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映画「ヘヴンズ ストーリー」   監督:瀬々敬久

上
象徴的なシーンとなる、廃坑鉱山の集合住宅群



  肉親を殺された被害者とその加害者が、長い時間軸を伝って密接にからんで行くお話。
  複数のエピソードが抱き合わされていて、どこか一点でふたつの話が交差する。

                      ふたつの理由なき殺人事件、そして時が経ち・・・。
現場  ミツオ19歳(忍成修吾)は、川岸で憩う若い母と乳母車に眠る幼子を容赦なく惨殺した。殺す理由は何もなかった。
  ミツオは未成年であったから死刑は免れて無期懲役の判決がおりた。
  妻子を亡くした夫・トモキ(長谷川朝晴)は、最初の現場発見者であった。記者団のインタヴューに「自分の手で犯人を殺したい。」と答えてその様子がテレビ放映された。


家族123  サト8歳(本多叶奈)は、友達の家族と一緒に夏の海に行っていた。その間に、父母と姉が何者かに殺された。犯人は犯行直後に自殺してしまう。殺される理由は何もなかった。ひとり取り残されたサトは、トモキのインタヴューをTVで見た。私には殺す相手がもういない。この手で殺したいと訴えるトモキがスーパースターのように思えた。

  時が経ち、トモキはタエ(菜葉菜)という若い女性と出会う。タエも傷つき屈折しながら生きて来た女であった。お互いに慰め合えたのだろう、後に結婚し可愛い娘が生まれた。
16歳  同じ時間が流れて、サト8歳は16歳(寉岡萌希)になった。今でもトモキのインタヴュー発言が頭に残っている。そんなある日、トモキの家族を惨殺した犯人・ミツオはなぜか釈放された。それを知ったサトは、トモキを追い求めてついに彼の居場所を探し当てた。トモキは防波堤そばに建つマンションに幸せそうに住んでいた。思い溢れる気持ちを抑えて、サトは言った 「殺すんじゃなかったんですか? 」  トモキ、「妻子を殺された人間は幸せになっちゃダメなの? 」  サト、「ダメだと思います。」 そして、この頃からサトはトモキを愛するようになっていく。妻・タエからすれば、サトは夫の深い闇から現れた魔物であり、サトの接近は家庭崩壊へと向かいはじめる前兆となった。

組100  一方、犯人・ミツオは・・・。それを語るには、時間をさかのぼって話を始めなくてはならない。
  「これから生まれる人間に、僕のことを覚えていて欲しい。」 これは、無期懲役の判決を受けた時に、ミツオが発したコメントだ。このTV報道を恭子(山崎ハコ)という女が見ていた。彼女は若年性アルツハイマーに苦しんでいた。まるで自分が今、思い悩んでいる事、そのままだ。彼女はミツオに興味を持ち、文通を始める。釈放されると彼を養子にして、自分の身の回りの世話をさせていた。ミツオも熱心に彼女の介護をした。犯人のもうひとつの側面である。当たり前だが、人はいくつもの顔を持っている。
  彼女の病の症状が思いのほか進んで行く。恭子の生まれ育った東北の鉱山の町、そこは今は廃墟と化しているが、ミツオはそこへ彼女を連れて行こうと決めた。
  ミツオと恭子、このふたりの後を追うふたりがいた。トモキとサトであった。ミツオと恭子は廃墟に入っていく。トモキはミツオを追いかけた。しかし、トモキはミツオを殺すことができなかった。だがトモキは病弱な恭子を殺した。愛する人を殺された痛みを知れと・・・。
  さて、自宅に帰ったトモキは、妻・タエが娘を連れて家を出たことを知る。数日して、家のキッチンにサトが立って家事をしている。
男  さらには、窓の外に、ミツオが乗った車。車内から彼はトモキに電話した。「あなたの妻子を殺して悪かった。だが殺した理由は今もわからない・・・。」   この電話が意味することは、恭子を殺された復しゅうの宣告でもあった。ミツオは車を走らせた。トモキはバイクで追いかける。それを追ってサトが走った。

もうひとつの話。元警察官・カイジマのこと。
  警官時代にカイジマは強盗を射殺した。もちろん職務としてかつ正当防衛であった。しかしその後、射殺してしまった事で、カイジマは罪悪感にさいなまれ続け、警官を辞職する。その後も、彼は強盗の妻・チホ(根岸季衣)に仕送りを続けて来た。その金の出所は、カイジマのアンダーグラウンドな仕事・復しゅう代行だった。だが、アンダーグラウンドゆえ、カイジマは何者かに殺された。仕送りが途絶える。背に腹は代えられぬ強盗の娘・カナは、カイジマの家へ物色に行った。そこでカナはカイジマの拳銃を発見する。

ここでまた、ふたつの話が交差する。
  見つけた拳銃でカナは、駐車中のミツオを脅すシーンがある。結果この場でミツオは拳銃を入手する。
  また、トモキを追うサトが、カナのそばを通りかかる。 

妻子を殺されたトモキと、その犯人ミツオ。
 ミツオを受け入れてくれた恭子を殺したトモキ。

  さて、トモキとミツオは、その先にある公園にいた。誰もいない丘の上。
  刺し傷を負って、互いにナイフを構え合うふたり、息が荒い。ミツオは持っていた拳銃でトモキを撃った。ついにふたりは相討ち状態で倒れている。互いに出血多量、瀕死の状態。そこへサトが到着し、トモキを抱き上げて泣くが、トモキは息を引き取った。
  トモキは妻子を殺した犯人・ミツオを、自分の手で殺すことができた。

  さて、ここまでが話の概略だ。これら複数の話の展開が次の九つの章に分散して語られる。
    第1章 『夏空とオシッコ』    第2章 『桜と雪だるま』
    第3章 『雨粒とRock』     第4章 『船とチャリとセミのぬけ殻』
    第5章 『おち葉と人形』     第6章 『クリスマス☆プレゼント』
    第7章 『空にいちばん近い町1 復讐』 
    第8章 『空にいちばん近い町2 復讐の復讐は何?』
    第9章 『ヘヴンズ ストーリー』  

  だから278分間、よくよく注意して観ていないと、頭が混乱してくる。寝ちゃだめだ。
  各所に冗長なシーンがある事。あれもこれもと詰め込み過多で、映画がストーリーを消化、掌握しきれていない事。こんなことが、この映画の地盤をぜい弱なものにしている。残念だ。
  また、元警察官・カイジマのエピソードは、映画では上記以上に大きく取り扱っている。がしかし、話の内容が、ほかの話とは異質であって、本作に組み入れられた事に大きな違和感が残る。  
  さらには、映画冒頭とラストにある神話的シーン。言わんとする事はわかるが、このシーンは映画本体と乖離している。これをまともにやるならば、ストーリーを再設計しないといけないと思う。

はじめ0監督:瀬々敬久|2010年|278分|
脚本:佐藤有記|撮影:鍋島淳裕、斉藤幸一、花村也寸志|
出演:サト:寉岡萌希|サト(8歳):本多叶奈|トモキ:長谷川朝晴|ミツオ:忍成修吾|響子:山崎ハコ|タエ:菜葉菜|サトの祖父ソウイチ:柄本明|サトの父:吹越満|サトの母:片岡礼子|弁護士:嶋田久作|美奈:渡辺真起子|女医:長澤奈央|
カイジマ:村上淳|ハルキ:栗原堅一|チホ:根岸季衣|カナ:江口のりこ|直子:大島葉子|鈴木:菅田俊|シオヤ:光石研|黒田:津田寛治|波田:佐藤浩市|岡本芳一|諏訪太朗|外波山文明|


瀬々敬久の映画


  「アナーキー・インじゃぱんすけ 見られてイク女」

紹介  気に入った。
  登場人物たちに好感が持てるんです。・・・なぜ?
  一見、異端な人々?デフォルメされた登場人物像を解きほぐしていくと、そこに現れてくるのは、ごく普通の人々。 どこにいても おかしくない自信なさげな人々。 いい年して独身、地元でいつも同じ顔ぶれでツルんでる、疲れてる、仕事は一応持ってるが、なげやりな人生。 でも元気だぜ! 夢もある。
  続きはこちらから






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 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

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 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

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