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映画「黒猫・白猫」  監督:エミール・クストリッツァ

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  ジプシーの映画ですが難しくなく、万人向けです。
  気楽に観れますが、そのクオリティはとても高い娯楽喜劇映画です。

ヤクザのダダンは、白く長い車体のリムジンをご愛用。
写真奥は大河・ドナウ河だ。

河
  2組の男女のラブストーリーを軸に、ユーゴスラビアはドナウ河沿岸に住む、荒くれのジプシー・ギャングたちの悲喜こもごもを、常に前向きに明るく描きます。元気がもらえます。ダンサブルなジプシー音楽が常に流れている映画です。実に大勢の人々、たくさんの動物が登場する、賑やかでとてもクレージーな映画です。ハッピーエンドな最後まで130分間、一気にみせます。



祖父と孫  工場主の祖父のザーリェと、ばくち打ちで身を滅ぼしそうなその息子マトゥコと、孫のザーレ19歳の親子三世代の男たちはドナウ河の岸辺に住んでいる。この3人が話の中心になります。
  入院中の祖父ザーリェは、工場を地場のヤクザのボス・ダダンに売って、多額の現金を手にしていた。老い先短いと感じるザーリェは、この金を孫のザーレに譲ろうとしている。ばか息子マトゥコに期待はまったくない。孫のザーレ19歳は、このあと、美しい女性イダに出会う。
  マトゥコとザーレふたりの稼業は、家の前を流れるドナウ河を航行中のロシア貨物船に近寄って行き、船員から洗濯機など家電を売り、ガソリンを買う商売だ。ザーレは双眼鏡でいつもドナウを行きかう船舶を見てロシア船が現れると緊急出動する。ま、いつもだましだまされる、やばい商売。

上写真、ゴッドファーザー。
下写真、ダダン。その昔ゴッドファーザーがイタリアにいた頃、
ダダンはその手下だった。

ゴッドファザー00
父  さて、ばくち打ちのマトゥコ(右写真)は、ヤクザのボス・ダダンに大きな負債を抱えている。何かでもうけて返済しなきゃと一発逆転を狙っている。これがストーリー展開のトリガーだ。石油を積んだ貨物列車を列車ごと強奪できるという大きな話をゴッドファーザー(左写真)に持ちかけて返済しようという計画。ゴッドファーザーとは、この地域のジプシー世界を牛耳る大ボスで、マトゥコの父ザーリェとは昔から深い仲である。
  ま、しかし、この手の話はうまくいかないモノで、結局、話はゴッドファーザーから地場のヤクザボスのダダンに降りてきて、ダダンのいいようにされてしまった。ほんと、悪い奴ほどよく笑う。



式0  マトゥコとダダンの返済交渉の密談の中で出て来た話が、ダダンの兄妹の末妹・アフロディタとザーレの結婚話だ。これで借金棒引き。しかしアフロディタは気が強いわがまま娘、さらには身長が1メートルほどで成長に障がいある女性で地元じゃ有名、テントウムシというあだ名。ダダンにすれば、愛する妹がいまだに結婚できないのが頭痛の種。さすがのマトゥコもおじけづいたが、拒絶するザーレを説き伏せて結婚話を進めるしかない。


ダダンと式場ダンス0  その頃、ザーレにイダという恋人がいた。相手のアフロディタもその気はまったくない。がしかし、式は強制的に行われる。ジプシーの村じゅうの人々総出の結婚式が、ドナウ河河畔の野外で行われる。ジプシー音楽の楽隊たちのダンサブルなサウンドに会場はダンスパーティーと化している。会場に迷い込んだアヒルやヤギも踊っている。このシーンが映画の中で一番にぎやかなシーンで楽しめる。しかし、ザーレにイダ(右写真)そしてアフロディタの3人は悲しみに沈んでいる。

  この成り行きを挽回するため、ふたつのことが行われた。
  ひとつは愛する孫を救うべく、祖父のザーリェは悪魔を呼び、自ら死への旅に出る。葬式の日に結婚式は行えないのだ。だが、マトゥコとダダンは彼のしかばねを屋根裏に隠し、結婚式を決行した。
  もうひとつは、式の席から逃げ出したいアフロディタを、ザーレは彼女に秘密の通路を教え逃亡を助けた。イダの指示で、式に参加しているジプシーの子たちもこの逃亡を助けた。さあ、ことは発覚して、マトゥコとダダンやその子分たちは、式場をあとにアフロディタを追跡し始める。彼女は林の中に入り込んだ。
林の中の電撃  そこへ、ゴッドファーザーの一粒種で、身長2メートルほどのグルガと、その父ゴッドファーザーのふたりが偶然この林を通りがかる。アフロディタとの電撃的な出会い。常々、グルガは一目惚れの相手と結婚したかった。ふたりの愛は一気に芽生える。そこへマトゥコとダダンが追いついて、この様子を見ている。
  諸事情を理解したゴッドファーザーは、グルガとアフロディタ、そしてザーレとイダの二組の結婚式を、今すぐ行おうと、マトゥコとダダンに指示をする。人々は、式場にもどり二組の結婚式をはじめる。


kyosiki.jpg  もちろん、ザーリェは白猫のおかげで息を吹き返し、旧友ゴッドファーザーと祝いの酒を酌み交わすのであった。
  そしてフィナーレ、ザーレとイダはドナウを航行する客船に乗り込み、この地を後にする。祖父ザーリェからの現金を胸に。
  

  なんとも、エネルギッシュな映画だ。
  イダ役の女優ブランカ・カティチ、マトゥコ役のバイラム・セヴェルジャン、ダダン役のスルジャン・トロヴィッチの3人以外はジプシーの人々だそうだ。


下オリジナル・タイトル:Black cat, white cat

監督:エミール・クストリッツァ|フランス、ドイツ、ユーゴスラビア|1998年|130分|
脚本:ゴルダン・ミヒッチ|撮影:ティエリー・アルボガスト|
出演:マトゥコ(バイラム・セヴェルジャン)|ダダン(スルジャン・トロヴイッチ)|イダ(ブランカ・カティク)|ザーレ(フロリアン・アジニ)|Sujka(リュビシャ・アジョヴィッチ)|ゴッドファーザーGrga Pitic(サブリ・スレジマニ)|“Big Grga”Grga Veliki(ジャセール・デスタニ)|“Small Grga”Grga Mali(アドナン・ベキール)|祖父のザーリェ・Zarije Destanov(ザビト・メメドッフスキ(ザビット・メフメトフスキー)|“Ladybird”Afrodita(サリア・イブライモヴァ)|Customs Officer(ストジャン・ソティロフ)|Black Obelisk(ゼダ・ハルテカコヴァ)|プレドラグ・ペピ・ラコビッチ|プレグラグ・ミキ・マノジョロビッチ|




この活劇を後ろであやつるのは、この白猫黒猫と、ゴッドファーザーだ。
組0
ダダンとゴッドファーザー。悪い奴は風呂が好き。
組02
「これが美しい友情の始まりだ。」とゴッドファーザーに言われる、マトゥコとダダン。


本「ジプシー 民族の歴史と文化」
アンガス・フレーザー (著) 平凡社

  <売り文句>流浪・漂泊の民というステレオタイプを排し、20世紀までの歴史を精緻に論じた決定版。

  「はじめに」から抜粋引用
  彼らは何世紀にもわたって明確なアイデンティティを守りとおし、適応と生存の驚くべき能力を発揮してきた。実際、彼らがなめてきた辛酸を考えれば、生き延びてきたという事実それだけでもたいへんな偉業である、と結論しないわけにはゆかない。これから展開される物語の大半は、その独自性を破壊しようと他者が彼らに何をやって来たかの歴史である。しかし、ジプシーが「ヨーロッパの民族」であることは、普遍的に認められた真理とはいいがたい。(引用終)



ドナウ河の流域と黒海。
地図


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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

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 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

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