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第14回東京フィルメックスのまとめ   映画「ハーモニー・レッスン」、「鉄くず拾いの物語」、「わたしの名前は...」、「夏休みの宿題」、「花咲くころ」、「トランジット」、「見知らぬあなた」、「カラオケ・ガール」、「若さ」、「郊遊<ピクニック>」:監督:ツァイ・ミンリャン

シンボル  第14回東京フィルメックスで観た映画10本をご紹介します。
  計10本の映画を良かった順に並べてみました。
  
  「ハーモニー・レッスン」と「鉄くず拾いの物語」は同位同列。「夏休みの宿題」と「花咲くころ」も同位かな。ツァイ・ミンリャンの「郊遊<ピクニック>」は、ランキングするに馴染まないので、最後に添えている。悪いと言う意味ではないが、そう良くはない。
  観た映画をこうして並べてみると、偶然ですが女性監督作品が多く、また子供が出てくる映画が多いですね。




組  「ハーモニー・レッスン」
   原題:Harmony Lessons|Uroki Garmonii|
   監督:エミール・バイガジン (Emir BAIGAZIN)|カザフスタン、ドイツ、フランス|2013年|115分|
  これはいい映画だ。
  カザフスタンの田舎の村が舞台。主人公は、そこに暮らす13歳の痩せっぽち少年アスラン。両親はなく祖母とふたりで暮らしている。まじめで一途な性格。理系で成績は良く、付き合いは悪い。昆虫やトカゲ、電気工作、火薬製造などに熱中する。体調が良くない、時々吐く。クラスに好きな子がいる、美人。この国の学校は小中高一貫の11年制。アスランが通う学校では、高校3年生年齢の双子の生徒が、校内を支配する。この双子の権力傘下にいる、傀儡の番長とその手下(いわゆる悪がきたち)による、悪さやイジメは日常茶飯事。定期的に校内で生徒集会をし、さらには生徒から現金を集め、大人のヤクザに渡している。
  アスランのクラスに街から転校生が入った。体格が良く、番長を張り倒した。アスランと仲が良くなる。ある日、その番長が殺された。アスランとその転校生も警察の尋問を受け、結果牢屋に拘束され、取り調べ、拷問、自白強要される。ふたりは無口無罪を通したが、ついに転校生は、ある自供書を強要され、書いた。その内容は、アスランのその日の行動に関するウソ供述だった。転校生は釈放される。アスランへの拷問虐待は続いた。そんな中、例の双子のボスが逮捕される。彼らが真犯人らしい。アスランは、病院に送られ療養生活をしている。この間、転校生は自らの命を絶っていた。
下  静かな湖の向こう岸から、転校生と番長が、アスランを呼んでいる。水面を歩いて、こっちへ来いと。
  殺人に関することを映画は多く語らない。だが、確かにアスランは拳銃を自作していた。エンディングも、とてもいい。この映画は、買い手がついて公開されるだろう。





組0  「鉄くず拾いの物語」  
   原題:An Episode in the life of an Iron Picker|
       Epizoda u zivotu beraca zeljeza|
   第14回東京フィルメックス特別招待作品|
   監督:ダニス・タノヴィッチ (Danis TANOVIC)|
   ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、フランス、スロベニア|2013年|74分|
  これも、いい映画だ。
  ボスニア・ヘルツェゴビナ北部のボスニアの田舎が舞台。舗装されてない泥の細道の突き当たりにある小さなロマの集落。夫婦と幼い娘2人の一家4人の話。ある日、妻が急な腹痛で病院へ。診察で流産だと分かって至急手術が必要だったが、痛み止めの処置だけをして、追い返されてしまう。手術前に現金支払いを要求されたが、一家にそんな高額の金はなく、夫は分割支払いを願い出たが病院の回答はノーであった。この国には、もちろん医療保険制度はあるが、「外国人」は原則として保険の対象外、よって全額自己負担。この集落に300年住む無職のロマの人々は、国民ではないらしい。
  帰って来た妻に痛みがまた出て来た。焦る夫は、家付近のゴミ捨て場で、鉄くず拾いを始めたが、そう簡単には医療費は貯まらない。時間が無い。そこへ朗報、親戚の保険証を貸してくれることがわかった。そして新たな病院へ行った。親戚の名を使い、身分証は置き忘れた言い訳で、なんとか手術をしてもらえた。その後の薬代のために、夫は自分の車を解体して鉄くず屋へ持って行った。なにしろ、彼らロマに職がないのだ。近所の林に入ってマキになる木を切り倒す。現金収入は鉄くず集めなのだ。
  これは、事実に基づいたストーリー。かつ素人の演者は、実際の当事者たちだ。つまり自分たちに過去に起きたことを、カメラの前で演じている。限りなくドキュメンタリーに近い劇映画だ。誰が観ても心に迫ってくる。ストレートで力強く、地に足がついた語り口。分かりやすい映画だ。そしてベルリン映画祭で審査員グランプリ、男優賞、エキュメニカル賞特別賞の3賞を受賞した映画。そんなわけで、来年1月から新宿武蔵野館ほかで公開。なるほどね。ぜひ、観てもらいたい。





組0  「わたしの名前は...」 
   原題:My Name is Hmmm...|Je m'appelle Hmmm...|
   第14回東京フィルメックス特別招待作品|
   監督:アニエス・トゥルブレ(アニエスベー) (Agnès Troublé (aka agnès b.))
   フランス|2013年|121分|
  セリフはわずか、映像だけで物語れるよく出来た映画。静かな映画です。ですが、キーワードは父親の娘に対する近親相姦。これが10歳の娘が家出した理由。イギリスの男が運転する赤い大型トレーラーで、ふたりはフランスの田舎を疾走する。フランス語しか話せない娘と、英語しか理解できないドライバー。 しかし自然と互いに心が通じ合う。途中で娘の失踪事件がマスコミを騒がしていることを知るが、ふたりに動揺はない。ドライバーは、ついに警察に逮捕される。が、取り調べにドライバーは黙秘を続ける。そして突然、男は取り調べ中に、そばにあったペーパーナイフであっけなく自殺してしまう。
  警察は、この男がレイプしたと確信していた。そう言う警察の発言を聞いて、男はその時初めて娘の家出理由を知るのである。
  なぜに自殺したのか。ドライバーが身を持って娘の父親をかばい、娘の一家崩壊を回避させたと監督は言う。監督にそう言われちゃ、もう言う事はないが、男は何故トレーラー・ドライバーの真似事をして一人フランスを放浪していたのか・・・、観る者は考える。かつ,男は死んだと言う家族の写真をしばしばながめていた。自殺してしまうこの男、イギリスで何かしでかしたのだろうか? 娘に対する近親相姦事件をまのあたりにして、男は過去に自分がしたことに自分で決着をつけようとしたのでは・・・。そう思いながら映画を観ていたのですが。突然の自殺は奇異です。監督言うには、取り調べ中に突然自殺したと報道するベタ記事を読んで物語を発想したらしいです。ラストでは、少女の様子は描かれていません。彼女は家に戻るのでしょう。でも取り返しがつかないことに変わりはありません。




組0  「夏休みの宿題」  原題:A Time in Quchi|暑假作業|
   監督:チャン・ツォーチ(CHANG Tso Chi) |台湾|2013年|109分|
  舞台は台北の郊外にある山あい、湖あり渓谷あり緑多い田舎。ここに父方の祖父がいて、10歳の少年バオと幼い妹が祖父に預けられる。祖父と父親は疎遠なんだろう。互いの様子をあまり知らない祖父と孫。預けられるわけは、両親は既に別居していて、バオは父親に、妹は母親に引き取られているが、それぞれ仕事が多忙で子供の面倒を見切れない、そんな事らしい。バオは台北に住んでいて、タブレットでゲームする都会っ子で鍵っ子だ。そんなバオだが徐々に、祖父に慣れ、ここの学校に慣れ、友だちも出来る。
  豊かな自然を背景に、祖父と孫との愛、田舎の子達との交流、学友の死、台風による洪水や停電など自然の荒々しさが描かれていて、総じて誰もが馴染みやすい。オーディションで集めた素人子役たちが誠に自然な演技で素晴らしい。しかし、両親の離婚問題や父親の妹の出戻りなど大人世界との接点がぼんやりしていて、結果、孫の帰省だけが印象に残る。これじゃ、ホウ・シャオシェンの「冬冬の夏休み」の焼き直しになってしまう。脚本の詰めが宿題の映画、残念。(ホウ・シャオシェンの「冬冬の夏休み」の記事は、こちらからどうぞ。)






組2-0  「花咲くころ」  原題:In Bloom|Grzeli nateli dgeebi|
   監督:ナナ・エクチミシヴィリ、ジーモン・グロス (Nana EKVTIMISHVILI, Simon GROSS)
   グルジア、ドイツ、フランス|2013年|102分|
  黒海の東岸にある国グルジア。1991年にソビエト連邦から独立。その後間もない頃のお話。独立したものの、グルジアの政局不安は、依然改善されず治安悪化が続く荒々しい時代。これが映画の背景だ。
  主人公は14歳のエカとナティア、ふたりはクラスメイトで親友。彼女たちが通う学校は旧態依然の体制で、これに反発する青春真っただ中の生徒たち。結果校内は荒れている。なかでも、このふたりがほかの生徒と違うところ、それはエカは父親を知らない。幼い頃から父は刑務所にいて母子家庭で育った。エカは無口だ、心に鬱積する圧を抱え込んでいる。ナティアの場合は、父親が酒乱で、これが原因で家族関係は荒んでいる。家族が揃う食事時、父は決まって荒れる、言い返す母、それをなじる祖母と弟。耐えるナティアは家を出たい。彼女は大人びていて美人。彼氏は、この街には不在がち。ナティアはしつこく言い寄るある男と成り行きで結婚してしまう。(当時、この国では14歳の結婚は珍しく無かった。)彼氏がいるのに成り行きで結婚してしまうナティアに、エカは喜べない。だが結婚式で祝いの踊りを踊るエカ。しかし始まった新婚生活で、夫は余りにも威圧的な態度を妻ナティアに示すことになる。その頃、ナティアの元彼が街に戻ってきたが、男同士の抗争から彼はナティアの夫に殺される。さあナティアとエカは・・・。うーん、悪くはないんだけど、複数の話が散らばってしまっていて、観たあとに印象が残りにくい。



組1-0  「トランジット」  原題:Transit|
   監督:ハンナ・エスピア(Hannah ESPIA)|フィリピン|2013年|92分|
  イスラエルのテルアビブが舞台。かつてフィリピンから出稼ぎに来て、現在この地で定住する姉弟の話。40歳代だろうか、姉は、イスラエル人家庭への、通い家政婦で生計を立てている。年ごろの一人娘と小さな部屋のアパートに住んでいる。その娘は西洋風の美人。イスラエル男性との間に生まれた。かつて姉はその男性の家政婦だったんだろう。
  このアパートに同居人がいる。5歳の誕生日まであと少しの男の子だ。姉の弟、の息子。姉の家に預けているのだ。なぜなら弟は、病気のイスラエル人男性の郊外にある家で、住込みの家政夫をしている。休みの日に弟は息子に会うため姉の家に来る。そんな日々。
  姉弟は、三つの問題を抱えている。ひとつは、イスラエルでは外国人労働者の4歳までの子は、当局に見つかればフィリピンへ強制送還される。もうひとつは、姉のビザが切れていて不法滞在者となっている。三つ目は、姉の娘も、弟の息子もイスラエルで生まれて母国フィリピンを知らない。特に娘は自分のアイデンティティはイスラエル人と思っている。イスラエル男性と恋仲。母娘の間には、世代の違いと国境がある。
少年  だから弟の4歳の息子は、部屋から出られない。可愛そうに思う姉は時折り、勤め先のイスラエル人の家へ男の子を連れて行く。警察に見つかる危険がある。街を歩く時、緊張はする。こんな大胆な姉の行動を、その家の雇主のイスラエル人奥さんは心配している。ある時、姉がサングラスをしてひとり街を歩いていると、警察官から身分証明書の提示を求められる場面があった。がしかし偶然にも、その奥さんがその場を通りかかり、姉を救った。
  そんなこんなで弟は、息子を住込みの家に引き取った。ある日、その家のイスラエル男性の容体が急変し車椅子から落ち、床に倒れ込む。家にいたのは男の子ひとりだった。慌てたその子は、父親を捜しに家を飛び出た。そこへ警官が通りかかる。子供はヤバいと思ったが次の瞬間に、容体が急変した雇主のことを警官に伝えた。
  父は警察から呼び出され、強制送還を言い渡される。取調室の待合場所で、男の子は雇主の男性から教わったユダヤ教の聖書の一節を、突然にうたいだす。自分はイスラエル人、強制送還しないでくれと・・・。
  なかなかいい映画なんだけどね・・・。ストーリーの「語り口」が、少々くどいんだ。それが残念。
  つまり、キーになるシーンがあって、このシーンを一度観たあと、話は進むが、再度このキー・シーンが出て来て、続いてサブのエピソードが始まる。ふたたび映画はメインストーリーに戻るが、しばらくしてまたさっき観たシーンを繰り返して、別のエピソードを語りだす。そんな仕組みだ。エピソードというのは、姉弟やその子たちの個別の話。エピソードの数だけ、キー・シーンを繰り返す。くどい。さらに、こうしたキーになるシーンはいくつかあって、その各シーンごとにエピソードがある、同様の仕組みになっている。映画の題名であるトランジットとは「通過」という意味。つまりキーになる各シーンが通過点になっている。



見知らぬあなた  「見知らぬあなた」  原題:Forgetting to Know You|陌生(Mo sheng) |
   監督:チュエン・リン(QUAN Ling)|中国|2013年|87分|
  重慶郊外の村が舞台。30歳前後くらいかな、夫婦不和の話。
  来年小学校の娘が一人いる。昼は保育所に入れている。妻は美人。彼女は街角にある、さびれた雑貨屋を営んでいる。結婚前に交際していた男は、この辺りでは有名人、押しも押されぬ立派な実業家資産家になっている。最近、店先に毎日来る男がいる。口説きに来ている。妻は、嫌がる風情はない。むしろ、沈滞する日々を何とかしたい。
  夫は木工家具の工場長。真面目で無口。小学校の同窓生が重慶で成り上がっている。そんな彼から、高価なヨーロッパ輸入家具の模造品を製造販売して儲けようという話。夫の勤める工場が閉鎖されるのだ。工場のオーナーは、格安で工場をこの夫に譲ろうとしていた。だが、工場の土地を買いたいという話が割り込んできて、工場譲渡価格は、グーンと上がってしまう。工場がないとコピー家具製造販売の儲け話が吹っ飛んでしまう。さて妻は・・・。
  妻の交際相手への、夫の嫉妬。男として不甲斐ないメリハリないと思う妻の気持ち。夫に何も相談せず、元彼から多額の金を借りる。一旗揚げたい夫。娘は実業家の子種だという街の噂を告げる夫の妹。アバンチュールしてみたい妻。しゅうとめとギクシャクする妻、夫。揉め事があった夜の夫婦生活、等々。とまあ、夫婦不和になるようなメニューがずらりと並ぶが、表現がどれもステレオタイプ。なんか、こう、夫婦の心の綾が、観客の心のひだに届かない。小説が本業という若い女性が監督。人生経験が浅い(こりゃ仕方ないか)。
  プロデュースはジャ・ジャンクー。彼の製作部隊が監督のバックについて製作されたらしい。だから、技術的には優れているし、安定感がある。あとは肝心の脚本ですね。残念。



カラオケガール  「カラオケ・ガール」  原題:Karaoke Girl|SAO KARAOKE|
   監督:ウィッサラー・ウィチットワータカーン|タイ、アメリカ|2012年|77分|
  タイの片田舎で育った主人公の女性サーは、15歳の時バンコクに出て来てケーキ工場に勤め、家に仕送りをはじめる。その後、サーはナイトクラブのホステスとなる。客もとるセックス産業だ。収入は格段に増え仕送りの額も増えたに違いない。親には内緒だ。田舎の父は、長年病気を患っていて働いていない。サーの稼ぎで一家は生活している。バンコクに出て来て、はや8年。田舎へは時々電話はしているが、久々の帰省。年老いた両親、やんわり金をせびる叔母、誰もいない静かな野原や川、癒やされる心、村の祭りは楽しかった。
  実際にそういう業界で働く女性が、この映画の主人公。とても魅力的な女性だ。この女性なくして映画は成立しなかったろう。
  タイの北部や東北部出身者にセックスワーカーが多いらしい。貧しいんだ。そんなことを伝えたい映画らしいが、ホンワカしていて何を言いたいのかわからない。ハイソな感じの若い女性監督。うん、そうだろうな・・・。監督らしい映画と言える。
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  タイ・バンコクにおける同じテーマをかかげた映画に、2012年に製作された富田克也の「チェンライの娘 (同じ星の下、それぞれの夜)」がある。こちらからどうぞ。一夜一話の記事。



若さ  「若さ」  原題:YOUTH|
   監督:トム・ショヴァル|イスラエル、ドイツ|2013年|107分|
  イスラエルのテルアビブ近郊が舞台。アパートに住む両親と兄弟。この家の生活レベルは中間層の下か下層に属するくらい。何やら、このアパートを退去しなければならない。追い出されないように、手続き書類をたくさん準備しているが、果たして・・・。父親は失職している。長男のヤキは18歳、徴兵されて来週には家を出る。すでに軍服やライフル銃は家に届いている。アキが兵役に就く前に、兄弟にはやることがあった。近所の高校に通う女子高生を誘拐し身代金を得る計画だ。誘拐する女子高生に目星はつけてある。高校の下校時、人影がない路地で兄弟はその女性を襲い、自分たちが住むアパートの共有スペースにあるガランとした地下倉庫に連れ込む。身代金要求のために、彼女の携帯を使って親に電話するが誰も出ない。彼女はユダヤ人であり、今日はユダヤ教徒の安息日であったのだ・・・。
  イスラエルはユダヤ人の国、ヤキ一家のようなイスラエル系アラブ人は総人口の1/4か1/5。当然、ユダヤ社会から差別されているし生活レベルは低くなりがち。そんなヤキがイスラエル軍に徴兵される。彼らの目線を通してこの国の今を語る映画。しかし、兄妹が誘拐するに至る心の流れや、父親の最期のなぜを映画は説明しない。物語は観客が想像しろという考えかもしれない。じゃその分、イスラエルの国内問題を掘り下げるに力点をおくのか、でもない。たぶん若い監督なのだろう、これからを期待したい。



この「郊遊<ピクニック>」は、ランキングしません。枠外になる程に悪いという意味では決してないです。

組0  「郊遊<ピクニック>」 原題:Stray Dogs|郊遊|
   第14回東京フィルメックス特別招待作品|
   監督:ツァイ・ミンリャン (TSAI Ming Liang) |台湾|2013年|138分|
  父親とそのふたりの子、そして女の話。舞台は台北。父と子たちは、路上生活。看板持ちでわずかに現金収入を得る父親。子たちは、試食コーナーで腹を満たしている。ねぐらは廃墟ビルの片隅に、マットレスを敷いて蚊帳を吊るす。身体を洗うのは、公衆便所の水道。夜間に不可解な行動をする女が、この一家に近づき、一家を自宅に招く。この自宅は洪水で荒れたビルの一室だった。
  セリフが無く、カメラを固定しての、やたら長いシーンが多い映画。監督が言うに、この作品の中身は、父親役を演じたリー・カンション以外に何もない、と。言い得て妙。意味ありげな廃墟と、忙しなく車が行きかう台北の大きな交差点での長回し。無駄に長いシーン、意味不明なシーン等々、この難解さを有難がる向きもあろう。それもいい。一方、この映画、絵画的だ。つまりスクリーンからの説明は無く、どう観るかは、観る人の数だけある。その人が経験し考えて来た自分の内面世界を映し出す鏡かもしれない。そして、とても舞台演劇的な映画だ。映画の出だしからしてそうだ。無言劇、抽象演劇風な舞台を観ているようだ。そんな映画だ。
  さすが大御所ツァイ・ミンリャン。公開が決まったらしい。堂々とした映画で面白く観たが、さて・・・。

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やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

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