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映画「祇園の姉妹 」  監督:溝口健二 主演:山田五十鈴

家

  京都祇園に生きる姉妹を描く映画だけれども、お座敷のシーンは2回しか出てこない。山田五十鈴がお得意の三味線演奏シーンも無い。映画は姉妹の日々の私生活を丹念に描こうとしている。また祇園のお客である旦那衆についても、そのご商売の店先シーンは少なくて、彼らの私生活の場面が描かれている。
姉 五条  さて、私生活=屋内ということなのか? 八坂神社境内以外に、祇園の街並みや京都の街の様子が映画にほぼ出てこない。姉妹が住む京町家を中心に屋内シーンが多い。だから昔の祇園や京都市街を観光できない映画である。
  
  当時、芸者はその手の女性がやる商売なんだといった通念が一般的だったかもしれない。男性優位の時代、わけても祇園は差別が特に露出する街なわけだ。しかし、映画はそんな状況をかき分けるようにして、祇園の女性の立場から祇園を描く。そういう意味からもこの映画、当時としては先鋭的だった。
  一方、作品が公開された1936年当時と、例えば情報溢れる現在を比べて、映画を理解する観客のリテラシーには大きな差があっただろう。作り手は伝えたい事を、少々大げさになるくらいに表現しないと伝わらないと考えていたかもしれない。
  誇張されたシーンとして、例えば、病院のベッドに横たわるラストシーンで山田五十鈴が吐く台詞や、姉妹の家に立ち寄った呉服屋の男から、豪華な反物をタダでまきあげる行為とその男の仕返しや、山田五十鈴が演じる妹の名を「おもちゃ」と名づけるなどが思い当たる。
  それを今の我々が真に受けて解釈してしまうと、たぶん作り手が想定した以上に、悲劇的な話、悪女と悪人の話だ・・・となってしまう。よって、あらかじめ、このあたりは差し引いて観ることにしよう。女と男の戦いなんて・・・、仲良くするのが一番。

来客  妹のおもちゃは女学校卒で、お出かけのファッションは流行を楽しんでいる。映画は、そんなおもちゃを当時の現代的女性として代表させていて、観客も、彼女の目線でもって祇園を見ていることになる。

  さて、おもちゃは退院後、どう変わっていくのだろうか?
  そのことについて映画は何も語らない。しかし、ここからが話として大きなポイントになるんじゃないかと思うんですが・・・。

  脇役がしっかりした映画で安定感を感じる。
  時代の波に乗れる乗れないの激しい競争が、静かな京都の街にもあったことを、脇役の演じる商家のご主人たちが我々に教えてくれる。特に冒頭のシーンは印象に残ります。

  最後に、祇園にはふたつの街があります。
  この映画は祇園のうちの「祇園東」になる。場所は京都市東山区四条花見小路上ル東側。鴨川を背にして八坂神社や東山方面をみて四条通りの左側。戦前は「祇園乙部」と呼ばれた。「祇園甲部」は現在、祇園と呼ばれている所。つまり八坂神社をみて右側。名が示すとおりに甲乙の差があったらしいです。

タクシー監督・原作:溝口健二|1936年|部分69分(95分)||
脚本:依田義賢|撮影:三木稔|
出演:山田五十鈴:おもちゃ(妹・芸妓)|梅村蓉子:梅吉(姉・芸妓)|志賀迺家辨慶:古沢新兵衛(木綿問屋の主人)|久野和子:おえみ(古沢の妻)|林家染之助:定吉(木綿問屋の番頭)|三枡源女:おはん(定吉の妻)|進藤英太郎:工藤三五郎(呉服屋の主人)|いわま櫻子:おまさ(工藤の妻)|深見泰三:木村保(呉服屋の番頭)|大倉文男:聚楽堂(骨董屋の主人)|葵令子:梅龍(芸妓)|滝沢静子:お千代(扇家の女将)|橘光造:立花(運転手)|




「京都今昔 歩く地図帖~彩色絵はがき、古写真、古地図でくらべる」
著書 井口悦男・生田誠 著 2011年発行(学研ビジュアル新書008)

  この映画で京都観光できなかった方々へ。
  
  この本を見ていると、京都は結構騒々しかったようだ。


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Comments: 1

やまなか URL 2014-05-25 Sun 20:24:52

> コメントありがとうございます。感謝いたします。
>
> 先日知ったことですが、私の同窓生が祇園で女将をしているとのこと。
> 一度、話を聞いてみたいものです。
> 今後もまた、コメントいただけると幸いです。
> やまなか
>

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