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映画「珍品堂主人」   監督:豊田四郎   淡島千景、森繁久彌

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  森繁がいつもと違う。
  森繁節が影をひそめる。森繁演じる男、趣味が高じて骨董鑑定士と認められて通称・珍品堂と呼ばれる男・加納は、実業家の九谷が会員制高級料亭「途上園」を立ち上げるために、いいように利用され、はたまた雇われ女将、蘭々女史(淡島千景)にこき使われ、散々な目にあう、か弱き男。

  淡島千景がいつもと違う。
  利にさとくツッケンドンで君臨欲旺盛な女性。久谷にこのプロジェクトの相談役としてスカウトされ、久谷の傀儡として働く。徐々に才覚を露わにして女将の座に座り込んでしまう。意地が悪い嫌われ役を演じる。眉間にほくろがある、冷たい表情の菩薩のようだ。いつもの淡島が演じるような役どころ、珍品堂の妻を乙羽信子、珍品堂が入れ込む新橋の料理屋の女将を淡路恵子が担う。

  だから、いつもの森繁&淡島コンビが好きな人は、観ていて居心地よくない。演技もギクシャクしている。ま、そんなところが狙いなんだろう。

  実業家の九谷は骨董の趣味がある。ある骨董の鑑定を通して、九谷と珍品堂は知り合うようになった。九谷は都心部に大きな屋敷を持っている。元は大名屋敷だろうか。空き家になっているが、維持管理はしていた。大きな池、大きな庭。これを見た珍品堂は、ここを料亭にすることを九谷に進言した。話はここから始まる。
  結果、アイデアだけを九谷盗まれて、珍品堂は割が合わない結末になる。
  話のはじめは支配人にするということで珍品堂は意気揚々であった。料亭で使うすべての食器は、気に入った骨董を模して京都でつくらせる。ひとりひとりの客の舌の好みを記録する手法も考え出した。屋敷を料亭に改造する設計図も用意した。が、このあたりから、九谷の傀儡・蘭々女史(淡島千景)が首を突っ込む。設計は女史がやることになった。女中募集の面接とその評価も女史が一手にやってしまう。
  開業はスムーズで客入りも上々。九谷は満足だ。女史は板前、女中、経理方をその権力下に収めてしまう。女中たち従業員のスト騒動がでっち上げられ、ついに珍品堂は自主退社を強いられる。その後、女史も追い出された。すべて九谷の、実業家としての手腕。珍品堂も女史も、初めっから九谷の手のひらの上、であった。

  ひょうひょうとした珍品堂は、九谷の口車と札束を見てツイ欲をだし、自分が苦手な事、つまり事業開発や組織マネージメントに手を出してしまった。骨董の鑑定はうまいが、「人」と「話」の鑑定は止めておいた方がいい。
  これは!という骨董を見つけ出して鑑定し、ひとり悦に入って眺めている、そのうち世の中が追いついて、珍品堂の鑑定が評価されるまで、彼はひょうひょうとしていればよかったのだ。こんな、誰にも出来ない事が出来る自分を、彼は見失っていた。思い上がり、いい気になっていた事が、目利きの目を曇らせた。

  九谷役の柳永二郎がいなければ、この映画はなりたたなかったろう。

監督:豊田四郎|1960年|120分|
原作:井伏鱒二|脚色:八住利雄|撮影:玉井正夫|
出演:森繁久彌(珍品堂主人・加納夏磨)|淡島千景(蘭々女史)|柳永二郎(九谷)|乙羽信子(お浜・珍品堂の妻)|淡路恵子(佐登子・「三蔵」の女主人)|有島一郎(宇田川)|山茶花究(島々徳久)|東野英治郎(村木・途上園の番頭)|千石規子(於千代・途上園の女中)|峯京子(利根・途上園の女中)|小林千登勢(喜代・途上園の女中)|都家かつ江(新山さく・途上園の女中)|市原悦子(明子・途上園の女中)|高島忠夫(佐山・アルバイト学生)|石田茂樹(勘さん・板前)|若宮大祐(格さん)|横山道代(阿井さくら)|河美智子(「三蔵」の小女)|林寛佐々(会計助手)


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 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

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