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映画「日本列島」  監督:熊井啓

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  この映画は、1960年日米安保闘争のさ中に過去を振り返り、終戦1945年から52年まで、つまりGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)占領下時代から、GHQの特務機関を通してCIA(アメリカ合衆国中央情報局)が日本で活動していた事実を広く伝えようとする映画です。

  話の始まりは、「第9陸軍技術研究所」いわゆる「登戸研究所」だ。
  東京・新宿から小田急線に乗り、多摩川を渡ってすぐの川崎市登戸に、この研究所はあった。ここでは、日本陸軍が細菌兵器や毒物、風船爆弾など特殊な研究を極秘で行っていた。その研究テーマの中に経済謀略戦用兵器があった。その実態は、ある印刷機の利用だった。中国・アメリカなど敵国の経済をかく乱するために紙幣を大量に偽造したり、スパイ活動のためのパスポートを偽造するために、精緻な印刷物を刷るドイツ製特殊印刷機(ザンメル)が研究所内で使われていた。陸軍の特務機関からの指示だったろう。

  さて終戦後、この印刷機がGHQによって登戸研究所から持ち出された。日本陸軍がやったことを今度は朝鮮戦争(1950-53年休戦)に向けて、CIAが密かに日本でやり始める。まずは、ザンメルのオペレーター技師の確保、つまり登戸研究所で紙幣を印刷していた人間の拉致が行われる。ザンメルは、特殊な凸版印刷機なために、この印刷機に精通したオペレーションがないと刷れない。
  映画の登場人物では、伊集院元少佐が熟練技師に該当する。ある日、この元少佐が自宅から拉致された。当時、その幼い娘・伊集院和子(芦川いづみ)もその場にいた。拉致は、GHQにいてCIA関連任務を行う涸沢(大滝秀治)という男の指示で行われた。
伊集院  時代は流れて1959年、主人公の秋山(宇野重吉)は、現在、教師になったこの娘を見つけ出し、この事実を知る。映画のラストでは、伊集院元少佐が沖縄にいる、との情報を得て秋山が沖縄に向かう。しかし、ふたりともに、何者かによって殺害されてしまう。警察の追跡調査はすぐに迷宮入りし、事件はフェイドアウトする。


  ここまでが、この映画の基本的な展開である。そして、この展開に付随して虚実交えて様々なディティールが作り込まれている。
  主人公の秋山(宇野重吉)は米軍基地内で通訳の仕事をしている。ある日、秋山はアメリカ陸軍犯罪捜査司令部(CID)所属の軍人・ポラック中尉から「個人的な特命」だとして、ある事件の調査を依頼される。事件とは、1年前に起きたアメリカ軍人殺人事件で、日本の警察が遺体を回収したが、アメリカ軍が強制的に遺体を米国へ送ってしまい、かつ迷宮入りになった事件だった。
組0  秋山は、まず警視庁捜査三課の黒崎を訪ねた。そして、その秋山の行動は昭和新報記者の原島(二谷英明)の知るところとなる。 こののち、秋山、原島は、ザンメル印刷機の行方を追う。そして、登戸研究所を知る涸沢の元部下の証言を得て、伊集院和子(芦川いづみ)に出会い、GHQ占領下時代から存在する、CIAと連携する国家機密という大きな背景下で要員として暗躍し続ける男・涸沢(大滝秀治)を追うことになる。
  そもそも、ポラック中尉からの「個人的な特命」とは、殺されたリミット曹長は中尉の元部下であったことで、中尉が事実を解明したかったための特命だった。また中尉の所属するCIDは、CIAの動きを知る由もない。かつ、秋山に依頼した調査は、CIAの指示で急きょ中断される。だが秋山は職を辞し、個人で事件を追うことになる。

  映画ラストは、伊集院和子が父と秋山の死を乗り越えて、「闇の無い日本にしたい」という思いを抱くところで終わる。矮小化された結末であるのが残念だ
  また、実際に起きた迷宮入り事件をも交えながら監督の真摯な追求姿勢が読み取れる一方、あれこれ多くの事柄を映画に詰め込んだことで、戦後史に詳しくない者には散漫な印象を受けがちだ。
  しかし、一度は観ておきたい映画である。 

下英語タイトル:A Chain of Islands

監督・脚色:熊井啓|1965年|115分|
原作:吉原公一郎(小説日本列島)|撮影:姫田真佐久|
出演:宇野重吉:秋山|二谷英明:原島|鈴木瑞穂:黒崎|芦川いづみ:伊集院和子|木村不時子:小林厚子|紅沢葉子:とよおばさん|西原泰子:椎名加代子|北林谷栄:佐々木菊子|庄司永建:川北|大滝秀治:涸沢|日野道夫:生沢|武藤章生:宮川|佐野浅夫:佐々木|内藤武敏:日高|下元勉:警視総監|加藤嘉:刑事部長長弘捜査一課長|雪丘恵介:捜査三課長|ハロルド・コンウェイ:K・ロベルト|S・ウインガーブルノー・ボードワン:ガンター・ブラウンルイス・サミエル|ガンター・スミス:J・ポラック中尉|平田守:服部|F・ブルノースペンサー大尉|チャーリー・プライスン:E・リミット曹長|白井鋭男:A|高山千草:メイド|佐々木すみ江:栄子|小柴隆:記者A|露木護:記者B|伊豆見雄:中野部長刑事|山岡正義:下山事件の刑事|横田楊子:黒崎の妻|小野武雄:小学校の小使|土田義雄:T版印刷班長|長尾敏之助:伊集院元少佐|加藤洋美:佐々木の長女|二階堂郁夫:佐々木の長男|伊藤寿章:サミエルの弁護士|中山次夫:夏夫|相原ふさ子:和子|


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