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映画「裸の十九才」    監督:新藤兼人

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卒業式00  どんな殺人犯も、はじめは素直な普通の子であった。
  ここは青森県の片田舎。
  その後の犯人・山田道夫15歳は、山田家の7番目の子。彼の下にはまだ弟妹がいる。父がいない貧しい家庭だった。家庭訪問に来た先生と、教師・生徒・保護者の三者面談で、集団就職で東京行きを決意した。
  母(乙羽信子)は、「上の兄たちも東京に行ったが、行ったきりで手紙もない」と。先生(戸浦六宏)は「父親がいない家庭などと誰かに言われることのない、道夫君を誰も知らない東京で、新たな一歩を踏み出しては」と言う。
上野駅  上野駅まで引率してきた先生は、就職組の生徒たちを都の職員?に引き渡す。集団就職と言う社会レールに乗って多くの若い中学生が都会の各所に散って行った。高度成長期を支える頼もしい働き手であった。
  道夫の親しい同窓生は、町工場や蕎麦屋などに住み込んだ。彼は一階がしゃれた果物屋、二階が喫茶店となっているフルーツパーラーに勤め始めた。ぽっと出の田舎者で都会の空気を知らず、社会的礼儀や勤め人としての生き方も知らず、道夫はじめフルーツパーラーに就職した中学生たちは、時を置かず徐々に退職していった。ここから道夫の第二の人生が始まる。

  大人になりたい。
  今の自分は、とても弱い。なにも知らない。幼い。びくびくしている。自分でもそう思う。 15歳の若い田舎者は馬鹿にされる、大人に叱られる、都会の女に相手にされない。
組 10  それなりに手ごたえのある仕事を持って、女と遊べて・・・。
  いや、それだけじゃ、東京に出て来た甲斐がない。
  だが、そんなことよりも、今、自分の中は空っぽだ。

デモ  学生運動のデモを見た。大学生が羨ましい。熱いものを持ってて、必死だ。あんなストレートさが欲しい。
  それと、都会のワケが分かって、金があって。そして、そうそう、何かガツンとした力が欲しい。この俺を思い知れって感じ。そんな力を持っていたい。
  スーツを買った。鏡を見る。街を歩く。大人になった気分。
  米軍基地の住宅で、ハンドバックの中に拳銃を見つけた。
  これは面白い。空っぽの自分が銃を握ると、その凝縮した重みが、手の中で、じわじわと何か充実感に変わっていく。東京タワーにのぼった。タワーの上から、下界のあそこに狙いを定めた。楽しそうなホテルのプール。

  地上に降り立ち、そのプールのガードマンを撃ってしまった。とっさの事だった。殺意なんかない。 そして、プールから走り出した。この時、道夫は第三の人生を歩み始める。
                 その後


おんな00  女に出会った。(太地喜和子)
  自分と同じで集団就職で出て来た。互いに気が通じた。 
  肌を合わせて知った。自分と同じ臭いと温度を持っている近しい感じ、親しみを感じた。
  一緒になってオママゴトのように暮らし始める。
  自分はゴーゴー喫茶で毎夜ウェイターをして・・・、何か日々が充実している。都会に出て来て、いや、人生で一番にいい気持ちかもしれない。
  しかし、この日々は、女の元彼のチンピラが出て来て、あっと言う間に終わってしまった。 もしも、彼女との生活がそのまま続いたならば、その後の事件は起きなかったかもしれない。





振り返り  振りだしに戻る。
  職を転々としながら、大阪や名古屋にも住んだが、ひとところにいると息が詰まる。
  一方、わけもなく焦っている自分が分かる。何かに追い詰められている。追い詰めているのは自分自身かもしれない。追い詰められた行き止まりで、拳銃を持つと暗雲のような焦りや追跡から解放される。晴れ間が見える。拳銃を持つ理由には、金欲しさもある。だが所詮、タクシーで奪う額はたかが知れている。あちこちの街を渡り歩いた。振り返ってみると、結果4人を射殺していた。

  以上、映画のストーリーについて書いて来ましたが、ご存じのとおり、この話は実話を基にしています。型にはまった事は書く気がしないですが・・。
  1968年~1969年にかけての連続ピストル射殺事件。刑死者(元死刑囚)は永山則夫(1949~1997.8.1)。映画が1970年に制作を終えていますから、それだけに、映画公開当時は生々しい現代性を持っていたと思われる。一方、当時は誰もが知っていた大事件ですから、わざわざ映画を観なくてもという向きもいたでしょう。また、諸々の評論は既に世にあって、情報満載の時です。映画公開の1970年、その時、この映画はどう観えたのでしょうか。
  それから40数年、今、この映画に観るべきは、何なんでしょうか。
  珍しく、訴えかけ風になっているぞぃ。

  逮捕後、各報道が、道夫の関係者にインタビューするシーン。同窓生、先生、元彼女やらの発言が怖いです。あんなに簡潔に完結した答えが、彼らの中にあること、それを表にさらりと出すこと。怖いです。そう思いませんか。

(上段) 留置所にて。 「何で俺を網走に置いて、母さんは引っ越して行ったのか」 母「ご免よう」 道夫の原点は、これだった。
(下段) 母親を襲うマスコミの取材班たちのインタビュー内容が暴力だ。 静かな田舎では、その暴力性が露わになる。

組2 下
監督:新藤兼人|1970年|117分|
脚本:新藤兼人 、関功 、松田昭三|撮影:黒田清巳、高尾清照|
出演:山田道夫:原田大二郎|母・山田タケ:乙羽信子|山田初子:吉岡ゆり|山田義郎:厳波郎|山田半次郎:草野大悟|
権堂先生:戸浦六宏|校長:岩田直二|林咲枝:鳥居恵子|労務者:大木正司|佐々木フジ:平井岐代子|婦長:佐々木すみ江|やくざ:小川吉信|病院の事務員:江角英明|更生審議会副会長:松下達夫|民生委員:戸田春子|義郎の妻:富山真沙子|米屋の主人:織田順吉|その妻:初井言栄|安宿の婆さん:初音礼子|中年の男:浜田寅彦|賭博師:殿山泰司|刑事:佐藤慶|りんご園の人夫:小松方正|道夫の最初の就職先フルーツパーラー・大西:河原崎長一郎|同左・野川:渡辺文雄|少年院院長:観世栄夫|道夫と同棲しようとした女:太地喜和子|朝顔:黒葉ナナ|ガードマン:芦田鉄雄|網走の大家:松井染升|

万惣  どうでもいい事ですが、映画に出てくるフルーツパーラー店ですが、渋谷駅前の西村の店だと思っていたのですが、写真のとおり、「Manse」とドアに書いてあります。「万惣」ですかね。だとすると道夫が就職した先は渋谷じゃない。ああやっぱりどうでもよい。




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