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映画「犬と女と刑老人 (シン老人)」   監督:シェ・チン

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       老人が住む集落は豊かだ。  見渡す限りの平原と点在する遺跡。
70 組333





老人と愛犬


                                  

  中国の北、内モンゴル自治区(内蒙古自治区)に接する 「寧夏回族自治区」 が映画の舞台のようだ。
  時は1972年、文化大革命の時代。文化大革命の美名のもと、理不尽な事が正々堂々と行われていたことを批判する映画。

  たぶんそれまで、その女性は夫と幼い子達と、貧しくも幸せな生活を送っていたのだろう。
  しかし、ある日、夫に対し、「お前は富農出身」だ、人民の敵・ブルジョア階級の人間だと、突然いわれのない痛烈な批判を浴び、あっという間に、どこか遠方にある強制労働収容所に送られてしまった。その後、まったくの音信不通。残された妻も、富農とみなされて村八分となり戸籍さえも失った。実際、彼女は未だかつて富農ような裕福な生活をしたことはなかった。
  彼女が住む地域は、周囲の平原に住む人々から「山」と呼ばれる山地の集落。その貧しさと厳しい気候ゆえ知られている。その上、今、村は飢饉であった。一家は飢えに耐えきれなかった。思い余った妻は、子をしゅうと夫婦に預けて、物乞いのために密かに家を出た。穀物の配給量は、ひとり一日に250グラム。自分が物乞いに出れば、自分の分の穀物を子供たちに回せる、そう考えた。
  ここまでのいきさつは、スクリーンに出てこない。ストーリーが進む中で少しずつ、分かってくる仕掛けだ。

女  この女性が、シン老人の住む村にたどり着いた時には、疲労と飢えで行き倒れ寸前であった。 一人暮らしのシン老人は、彼女を家に招き入れ、何も問いたださず、食事を出してあげた。食べ終わった女性は、疲れから、すぐに寝入ってしまう。シン老人は、女性を一泊させてやった。
友人  翌朝、シン老人の友人・ウェイ爺さんが家にやって来た。かつて山地から来て、この村の住人になった例もある。ウェイ爺さんは言う 「一日中歩き回って物乞いするより、この家に住み込みで、シン老人の身の回りの面倒をみてはどうか」と勧めた。続いて村の「人民公社」の生産隊隊長もやって来て、村は人手が足りない、農作業を手伝ってくれるなら村人と同様に扱おう、と言ってくれた・・・。

隊長3  この女性がこの村に居続けるためには、どういう手続きを踏まえないといけないか・・・。このことが、話が進むにつれて、次第に重要になってくる。 どこの公社に所属していたかを、この集落の公社に対し明らかにし、転入許可をもらう。そして戸籍をこの村に移す。こういう手続きが必要らしい。
  さて話が展開するなか徐々に、女性の身辺状況が明らかになってくる。
  シン老人は女性に聞いた。御主人は? 「いません。」 子供はここに引き取ってもいい。
隊長02  住所を教えてくれ、そうして公社から転入証明をもらおう。

  さらに事実が判明する。女性は 「山で富農とみなされている」 ことを聞いたシン老人は、村の生産隊隊長に打ち明けた。隊長は言った。「山」に夫がいるなら、離婚の手続きがとれる。だが、彼女が富農だ、ということは、政治の問題になってくる。この村で転入許可は出せるが、向こうの「山」では、この手続きを許さないだろうと。
  最後に隊長は言った 「手続きをしないで、とにかく黙っているのが一番だ。この村の中だけなら、戸籍がなくてもいい。」

  こういった大きな問題を抱えてはいるが、この女性は徐々に村に馴染んでいく。そのうち、ふたりは夫婦同様の生活を始めた。そして隊長もふたりの結婚を歓迎する。もちろん、60歳を過ぎたシン老人は、恥ずかしさと戸惑いを感じているが、村人はこうしたふたりを、はやしながらも受け入れた。

  だが、女性は、未だに名を言わない。「女」といってくれと言う。38歳らしい。シン老人を慕いながら、一方残してきた3歳と4歳の子達が気にかかる。もちろん、消息不明の夫への思いと諦めが、重く交錯している。
  そんなある日、「山」のしゅうとからの手紙が届いた。怪我をして歩けないと言う。そして子達が炭焼き作業に駆り立てられていることを知る。自分だけ幸せな生活をし始めたことに嫌悪する。「山」へ帰ると言い出す。そして、老人が留守をした隙に、密かに帰って行ってしまう。

宣伝  嘆く老人には、さらに無理難題が襲うのであった。それは「犬狩り」である。犬に与える食料は無駄だという。バカげた話だが、宣伝工作隊がこの村で全員を集めて犬を処分しろと告知した。逆らえない。誰もが「反革命」のレッテルを貼られたくないのだ。老人は、女を失い愛犬をも失おうとしていた。
   

下オリジナル・タイトル:老人与狗
英語タイトル:An Old Man and His Dog
シン老人の、シンは機種依存文字ため便宜上「刑」と書かれているが、本当は漢字の右側(つくり)は「阝」
監督:シェ・チン|中国|1993年|92分|
原作:チャン・シエンリアン|脚本:リー・チュン|撮影:ルー・チュンフー 、カオ・ケンロン|
出演:刑老人:シェ・ティエン|女:スーチン・ガオワー|魏天貴(ウエイ・ティエンクイ=生産隊隊長):フォン・エンフー|天貴の妻:リウ・ピン|魏(ウェイ)老人:カオ・パオチョン|小雪(シャオシュエ=魏老人の孫):カオ・イエン|馬三婆(マーザンポー=馬婆さん):モン・チン|小虎媽(シァオフーマ=馬三婆の嫁):ルー・チュンメイ|老唐(ラオタン=床屋の主人):フー・ティエチュン|喬(チァオ)老人:ウェイ・チーチン|宣伝工作隊長:ワン・チーホン|

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