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映画「乙女ごころ三人姉妹」    監督:成瀬巳喜男

流し0
三味線を抱える流しの娘たちと、お染。(右から2人目)


  昭和初期、場所は東京・浅草。当時、ここは日本一の繁華街。
  夜になると三味線抱えて、呑み屋やカフェを回る若い娘たちがいた。
  店内に入って、そこにいる酔客たちに唄を聴かせて、御代をいただく、「流し」という商売だ。
  相手が酔っぱらいだから、卑猥なこともする。もちろん、唄を断る客が多い。
  店のほうは、客の財布は自分のものと思っているから、馴染みの流しでも、店に来れば心の内じゃ・・・。だから、時には店内のラジオのスイッチを入れて、追い出す。

  母一人、姉妹三人の家が、話の舞台だ。
  母親は、流しの娘たちの元締めだ。年若い娘たちに交じって、上の姉ふたり、おれん、お染も流しをしている。末っ子の千枝子は、浅草六区の劇場でダンサーをしている。でも、家計は厳しい。

上  長女のおれんは美人でベテランで、浅草の街で顔がきく。だから、やくざ達からも一目置かれていた。そんなおれんは、劇場付きの楽団員に恋をした。そして家を出た。末っ子の千枝子も、恋が芽生える。現代っ子の彼女は、母親の保守的な考えに疑問を感じ始めている。

  母親は、稼ぎが悪い流しの娘たちに厳しい。そんな中で、次女のお染は、娘たちの柔らかな心を大事にしてやって、彼女たちの気持ちを束ねている。
  時にお染は、母と娘たちの板挟みになることがある。こんなしんどい商売を続けていくことに明日はない。そう強く思う。 だけど、だからといって、何ができる・・・。

  ある日、音沙汰が無かった姉のおれんが、浅草の街に現れた。
  お染は、再会を喜ぶが、姉の顔が暗いのが心配だ。姉から聞き出したことは、一緒に駆け落ちした彼が結核になって、楽団ができなくて稼ぎがなく、ふたりは困窮している、とのこと。
  仕方なく、おれんは決断する。古巣のこの街に戻って稼ごう。馴染みのヤクザから前金をもらって、ある仕事を引き受けるのであった。その仕事とは、ある見知らぬ男をある部屋に引き入れること。そのあとは、ヤクザの手荒い仕事であった。
  まとまった現金を手に入れたおれんは、彼と一緒に上野駅から、彼の故郷目指して旅経つのであった。

  しかし、残酷にも長女おれんの、この幸せは、次女お染と末っ子の千枝子の薄幸に支えられての幸せであった。なぜなら、おれんが引き入れた男とは、おれんが知らない千枝子の彼氏であり、この事件をたまたま裏窓から見ていた、お染は巻き添えを食って、ヤクザに刺されてしまう。
  腹に怪我を負ったお染は、それでも上野駅に駆けつけて、おれんと彼氏を見送る。まるで、何事も無かったかのように・・・。
  
  
  「流し」 という商売は、今じゃ、ほぼ見られない廃れた商売になってしまった。
  ギター片手に・・・、と言う以前は、三味線であった。
  今も現役活動している、双子の演歌歌手「こまどり姉妹」は、昭和20年代、浅草で三味線片手に苦労の「流し」をしていた。その後、レコード会社からデビュー。デビュー曲は「浅草姉妹」。北島三郎、五木ひろし、藤圭子も「流し」出身の演歌歌手だそうだ。
  この映画の原作、川端康成の小説「浅草の姉妹」に、次のような一節があるらしい。「(前略)・・その昔の門附女、鳥追いは、非人の女房か娘に限られていた・・(後略)」 この小説が書かれた時期は、昭和4~5年だそうで、川端康成が言う「その昔」とは、大正時代以前を言っているのではないかと思われる。だが、昭和10年製作の映画「乙女ごころ三人姉妹」の時代になっても、「流しの娘たち」への、人々の感情は、あまり変わらなかったのだろう。  
 

  映画 「こまどり姉妹がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! 」 の映画評は、こちらから。 (一夜一話の記事から)

  「流し」とは? (wikiへ外部リンク)  http://ja.wikipedia.org/wiki/流し

1937年(昭和12年)の浅草六区の風景写真。
http://ja.wikipedia.org/wiki/浅草公園六区 より。(外部リンクです)

六区監督・脚本:成瀬巳喜男|1935年|75分|
原作:川端康成『浅草の姉妹』|撮影:鈴木博|
出演:細川ちか子 (おれん)|堤真佐子 (お染)|梅園竜子 (千枝子)|林千歳 (母親)|松本千里 (お春)|三條正子 (お島)|松本万里代 (お絹)|大川平八郎 (青山)|滝沢脩 (小杉)|伊藤薫 (腕白小僧)|岸井明 (客)|藤原釜足 (酔っぱらい)|三島雅夫 (六区の不良)|大友純 (六区の不良)|








<三味線姉妹  作詩作曲:遠藤 実  昭和34年> 
1 お姉さんのつまびく 三味線に
  唄ってあわせて 今日も行く
  今晩は 今晩は
  裏町屋台は お馴染みさんが待ってるね
  つらくても つらくても
  姉妹(きょうだい)流しは 涙をみせぬ

2 お月さんも雲間に 顔を出す
  かわいい妹の 名調子
  今晩は 今晩は
  ねじめをあわせて テンツルシャンとゆくんだよ
  花の咲く その日まで
  姉妹流しは 涙をみせぬ

3 初恋の甘さも 知らぬのに
  せつない恋の 唄ばかり
  今晩は 今晩は
  のれんをくぐって えくぼを見せて呼びかける
  つらくても つらくても
  姉妹流しは 涙をみせぬ


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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
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