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映画「別離」    監督:アスガー・ファルハディ  イラン映画

上
娘tati  
  見ごたえがある。
  二組の家族の間で起こる、ささいな事から始まる いさかい事を映画は、上手にスリリングに語る。 次から次に、話が展開して、観る者は忙しい。

  それぞれの夫が、金のため、家族の将来のため、社会的な地位のため、はたまた大人の意地を通したいがため売り言葉に買い言葉、見る見るうちに、張りあう意地が上塗りされていく。勢い、嘘も方便に猜疑心。だんだん大ごとになって裁判に。
  こんな大人たちを、じっと見ている、双方の家族の娘。映画は、一貫してこの子たちの視点にいる。
  そして、この娘たちが、それぞれの置かれた立場で、振る舞うその行為に着目を。

  ストーリーはいささか ややこしい。
  まず、話の前段がある。
  イランの首都テヘラン、上等なマンションに住むのが、片方の家族だ。
  銀行に勤める夫・ナデルは、結構な高給取り・サラリーマン。4人家族だ。とても美人の妻・シミンは英会話の先生。11歳・中一の娘・テルメー、そして夫・ナデルの父さんは80歳を越えている。
介護  誰が見ても恵まれた家庭だと思うが、実は、この夫婦は離婚問題で裁判沙汰になっている。
  話はこうだ。娘の教育を外国で受けさせたくて、一家での海外移住を妻が主体で計画していた。煩雑な手続きが済み、認可がおりていた。認可後40日以内に国外に行かなければならない規則らしい。ところがナデルの父さんが認知症になってしまった。妻は娘とふたりで海外に行くと言う。夫は父親を置いて行けない、いやイラン国内で自宅で介護してやりたい。娘は置いて行け・・・。などと夫婦間で解決できなくなっていた。娘のテルメーは両親の言動をじっと見ている。で、妻はひとり実家に帰ってしまった。


罪?  ここから本題にはいる。
  夫・ナデルは昼間は会社、娘は学校だから、父親の介護ヘルパーが必要になった。
  専門の介護ヘルパーもいるだろうが、知らない人に任せられない。「妻」の義理の姉からの紹介で、ラジエーに頼むことになった。もちろん認知症の老人介護は初めてだ。4歳くらいの娘を連れてきた。ラジエーは、家政婦程度のつもりだったが、認知症の度合いが思いのほか重かった。
  初日に問題が起きる。老人が粗相をしてしまうが、イスラムでは親族以外の男性の体に触れてはいけない。ラジエーは帰宅してきたナデルに、この仕事を失業中の自分の夫・ホッジャトが肩代わりするのはどうかと言った。ナデルは了承するが・・・。
  ラジエー、その夫・ホッジャト、そして小さな娘、これがもう一方の家族だ。

介護ヘルパー  さて、もうひとつ問題がある。ナデルの家のような、妻のいない男の家に、イスラムの女性は行ってはいけない。ラジエーは夫に内緒で、この介護の仕事をし始めた。だから、仕事の無い夫に肩代わりさせたいが、夫に言い出せないでいる。信心深いというか要領が悪いというか夫が怖いというか・・・。夫は、金融業者からの返済催促で追いまわされてイライラしている。そうこうするうちに、ヘルパー3日目になっていた。

腹の子  この間にラジエーは流産してしまう。
  流産の原因は、ナデルがラジエーを押して倒れたから、ということになる。男は女性に触れてはいけないはずだ。ナデルはなんという男だ! そして俺の子を殺した!
  19週目の胎児だったので、イスラムでは殺人とみなされ因果関係がはっきりすれば1~3年の懲役になる。

いた00  また、ラジエーは老人をベッドに手首を縛り付けて外出してしまう。その後、老人はベッドから落ちて苦しい姿勢で気を失っていた。ラジエーはなんという女だ!
   
  ふたつの家族が、それぞれの夫たちが、言い争うこの顛末は裁判になっていく・・・、
  ナデルの一家の離婚問題は・・・。
  思わぬ結末が、あなたを待っています。

事故  それぞれの妻、シミンとラジエー。彼女たちは、すぐカッとなる男どもを差し置いて、現実的に解決しようと、夫よりも、いつも一歩先にいます。そして、うまくいかなくなると、実家の母親や親戚の女の同士で、解決していきます。最後には、シミンとラジエーの当事者同士で話をします。遅れて知る夫どもは、怒って怒鳴って威勢はいいのですが、空意地ばかり。そこが面白いです。

  イスラムの国と、そうでない国の差を言うよりも、映画は、どこの国にでもある事柄が取り上げられています。でもこの作品を観ることで、イスラムの神のこと、法律や金融のこと、知るきっかけになるかもしれません。
事故2
  アスガー・ファルハディ監督が脚本を書いています。が、一本の映画に、話を詰め込み過ぎたと思います。
  2回観ないと、よく分からない。    
  
ナデルの妻・シミンは美人。  
妻英語タイトル:Nader and Simin, A Separation

監督・脚本・製作:アスガー・ファルハディ|イラン|2011年|123分|
撮影監督:マームード・カラリ
出演:妻・シミン (レイラ・ハタミ)|夫・ナデル (ペイマン・モアディ)|娘・テルメー11歳 (サリナ・ファルハーディー)|ホッジャト (シャハブ・ホセイニ)|ホッジャトの妻・ラジエー (サレー・バヤト)|ナデルの父 (アリ=アスガル・シャーバズィ)|シミンの母 (シリン・ヤズダンバクシュ)|ソマイェ (キミア・ホセイニ)|ギャーライ先生(メリッラ・ザレイ)|判事 (ババク・キャリミ)|




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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

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 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
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