一夜一話

      

映画「サンドラの週末」 監督:ダルデンヌ兄弟

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中勤め先から、クビを宣告されようとしている女の孤軍奮闘する話。
うつ病で休職しているサンドラ。人件費削減で経営維持を図る一方、従業員のやる気を引き出そうとする社長と、忖度する主任の思惑。

この会社、従業員と期間雇用者も含め17名の会社だ。(郊外にある建屋も現場環境も綺麗な会社です)
サンドラの休職中に、社長は、ひとり欠けた16名でも現場は問題なく回ることが分かったし、たぶんサンドラは職場復帰しないだろうと踏んで、ある日、みなにボーナス支給をすると言った。

一方、うつの症状が改善されつつあるサンドラの状況を知る一人の同僚が、「このままだとあんたクビになるわよ!」と、無理やりサンドラを連れて、復職したい、復職できる旨を社長に直談判しに行った。
その結果、じゃ、従業員全員による無記名投票をしようとなった。 
つまり社長は、サンドラを除く従業員16名に対して、こう問うたことになる。
サンドラの復職を願うなら全員ボーナス無し、復職を願わないなら全員にボーナス支給。二択の多数決だ。(どちらにせよ、この年の年間人件費総額は同額なんだろう、たぶん。もちろん復職&ボーナス支給はありえない)

誰だってボーナスは欲しい、金銭的余裕のあるヤツはいない、各家庭にそれぞれ事情はある。かといって、同僚のサンドラに一定の同情を寄せる職場仲間たち。

これ、一見、全従業員に対して民主的な(?)オープンな論法だが、従業員の総意でサンドラ1名の人員削減へと導こうとしているわけだ。
hqdefault1 (3)-1この動きに抗い、サンドラは夫や仲良しの同僚の後押し、勇気づけを得て、同僚の家々を訪ねて説得、哀願を始める。途中、へこたれて、抗うつ剤を何度も飲みながら。

しかし、主任が従業員に圧力をかけ始めた。事はうまく運ばない、従業員たちに分断が起こる。この様子を、さらにはサンドラが訪ねる一軒一軒の事情を、映画は丁寧に描いていく。監督はベルギー社会の世帯事情や、人の「さが」を見せようとしている。

さて結末は映画を観てね。
しかし、結末に問題あり。実話か?
こんなこと、経営者たる社長がやることじゃないな。このゴタゴタは社長にとって想定外ではなかったはずだし、このことで、少なくとも従業員の半数の勤労意欲や忠誠心は、てき面に下がるだろう。この事件のその後を考えれば、経営に影響があって当然。

さらには、サンドラは正規従業員。病気を理由に解雇はできないハズ。彼女がしかるべき所に訴えれば会社側の言い分は通らない。これは社長も知っていると思う。
source-1 (2)だから、ラストのシーンで、サンドラが社長に退社のあいさつをしに行った時に、サンドラの雇用を継続する代わりに、非正規従業員(有期雇用)の人の首を切ることをサンドラに言った。が、彼女はその提案を断った。非正規の人への彼女なりのいたわりであった。自ら身を引いた犠牲的精神。

この、ラストシーンの、サンドラ問題についての映画の持って行き方に疑問が残ります。そう思いません? 結局、「サンドラ個人の問題」に帰したわけだ。
なんとも煮え切らないエンド。監督の曖昧模糊としたメッセージ。どうにもならないとサジを投げたような監督。これをメッセージとしたいのか。
ってことで、今まで取り上げなかった映画です。

下1
夫はボーナスを家の改装費に充てる計画だが、同僚のこの女性はサンドラ復職に賛成だ。よって夫婦喧嘩、いや、その域を超えようとし始める。
下2
16名のひとり、この男性は臨時雇用。移民だろう。だから夜間は、このランドリーでアルバイトをして稼ぎを補填している。心情的には賛成だが、賛成したことが主任にバレるのが怖い。雇用期限終了後に正社員の道をほのめかされているとも言うが。
下3
家庭内の諸事情を超えて、サンドラ復職に賛成を表明した彼らとお別れの握手。


日本版のこちらの予告編は、情に過剰に訴えるナレーションがいかにも日本的だが、私はナレーションをうっとうしく感じる。
下は外国版の予告編です。(取り上げるシーンは日本語版と違うので映画を知るにはいいです)
予告編 決め
https://www.youtube.com/watch?v=lBqk3PNUCr8


予告編 決め
https://www.youtube.com/watch?v=_JSlJPjEvzM


オリジナルタイトル:DEUX JOURS, UNE NUIT
監督・脚本:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ(ダルデンヌ兄弟)|ベルギー、フランス、イタリア|2014年|95分|
撮影監督:アラン・マルコァン|
出演:サンドラ(マリオン・コティヤール)|マニュ(ファブリツィオ・ロンジョーネ)|ジャン=マルク主任(オリヴィエ・グルメ)|シャルリー(モルガン・マリンヌ)|アンヌ(クリステル・コルニル)|エステル(ピリ・グロワーヌ)|マクシム(シモン・コードリ)|ジュリエット(カトリーヌ・サレ)|ほか

ダルデンヌ兄弟監督の映画です。
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