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映画「海と大陸」  監督:エマヌエーレ・クリアレーゼ  イタリア映画祭2012

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  「大陸」 とはアフリカ大陸だと思っていた。

  アフリカからEUへの不法移民が後を絶たないらしい。
  かれらは死に物狂いで地中海を渡ってくる。漂流してくる。そんな場に遭遇し、驚き戸惑う主人公たち。そしてそれを観て我々も、地中海の現実に驚愕する。

  映画の舞台はイタリア、といってもシチリアの沖合、南西に位置するペラージェ諸島。この島々の位置は、シチリアから遠く離れて、実はもうアフリカに近い。観光の島だ。コバルト色した海、新鮮な海鮮料理。でも夏場だけだ。通年、漁業は衰退している。魚がとれない。 イタリアの僻地、ペラージェ諸島の人々も時に「大陸」を目指す。

母  主人公の20歳の青年フィリッポの父親は漁師。海で死んで、もう3年になる。後を継ぐフィリッポは祖父と漁に出る。バイク屋の叔父は夏場は観光業で勢いよく稼ぐ、現実派だ。「漁師なんかやめておけ」と言われる。
  フィリッポの母は沈んでいる。3年経ってそろそろ、人生を切り替えたい思い。再婚が頭に過る。漁はやめてフィリッポとこの島を出てイタリア本土に行こう、そう決心した。そのために、今夏は観光客に自宅を貸して稼ごう。庭にはハンモックを用意した。漁船で海めぐりコース付。
  さあバカンスシーズン開幕。観光フェリーが島に着いて、大勢の観光客が下りてきた。フィリッポは手練手管で若者3人の観光客をつかまえ、一緒に自宅まで案内、宿泊のオーケーをもらった。

子  そんなある日いつものようにフィリッポは祖父といっしょに漁に出た。そして事件に出会う。多くの難民がボートに乗って漂流している。すぐに警察に無線連絡した後、気が付いた・・・。溺れそうな数人がいる。祖父は一瞬躊躇したが、その数人を船に救いあげろと指示をした。
  こういった不法行為が後を絶たない海。来たら送り返すのが鉄則だ。彼らを乗せてフィリッポの船は夜、寄港した。岸壁に着くなりアフリカ人はみな足早に闇に消えて行った。しかし、ただひとり残った女性がいる。身重だ! 出産が近い。少年もいる。祖父はこの母子を家に連れて帰って、かくまった。
  ここで映画は大きく動き出す。一家は、バカンスで稼ごう、どころではなくなった。フィリッポは?祖父は?母は? どう思い、どう行動するのだろうか・・・・。そして夜の海で、悪夢のような事件に我々は遭遇する。

  「不法行為をするアフリカ人は観光に悪影響だ。溺れていても見ぬふりが一番。」 「警察当局は厳重な警備監視をしている。だからアフリカ人問題は当局に任せておけばいい。」 「かかわれば面倒な事になる。救助して漁船差し押さえなんてことになったら・・・生活は立ち行かない。」
  「でもだ。人として、どうなんだ。」 混乱するフィリッポは、頭を冷やすべく海に潜る。その海底には、聖母の像が立っていた。 

海  映像がいい。
  漁船の船べりから乗り出したカメラは、波しぶきすれすれで臨場感を出す。海底から海面を見上げるシーン。船底を見せながら漁船が通り、漁網が下りてくる。あるいは観光客がいっせいに海に飛び込むのを海底から見上げる。そしてはるか上空から、白波が立つ波高し海を行く、一隻の漁船をスローモーションで描く。フィリッポの船だ。航行の方角は、イタリア本土。
  つっこみ所はあるが、朝日ホールまで出向いて損はなかった。アフリカ人の越境の現場が垣間見れる、いい映画だ。

原題:Terraferma (テッラフェールマ)|
監督:エマヌエーレ・クリアレーゼ(Emanuele Crialese)|イタリア|[2011年|88分|
出演:フィリッポ・プチッロ(フィリッポ)|Donatella Finochiaro(母ジュリエッタ)|Mimmo Cuticchio(祖父エルネスト)|Timnit T(アフリカ人の母サラ)|Beppe Fiorello(フィリッポの叔父ニーノ)|ほか

フィリッポ<イタリア映画祭2012にて>
  フィリッポ役の俳優フィリッポ・プチッロは、ペラージェ諸島のランペドゥーサ島出身。今もこの島に住んでいて、映画の中のフィリッポと同じで、観光業や漁業をしている。 「漁中に海に浮かぶアフリカ人の死体も見た、最近では500人ほどが船で島に到着した。」 そんな話をイタリア映画祭2012のステージで披露していた。
  ランペドゥーサ島は、シチリアから200kmの距離に対し、チュニジアの海岸からは110kmらしい。


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