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映画「マリアのお雪」  監督:溝口健二  主演:山田五十鈴

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  明治10年、ここは 熊本県人吉の城下町。いま、西南戦争の真っ只中だ。
  西郷隆盛率いる薩摩軍に向けて、官軍は大砲の砲弾雨あられ。町屋は屋根、壁が崩れ大惨事。商人や奉公人は、とうに避難していった。
  とっぷりと日が暮れた。闇の中、向こうに見える小さな灯りは、縄のれんの呑み屋「わらじや」だ。お雪(山田五十鈴・当時18歳)は逃げる準備をしながら、おきんに落ち着いた調子で言う 「死のうったって、寿命があれば助かるし、生きようと思ったって、なけりゃそれまでさ」 何も動じない、お雪とおきんは肥後女。おきんは、店にあった飯を急いでおにぎりに結んで、ふたりは、一台の乗合馬車に向かった。
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  馬車には、士族一家も乗り込んできた。お雪、おきんは隅に座ったが、そんな彼女達を士族たちは賎民扱いする。乗合馬車は戦場の銃弾を潜り抜け、深夜の街道を走り続けた。一夜明け、馬車は停止した。車輪が壊れたのだ。御者は修理をはじめた。戦争に振り回されて誰も気が付かなかった。まわりを見渡すと、季節はもう初春、蝶が舞い花が咲く田園地帯。みんな腹が減り始めた。御者は農家の軒先に干していた干し大根をかじったが、士族たちにはそれが食い物に見えない。そのうち、おきんの握ったお結びを大金を出して買う、と言い出した。おきんは鼻で笑って断ったが、お雪は、お結びを彼らにくれてやった。

  場面は変わって官軍陣営に、例の士族一家とお雪おきんがいる。みな捕まったらしい。この陣営を仕切るのは朝倉と言う将校。なかなかの男っぷりで誠実。朝倉とお雪、運命の出会い。しかし、二人にはあまりにも時間が無かった。突如、進軍ラッパが鳴り朝倉は出陣の準備を始めた。
  朝倉 「おゆき! 進軍ラッパがもう10分、遅かったら俺達は別の運命を持てたかもしれない。もう会うこともあるまい!」 そう言って朝倉は兵士達と共に出陣して行った。
  解放された士族一家とお雪おきんは、夜になって船着場に着いた。士族たちは出迎えの人々と挨拶し、いそいそと船内に。外輪船だ。案の定、お雪とおきんは乗船拒否にあう。船は沖合いへ。二人は桟橋にぼんやり立ち、波間に映ろう月を眺めていた。実はおきんも朝倉に惚れていた。
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  女ふたりは結局、城下町の自分達の店「わらじや」に戻ってきた。元々あばら屋の店が爆撃で、掘っ立て小屋のようになってしまったが、夕暮れ時に、傾いた軒先に縄のれんをさげ、わらじやのちょうちんに灯を入れると、もうそこは呑み屋。しかし街は誰一人いやしない。シーンと静まり返った店。
  あてもなく時が過ぎる。お雪はふと、店の奥に人の気配を感じた。なんと!それは負傷した朝倉であった。
  お雪が、自分自身とおきんと、そして暗に朝倉に、言い聞かせるように言うセリフが、実にすばらしい!!(以下口述筆記)

  「おきん、考えてもごらん、あの人を西郷方へ突き出したところで、それまでの話じゃないか。もしまた、逃がしてやったにしても、二度と会える人じゃない。この戦争がいつおさまるかは知らないが、いずれは官軍の勝利に決まっている。戦争が済んで官軍の兵隊が東京に引き上げてしまえば、ほれたもはれたもない。運よくいって朝倉さんが東京へ凱旋したと考えてごらん。それこそ金筋を光らせた陸軍の将校様だ。わらじやの一文酌婦が命がけでほれてみたって、添い遂げられる人じゃない。ほんの戦場の出来心。長続きのできる相手じゃないことは、おきん、お前だってわかっているじゃないか。」

  「しょせん、肥後の田舎の百姓と、江戸で育った旗本あがり、つりあいはとれっこない。」
  薩摩軍兵士はまだどこかに潜んでいるだろう。店の裏手は川。ふたりは、朝倉に裏口にある小舟を目くばせで案内する。朝倉は静かに頭をさげて小舟とともに闇に消えていった。

店先ajo  監督:溝口健二|1935年|80分||
  原作:川口松太郎(舞台劇・乗合馬車)|脚本:高島達之助|撮影:三木稔|
  出演:山田五十鈴18歳 お雪|原駒子 おきん|夏川大二郎 官軍・朝倉晋吾|中野英治 佐土原健介|歌川絹枝 通子|大泉慶治 おちえ|根岸東一郎 権田惣兵衛|滝沢静子 お勢|小泉嘉輔 儀助|鳥居正 官軍大佐


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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

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 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

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