Home > 邦画評だけ見る 直近50作 > 映画「集金旅行」、「土砂降り」  監督:中村登  出演:佐田啓二、岡田茉莉子

映画「集金旅行」、「土砂降り」  監督:中村登  出演:佐田啓二、岡田茉莉子

上
「集金旅行」
  こんな喜劇映画、今じゃ作れない。ストーリー展開がスカッと一直線に前傾姿勢で突き進む。岡田茉莉子が物語を色っぽく気丈に牽引する。話のつじつまが、どうのこうのと小さな事は初めっから考えてない。雑とも言えるが楽しい大衆性。井伏鱒二の原作は1937年。これを1957年バージョンで作ったことになる。この映画、観光地巡りの映画でもある。1957年昭和32年、みんなの好きな昭和30年代。国内旅行もままならぬ時代、映画が娯楽の王様だったのだろう。

  東京にある望岳荘という木造アパート。当時こういうアパートに、世の中のたくさんの人々が住んでいた。望岳荘の大家は、かみさんに逃げられた父子家庭。その子供勇太は、こんどは父を失う。アパートの人々は勇太を心配するが、彼は意外とさらっとしている。こんなところが暗くならなくていい。見せ場はここじゃないよって映画は言ってる。
  だが、大家は借金を抱えていて、金貸し香蘭堂(十朱久雄)が取り立てに来た。遺品の帳簿を見て住人達は、大家が副業で金貸しをしていたことがわかる。大家が貸した金を回収して彼の借金をチャラにし、残金を勇太の母に養育費として渡そう、勇太は母と暮らすのだ、と住人たちが相談し始める。帳簿によると債務者の住所は、岩国、山口、萩、遠い。誰が行くか・・・、白羽の矢は失業して暇そうな旗良平(佐田啓二)に。その時、相談の場に入らずにそばで歯を磨いていた、夜のご商売の女・小松千代(岡田茉莉子)が、「それじゃあたしも行く!」。

徳島にて。 阿波踊りのパレードの中、千代の
馴染み客で大親分(アチャコ)と凧を踊る。
周りの踊り手は、凧の糸を繰るように踊るシーン。
ああ観光映画は楽しだ。

組0
  えっ、その場にいた住人一同は???だ。
  懐がさみしい千代は、かつて関係した男たちから慰謝料をふんだくる計画を思いついたのだ。その男たちが現在住むところは、大家が金を貸した先と場所がかぶる。千代の頭の中は、高速回転しだす。
  「あんたについて行く、ついでに借金回収も手伝ってあげる」と千代。迷惑そうな旗。そんなわけで、借金回収、慰謝料取り立て、勇太を母のもとへ、の三人組、旗と勇太と千代の珍道中が、暑い夏に始まる。
  旅先で出会う債務者や千代の馴染み客らを、大泉滉、伊藤雄之助、トニー谷、アチャコなどベテランが演じる。これが見もの。
  また、岡田茉莉子もいい。旅館の蚊帳の中にいる色っぽい千代は旗を誘うが、男は乗ってこない。当時の映画館で、よだれを垂らす男性観客の顔が思い浮かぶシーン。ラストは、あれっ!という結末。(左写真)
  


監督:中村登|1957年|103分|原作:井伏鱒二|脚色:椎名利夫|撮影:生方敏夫|
出演:旗良平:佐田啓二|小松千代:岡田茉莉子|四国の大親分の津村順十郎:花菱アチャコ|望岳荘主人の山本仙造:中村是好|妻浜子:小林トシ子|子供勇太:五月女殊久|金貸しの香蘭堂:十朱久雄|松尾六造:伊藤雄之助|松平公夫:大泉滉|歌子:沢村貞子|医者の箕屋官次:トニー谷|阿万築水:西村晃|アパートの住人五番さん:桂小金治|ほか

上2
「土砂降り」
  一転してこの作品は、つまらない。
  南千住にある、ことぶき旅館。国鉄の貨物操車場の際の、人通りの少ないところにある。温泉マークのネオンサインが小さくチカチカ光る。ラブホの前身。
  旅館の女将(沢村貞子)は、三人の子を育てて来た。役所に勤める松子(岡田茉莉子)、大学生の竹之助、高校生の梅代(桑野みゆき)。
  母・たねは妾だ。父親の大久保(山村聡)が時々訪ねてくる。ことぶき旅館は大久保が当時、たねのために用意した。この妾の家族は、子が幼い頃から、温泉マークの一階に住んでいて、客の出入りや声を四六時中、接してきている。そんなあれやこれやを飲み込んで普通に思って、一家はそれなりに穏やかな生活をしていた。

組0  松子の職場の須藤という男(佐田啓二)、松子と恋仲で結婚を誓い合っていた。須藤の家は、母一人子一人、後になって分かるが、この男はマザコン。ふたりの関係を知った須藤の母は、松子の素性調査のため、ことぶき旅館を訪ねる。ここからふたりの運命は転落していく。松子は自暴自棄になって、(ここまでは良いとして・・・)誰にも知らせずに家を出て失踪。ひとり神戸のキャバレーで働く。この転落度合いが、今の感覚じゃ、付いて行けないな。ここまで身を落とさないと、当時、観客は満足しなかったんだろう・・・か。さらには、須藤は職場の汚職事件に巻き込まれ、警察の手を逃れて、これまた神戸へ。ふたりは、キャバレーで出会う。どろどろの逢瀬を重ね、でも須藤は東京の母へマザコン。「東京へ帰りたい、だが松子が自分を離さない」 そんなウソの手紙を母へ書く須藤。つまんない。
  怒る松子。で、ラストは・・・・。


監督:中村登|1957年|105分|原作:北条秀司|脚色:椎名利夫、中村登|撮影:長岡博之|
出演:ことぶき旅館の女将・母・阿部たね:沢村貞子|長女・松子:岡田茉莉子|長男・大学生の竹之助:田浦正巳|次女・高校生の梅代:桑野みゆき|旅館の女中・初枝:三谷幸子|父・大久保和吉:山村聡|松子と同じ職場の男で一度は結婚の約束をした須藤一夫:佐田啓二|一夫の母・須藤滋子:高橋豊子|阿部由松:日守新一||町工場の老人:中村是好|ほか


中村登の映画「古都」  主演:岩下志麻

  どういう事情だか、この世に生まれてすぐに生き別れた双子の娘が、
  互いの顔も、両親の顔も知らずに、
  ひとりは、西陣の呉服問屋の一人娘として育ち、
  片や、北山の奥深く中川の村で、北山丸太の丸太磨きとして働いている。
  このふたりが、その夏に祇園祭で賑わう四条河原町あたりで、出会った。
  続きはこちら。いい映画ですよ。

TOPページ (総合案内) ここから見る
   テーマ別映画特集・人気ランキング・新着映画紹介が見れます。

洋画の映画評だけ見る  ここから記事を読む 
   題名で探す こちらから
   国名で探す こちらから

邦画の映画評だけ見る  ここから記事を読む
   題名で探す こちらから
   監督で探す   こちらから
観たい映画、気になる映画は、こちらから どうぞ  
関連記事
スポンサーサイト

Comments: 0

Comment Form
Only inform the site author.

Trackback+Pingback: 0

TrackBack URL for this entry
http://odakyuensen.blog.fc2.com/tb.php/888-d784f96b
Listed below are links to weblogs that reference
映画「集金旅行」、「土砂降り」  監督:中村登  出演:佐田啓二、岡田茉莉子 from 一夜一話

Home > 邦画評だけ見る 直近50作 > 映画「集金旅行」、「土砂降り」  監督:中村登  出演:佐田啓二、岡田茉莉子

タグクラウド
プロフィール

やまなか

Author:やまなか
 日ごろのアクセス、本当にありがとうございます。気づけば、ブログを始めて8年目に入りました。一夜一話に掲載したい映画、まだまだあります。気の向くまま、その時の気分でやってます。遊び半分じゃなく、「全部遊び」です。

<一話一夜の方針かな>
 1)古今東西の映画を分け隔てなく並べて、気に入った映画を選びます。
     
 2)以前に観た映画でも、もう一度あらためて観てます。むかし感じた印象と大きく異なることも多いからです。

 3)「素」な気持ちで、「映画作品そのもの」に向き合うことが、私の遊びです。
 作品自体が語りかけてくること以外の額縁情報、つまり宣伝文句、その受け売り文章、受賞実績、監督発言、出演俳優がどうしたとか、そして映画評論本やらは、はなから無視して、自分の眼で観るようにしています。

 4)観て気に入らない映画、つまんない映画は、基本掲載しません。
 だから、観たけど掲載しない映画は多いです。巨匠の名作と言われる映画も、気に入らなければ掲載しません。また、名物にうまいモノなし、ということも実感します。

 ただし、まだ観てない映画は、たくさんあります。こんな一夜一話ですが、今後も、見に来てください。   
 美術や音楽、書籍や温泉の記事も増やしたいと思っています。よろしく。  

RSSリンクの表示
Tree-CATEGORY

Return to page top