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映画「にあんちゃん」  監督:今村昌平

炭坑海に面した鶴ノ鼻炭鉱の全景



              安本の子達が住む炭坑の社宅(炭住)
炭住2



  佐賀県唐津市の、海に面した鶴ノ鼻という小規模炭鉱での話。
  時は、昭和28年(1953年)。

兄妹00  この地に住む安本家には、4人の子達がいる。
  長男の喜一・20歳、 長女の良子・16歳、そして二番目のあんちゃん「にあんちゃん」 こと高一・12歳、 末子・10歳の、計4人の兄妹が主人公だ。

  映画は、この子達を置いて先だった父の葬儀で始まる。母はいない。
  安本家は在日朝鮮人の一家。だから、その出自のため、父は鶴ノ鼻の非正規雇用・炭坑労働者であった。長男・喜一(長門裕之)も炭坑で働いているが非正規である。
  だが、この炭坑に勤務する人々は、社員であっても総じて貧しい。米が食えずイモが主食となることも多い。給与は、現金ではなく、ここだけに通用する炭坑会社発行の金券である。辛うじて給与の遅配はないが、支給金額は減っていく。
  わけても安本の4人兄妹は貧しい。常時イモだ。時々、近所に米一升を借りに行くが、返す見込みがない。
組合00  ある日、赤字続きの鉱山は、ついに人員削減に踏み切る。
  最初に対象になったのは、非正規の人々。喜一らが解雇された。さらに第2段の人員削減の意向を示す会社と反対する労働組合。会社は言う、雇用数を半減して会社を存続させるか、一気に閉山廃坑か。判断は会社にも組合にも迫られる状況。
  社宅に住む人々が、徐々に姿を消していく。安本の子達も、社宅を明け渡すしかない。住む所が無い。兄姉に勤め先が無い。

見送り  だが、彼らを思いやる人々もいた。父の同僚や鶴ノ鼻に住む在日朝鮮人たち、そして小学校教師や保健師(吉行和子)だ。まずは、長女の良子・16歳(松尾嘉代)に住込みの話を斡旋してくれた。良子はこの鶴ノ鼻を去る。兄妹が離れるのは初めてであった。


末子  次に遅れて長男の喜一・20歳にも住込みの話があって彼もこの地を去った。そして残されたあんちゃん12歳と末子10歳は、在日朝鮮人の夫婦に一旦引き取られたが、辛い食事と重労働に耐えきれずに鶴ノ鼻に舞い戻った。教師や保健師の女性が2人を受け止めてくれた。日ごろ意地悪婆やで有名な在日の老婆、坂田の婆(北林谷栄)も、しょんぼりする末子に声をかける。「元気だせ、昔の朝鮮の女もっと強かったぞ!」 
  兄妹4人、離れ離れに暮らすことになっても、絆を忘れずに生きて行こう・・・、というところでエンドになる。

にあんちゃんと末子  下記に原作:安本末子とある。
  ストーリーは実話であり、兄妹の末っ子の末子が、当時書き続けた日記は、のちに出版されベストセラーとなった。にあんちゃんは慶応義塾大学に、末子は早稲田大学を卒業したらしい。

アップ11


  保健師の吉行和子と、兄妹の長女・良子の松尾嘉代が初々しい。
  日記に忠実なせいか、映画の話にまとまりが無くパラけている。また10歳の末子から見える範囲の、兄妹それぞれの行動や炭坑の様子であるため、残念ながら表面的だ。映画は、話を絞って展開した方が良かったのかもしれない。
  
監督:今村昌平|1959年|101分|
原作:安本末子|脚色:池田一朗、今村昌平|撮影:姫田真佐久|
長男出演:安本喜一・長男:長門裕之|安本良子・長女:松尾嘉代|安本高一・にあんちゃん:沖村武|安本末子:前田暁子|
香典坂田の婆・在日の金貸し:北林谷栄 →|
金山春夫:在日・鉄くず商ほか:小沢昭一 →|
在日・閔の主人・にあんちゃんらが預けられた家:大森義夫・・とぼけた味がある|閔の妻:牧よし子|

堀かな子・保健師:吉行和子|桐野先生:穂積隆信|辺見源五郎・父の同僚:殿山泰司|その妻たつ:辻伊万里|
その他の配役
夫義雄:福原秀雄|妻花子:高山千草|正禹:高木均|北村五郎:西村晃|妻菊枝:田中敬子|西脇:浜村純|妻せい:山岡久乃|いりこ屋主人西河:大滝秀治|娘多和子:加代あけみ|鉱業所長:芦田伸介|総務部長:河上信夫|労務幹部:加原武門|坑夫長船:草薙幸二郎|保健所係長前田:日野道夫|かな子の母:岸輝子|松岡亮一:二谷英明|福島精肉店主:松本染升|東京自転車屋店主:高原駿雄|


組
鶴ノ鼻という小規模炭鉱のスト中の風景



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