Home > 邦画評だけ見る 直近50作 > 映画「嵐を呼ぶ十八人」   監督:吉田喜重 出演:早川保、香山美子

映画「嵐を呼ぶ十八人」   監督:吉田喜重 出演:早川保、香山美子

トップ遠景2

  裕次郎やクレヨンしんちゃん、の映画ぢゃない。

門出  いい映画だ。
  呉の造船現場を扱う 鉄や錆や汗の臭いがする話だが、お作法がおしゃれなので映画は意外にさらりとしている。緻密な配慮、よく出来ている映画。頭のいい人が作った感じだ。どことなくフランス映画の芳香が漂う。例えばライティングの強弱の表情を楽しめる。例えば自動車の写し方が綺麗。また18人の立ち位置レイアウトは、当時のちょっと進歩的な舞台演劇を観ている感じ。



レイプ犯人捜し  大阪で職にあぶれた若い奴ら、中卒すぐ位から二十歳前の男たち、18人。もちろん互いに知らない間柄。手配師(芦屋雁之助)に職を斡旋されて、呉の小さな造船所にやって来た。非正規雇用。ジャンル的には臨時工で流れ者。鉄板を加工し溶接する。倉庫のようなワンルームに二段ベッドが並ぶ寮。
  反抗心はみんな人一倍だが、世間様に対して押し黙る知恵はある。押し黙らないのは、仲間うちだけ。だから仲間うちの境界線の引き方は、生きざまそのものだ。そんな奴らが呉に来て、一緒に住む。18人の中のどこに境界線があるか、手探りがはじまり喧嘩に。結果はみんな仲間、リーダーも決まった。

ふたり3  話の主人公は彼ら18人だが、映画の主人公は、島崎(早川保)。彼も臨時工だが、呉に来てもう長い、ベテランで腕はいい。ただし一本気で一匹狼、だから周りからは多少変人扱いされている。後に妻となる彼女ノブ(香山美子)がいる。
  この島崎が18人の寮の管理人を兼任することになった。同時に彼の給料前借帳消しのため。境界線外の島崎は18人の面倒をみることになる。一定の距離を置きながらも、徐々にお互いを受け入れ始める。


救出  この辺から映画が動き出す。
  不況の風で、造船所の正社員は組合ストライキで職場放棄。だが仕事は進めなくてはならない経営側は臨時工頼みになった。残業に次ぐ残業でみんな儲かった。その金持って呉の街で遊ぶ。パチンコ、ストリップ劇場、映画、ビアガーデン、ダンスできるゴーゴー喫茶。地元の若いもんと喧嘩になる。18人のひとり清一がやられて負傷。清一は相手のボス(平尾昌晃)を覚えていて仕返しを狙った。ついに市電の中でそのボスを刺す。

九州へ  造船所はついに臨時工の契約期間延長をしなかった。手配師は彼ら全員を九州へ送ることにした。そんな時、清一の母(浪花千栄子)が大阪からやって来て清一を引き取ると言う。
  手配師は17人の切符を買って呉駅で待っていた。九州へ向かう17人と手配師は列車に乗り込む。プラットホームで見送る島崎、清一母子たち。
  列車が動き始めたその時、清一は列車に飛び乗った。驚く母。
  18人は仲間だ。手配師が折詰と酒の小瓶を配り、車内はまるで修学旅行!・・・・・

  随所に抑制をきかせている。                     
  島崎があれ以上、18人に近づくと教師のようで臭くなる、その直前で止めて平板な話になるのを避けている。
  相手の18人、暗く重くならない程度の塩梅と、個の背景を詳しく描かない。その18人の見せ方が妙味。
  裏返せば分かりづらく欲求不満な映画。幼いが無頼の若者が体制や悪に立ち向かう大衆性はなく、若者が身を崩していくといった憐憫の情も誘わない。

  脇役がいい。
  特に、ノブのおばあちゃん役の浦辺粂子と、大阪から無賃乗車で呉に来た清一の母親役・浪花千栄子。お二方ともに脇役でチョイ役ですが、誰にも真似などできない、いい仕事!!してます。

  造船所は彼らを「製缶工」と呼ンでいる。鉄板を自在に組立加工溶接し塗装する。18人中、何人まともに技能があるのか。
  手配師(芦屋雁之助)をみんな「たこ師」と呼んでいる。今で言えば派遣か紹介かだが、合法なのか非合法なのか。
  呉は戦前は呉海軍工廠で「戦艦大和」が建造され、東洋一の軍港・日本一の工廠だった。だから敗戦後、米軍(進駐軍)は呉にも駐屯した。彼らが持ち込んだのが「かまぼこ兵舎」 これが米軍から払下げられて18人の宿舎になった。
  ある事件が理由で、呉市から広島市へ去ったノブに会うため島崎は広島に向かう。そしてナイターの広島球場で彼女と出会えた。このシーン、結構長くて、広島・中日戦が実際に行われている。そして中日の中継ぎ投手として、今やタレントの板東英二が投げている。(1959年、中日ドラゴンズに入団)

船
原題:18 Roughs|
監督・脚本:吉田喜重|1963年|松竹|108分|
原案:皆川敏夫 |撮影:成島東一郎|
出演 早川保 (島崎宗夫)|香山美子 (石井ノブ)|
<18人>
松井英二 (日出男)|岩本武司 (新吉)|木戸昇 (やすお)|西村勝吉 (良夫)|新治俊夫 (米二郎)|吉田茂久 (としお)|安田張介 (正夫)|近藤たかし (みのる)|安川洋一 (あきら)|広瀬義宣 (輝男)|生島孝治 (清一)|池戸英夫 (すすむ)|西京利彦 (ひろし)|山名良忠 (まもる)|中井忠行 (つとむ)|鳥居健造 (春夫)|田中康弘 (かつみ)|石田裕志 (たかし)|
<脇を固める名優たち>
殿山泰司 (造船所の村田係長)|中村芳子 (村田安江)|根岸明美 (村田の娘で教師、18人の面倒を見る久子)|三原葉子 (ノブの母・石井スミ)|浦辺粂子 (ノブのばあさん・石井ギン)|芦屋雁之助 (手配師・森山)|浪花千栄子 (清一の母)|平尾昌晃 (街のヤーさんボス・和夫)|

洋画の映画評だけ見る  ここから記事を読む 
   題名で探す   こちらから
   国名で探す   こちらから
邦画の映画評だけ見る  ここから記事を読む
   題名で探す   こちらから
   監督で探す   こちらから
観たい映画、気になる映画は、こちらから どうぞ
関連記事
スポンサーサイト

Comments: 0

Comment Form
Only inform the site author.

Trackback+Pingback: 0

TrackBack URL for this entry
http://odakyuensen.blog.fc2.com/tb.php/558-0d049f5f
Listed below are links to weblogs that reference
映画「嵐を呼ぶ十八人」   監督:吉田喜重 出演:早川保、香山美子 from 一夜一話

Home > 邦画評だけ見る 直近50作 > 映画「嵐を呼ぶ十八人」   監督:吉田喜重 出演:早川保、香山美子

タグクラウド
プロフィール

やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

RSSリンクの表示
Tree-CATEGORY

Return to page top