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映画「雲が出るまで」  監督:イェシム・ウスタオウル  トルコ映画

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  時は1975年、映画の舞台はトルコのポントスという地方にある、海を臨む小さな村。
  トルコ東北部に位置して黒海沿岸。古来、現地化したギリシャ人が少数民族として、トルコ人とともに住んでいた地域。彼らは、ポントス人と言われ、20世紀初頭、トルコ政府から迫害を受けた。
  映画の主人公アイシャ(ギリシャ名:エレニ)は、60年経った今も「ギリシャ人であることを隠して」、トルコ人の村で暮らしているポントス人。


地図00  第一次世界大戦中、ポントス地方に、ふたつの悲劇が起きた。
  1) ポントスなど黒海沿岸を支配して来たオスマン帝国の領土は当時、ロシアが占領していた。しかしロシア革命でロシア国内が混乱する隙に乗じて、ポントス人は建国を目指した。だがこの建国運動はトルコ政府の弾圧を受けることになり、「ポントス人の一部はロシアへ」 逃れて行った。  
  2) 同時期、ギリシャとトルコは、エーゲ海沿岸地方で戦争をしていた。まもなく休戦し、両国は住民交換協定を結んだ。つまり、トルコ領内各地に古来から住むポントス人などのギリシャ系人民は、トルコ政府の手によって、「ギリシャ人として」 ギリシャに追放された。

  映画は、この悲劇に巻き込まれたポントス人の話だ。
  エレニの一家は、国外追放を余儀なくされて、トルコ領内を西へ移動しギリシャを目指していた。(映画冒頭に、国外追放を受けたギリシャ人が大移動する当時の映像が映し出される。) 苦難の旅の途中、10歳のエレニと幼い弟ニコのふたりだけが、何とか生き残った。あるトルコ人がエレニを助ける。エレニはニコを見失っていた。
  助けたトルコ人は、自身の村があるポントス地方にエレニを連れて戻り、自分の娘セルマの妹としてエレニを育てた。こうしてエレニは、名をアイシャに変えてトルコ人として育つこととなった。

中0  60年の時が経ち1975年、ポントス地方のこの村で、アイシャはセルマとふたりで粗末な家で暮らしている。映画はここから始まる。
  セルマが亡くなった。このことでアイシャは、もうトルコ人として生きる意味を無くしていた。同時に弟ニコのことが気になり始める。私はあの時、弟を置き去りにした、見放したと、自責の念に駆られる。
  そんな鬱としたある日、タナシスというギリシャ人の男が村に現れる。ポントス人だ。タナシスは元はこの村の住人だったが、1916年にロシアへ逃げ、後にギリシャへ移りギリシャに定住する。第二次大戦後のギリシャ内戦で左派勢力に加わったが敗北し、再びロシアへ渡り定住。結果59年経って、この村に戻って来た男であった。
  後に、このタナシスがニコの行方をアイシャに知らせることになる。アイシャは、ニコの住所を握りしめギリシャに向かった。ニコは、ギリシャの大都市テッサロニキ市内で裕福な生活をしていた。

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  ニコは言った。「私は孤児院で育った。私の記憶に姉はいない。私が持っている古い写真に姉は写っていない。だから私に姉はいない。」 
  「私はあなたの姉エレニ。この写真を見て。」そう言ってアイシャは一枚の写真を出した。そこには両親とエレニ、そして幼いニコが父親に抱かれて写っていた。

オリジナル・タイトル:WAITING FOR THE CLOUDS|Bulutlari Beklerken|
監督:イェシム・ウスタオウル|トルコ|2004年|93分|
脚本:イェシム・ウスタオウル、ペトロス・マルカリス|
撮影:ヤツェク・ペトリツキ|
出演:リュチュハン・チャルシュクル|ディミトリス・カンベリディス|ルドワン・ヤージュ|

図
 トルコ領内の少数民族
  1910年時点での小アジアの民族分布地図。青がギリシャ人、赤がトルコ人、黄色がアルメニア人、茶色がクルド人居住地域を示している。 wikiより。

  詳しくは、http://ja.wikipedia.org/wiki/トルコのページ下段の国民の項。(外部リンク)

 この「雲が出るまで」の監督イェシム・ウスタオウルの映画
  「パンドラの箱」のレビュー記事は、こちらから。

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