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映画「アメリカン・スプレンダー」 監督:シャリ・スプリンガー・バーマン、ロバート・プルチーニ

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  Twitterじゃなく、本当の「心のつぶやき」は、減らず口だ。
  この減らず口の皮をむくと、たいがい聞くに堪えない。いや、誰にも聞かれない つぶやきだから、タブーは無い。時に激しい。
  どんな相手だろうが関係ない・・・
  「なに言うてんね、このボケが!」 「早よでけへんのか、はよ!」 「いて、こましたろか、この!」  たぶん、差別用語も連発だ。いくらつぶやいても、心は減らない。みんな、一日中つぶやいてる。

  そして他人より上に、いたい。
  自分の周りだけは、「自分より格下」の人間で囲んでおきたい。  
  あ~あっ・・・ダメなヤツ、愛想をつかされたヤツ、逃げられたヤツ、さえないヤツ、中年男/女、ケチなヤツ、しがないヤツ、悲惨なヤツ、トリエがないヤツ、孤独なヤツ、不器用なヤツ、仕事ができないヤツ、貧乏なヤツ、××なヤツ・・・
  おおっ、自分が浮上してくる、この安心、格上感。 この時、すかさず、浮いてる人間をたたき落とすヤツ。それを見て笑うヤツ。







カルテ棚  ハーヴェイ・ピーカー、36歳、バツ2。  この映画は実話である。
  アメリカの東北のほうにあるオハイオ州、クリーブランド在住。高校を卒業して、大きな病院に勤務している。長年、患者のカルテ管理の事務一筋だ。要求される患者のカルテをピックアップし、戻ってきたカルテを元の所にしまい込む。彼は日ごろ、身の回りの事や家事を人並みにうまくやれないらしい。(この病院は大丈夫だろうか)

ピーカー  すなおに言うと彼は変人である。つまり普通の人と違う視点、こだわりを持つ。偏屈とも言う。そして上に書いたような××なヤツの代表選手であるらしい。だが一番重要な事は、彼が無類のつぶやき男であることだ。  
  趣味はジャズを聴く。当然マニアックなのでレアな盤を探してガレージセールに顔を出す。そこで知り合った男とジャズや漫画について先鋭的に語り合っていた。この男ロバート・クラムは漫画を描いていて、その才能を認められサンフランシスコで一気に名を成した。
  ハーヴェイ・ピーカー、36歳、バツ2は考えた。俺はなんだ? 毎日毎日、イライラさせられる××なヤツばっかりの街で、イラついて人生終わるのか? コミック 
 
  しかし、××なヤツばっかりの日常を観察しているのは嫌いじゃない。ついつい見ている。面白いじゃないか。正直言って、自分も××なヤツ。そういう自分は、なんて正直なヤツだ。
  こんな思いが蓄積しだすと、表現したくなる。漫画のストーリーがいくつも浮かぶ。なにしろネタは自分の周りに掃いて捨てるほどにある。これを形にしたいため、黒丸頭の針金人間で漫画のようなことを試してみた。これをロバート・クラムに見せたら気に入ってくれた。ピーカーの原作をロバート・クラムが漫画に描く。一部でカルト的に受けはじめた。アメリカン・スプレンダー誕生であった。その後、紆余曲折あったがアメリカン・スプレンダーは揺るがぬ評価を受けるに至る。でもピーカーは、病院はやめずに務め続けた。
ジョイス・ブラブナー  
  ファンも出来始める。その一人が、コミック専門店をしていたジョイス・ブラブナー。ピーカーの家に引っ越してきた。健康の不調を訴えていたピーカーは、リンパ腺がんと診断された。まさかの事に夫婦で落ち込み、それでもふたりで乗り越えた。そして気が付けば、病院を定年退職できた。

  普通以下かもしれない男の成功という、アメリカ人が大好きなサクセスストーリーだが、よくある臭みはない。映画には本物の夫妻も登場している。


 
 
  ジム・ジャームッシュ監督の「ストレンジャー・ザン・パラダイス」で、ハンガリーから来た女の子が叔母の所へ行く、そこがクリーブランドだった。五大湖のひとつエリー湖湖畔の寒い都市。1970年代は不況で悲惨な状態だったらしい。
  テリー・ツワイゴフ監督の「ゴーストワールド」は原作がコミックだった。中年男シーモア(スティーヴ・ブシェーミ)がジャズファンでレコード収集家だ。ピーカーと似ている。
  ドキュメンタリー映画「ハーブ&ドロシー」は現代美術収集家の話。夫ハーブはマンハッタン生まれで高校卒業して郵便局勤務。手紙の宛先を地域別に仕分けするプロであった。これもなんだかピーカーと似ている。

ふたり  2監督・脚本:シャリ・スプリンガー・バーマン、ロバート・プルチーニ|アメリカ|2003年|101分|
撮影:テリー・ステイシー|原題:American Splendor
出演:ハーヴィー・ピーカー (ポール・ジアマッティ)|ジョイス・ブラブナー (ホープ・デイヴィス)
ロバート・クラム (ジェイムズ・アーバニアク)|トビー・ラドロフ (ジュダ・フリードランダー)|
本人 (ハーヴィー・ピーカー)|本人 (ジョイス・ブラブナー)


本人たち
本物の夫妻 (映画に出演している)

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 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

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 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

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