|カトリーヌ=イザベル・デュポール(カトリーヌ)|ブリジット・バルドー(カフェの女)|アントワーヌ・ブルセイエ(カフェの男)|ほか

 1960年代のフランス映画はいいですね。
 下記のページで、60年代の作品をまとめています。クリックしてご覧ください。
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【 一夜一話の歩き方 】 下記、クリックしてお読みください。

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