Category邦画評だけを見る 1/11
映画「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」(2023) 監督:内田英治、片山慎三

この映画は、コメディで、ファンタジーな物語です。複数の登場人物の、様々な生きざまを通して、新宿・歌舞伎町の裏側を描く、不思議な喜劇です。また、リアルっぽい歌舞伎町の物語に加えて、架空の、あるいはファンタジーなパウダーが、映画全体に振りかけられている。例えば、私立探偵、忍者、プロの暗殺者、FBI、エイリアン、UFO、などなど。で、実はこれらが、実にチャッチィ、安っぽい。粗雑でコミカル、オモチャっぽい。(下...
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映画「江戸の春 遠山桜」(1936) 監督:荒井良平

1936年製作の時代劇、人情劇で喜劇の映画。江戸町奉行の「遠山の金さん」が奉行になるまでの若いころの話。その金さんと町場の人々との、すったもんだの、ゆったりした人情劇なので、そうした時に観てください。感触は、まるで山中貞雄監督の作品みたいで軽妙。ここら辺が見どころ。それもそのはず、原作・脚本の梶原金八という人物は、ペンネームで、実は山中を含む当時の京都の若い脚本家、監督、助監督らの集団鳴滝組。それから...
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映画「マイ・ブロークン・マリコ」(2022年) 監督:タナダユキ

これまでも、この世あの世に分かれた これからも、ずっと親友の、トモヨとマリコの物語。シイノトモヨ(永野芽郁)は卒業して会社勤めだが、外回りの仕事で毎日、いっぱい いっぱいの日々。イカガワマリコ(奈緒)は学生の頃から、トモヨを心の拠り所にしてきた。マリコの家庭環境は幼いころから酷かった。そして、大人になった今も続く、父と娘の関係、二人目の母。マリコの心の奥に、深く切り裂かれた生傷。誰にも言えない誰にも...
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映画「人も歩けば」 監督:川島雄三

川島雄三が監督の喜劇映画。昭和35年の頃の話。4年後が東京オリンピック。話の舞台は、東京の、華やかな銀座の路地裏、新橋(烏森)界隈、東京湾のどこか海際(埋め立て前)。キャバレーの店でジャズバンドのドラマーをしている、主人公、砂川桂馬(フランキー堺)。金の算段で、商売道具のシンバルを、銀座の路地裏にある質屋に持ち込むあたりから話は始まる。質屋「成金屋」の常連客の桂馬は、名の通り将棋の腕がいい。質屋のあ...
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映画「こちらあみ子」(2022) 監督:森井勇佑

この子、あみ子の、小学5年生から中学1年生までの物語。最近の邦画の中では、ガンバッタほうの作品。あみ子とにかく型破りな子、一直線な子、年の割には幼い。内気なノリ君が好きで積極的過ぎる幼い恋は‥ あみ子の母そんな娘と日ごろからそりが合わない。あみ子の妹を死産した後、激しいウツに。家で書道教室を開いている あみ子の父無口。兄妹に優しい、というより放任の父。妻の死産の後、あみ子を自分の実家に預け、妻...
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映画「青べか物語」 監督:川島雄三

話の舞台は千葉県、東京湾に面する浦粕。浦粕とは、架空の地名で場所は浦安。およそどんな話かは、原作が山本周五郎の「青べか物語 」(1960年)ですので、下記青空文庫で原文が読めますので……https://www.aozora.gr.jp/cards/001869/files/57574_63587.htmlですので、今ここでは筋書きは横に置いて、注目は1962年当時の浦安(浦粕)の風景。とりわけ、果てしなく広がる干潟(ひがた)※に目が行く。ここは東京湾の最奥部、江戸川(...
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映画「鉄コン筋クリート」 監督:マイケル・アリアス

浮浪孤児のシロとクロ。二人は陽と陰、だから二人で一体。そして、シロの夢と、年上のクロの現(うつつ)の、二人の持ち味が、少年達の生き抜く力。そんなシロとクロは、「ネコ」と呼ばれ、驚異的な身体能力を持つ。これは、日本のある都市の話だ。宝町は、商業開発から取り残されたエリアだが、人情に厚い街。憩いを売る店、求める大衆、地場のやくざ、人情ある警察が、あうんの呼吸で支え合う。だが、時の流れに逆らえぬ、街の景...
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映画「ぐれん隊純情派」 監督:増村保造

タイトルはヤクザ映画そのものだが、中身は地方巡業の大衆演劇一座のてんやわんやの話。そして群像劇。早いテンポでサクサクと話は進む。ヤクザの端くれ3人組、銀之助、松、豊。負けん気は強いが、東京下町の、大人のヤクザ業界では、うまく立ち回れない負け犬。銀之助の親父は名の通った旅役者で中村座という一座を率いて、浅草はじめ東京下町の芝居小屋を、そして関東各地を巡業して来た。だが、その親父が死んで一座は散り散り...
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映画「素足の娘」 監督:阿部豊 主演:南田洋子

どうってこと無いが、素直な映画。佳作とまでは言えないが、テンポが良い喜劇風味な作品。南田洋子が演じる地味なロマンス。時は昭和30年代はじめ。話の舞台は、広島県尾道の、海(狭い尾道海峡)を挟んで、目の前にある向島という名の島。大きな造船所がある。桃代18歳(南田洋子)は早くに母を亡くし、長崎の叔父の家で育った。しかしその叔父が死んで、桃代の居場所がなくなってしまう。そこで、向島の造船所で庶務をしている桃...
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映画「当りや大将」 監督:中平康 なんとかここで精いっぱい、生きるしかない人々。“三丁目の夕日” じゃない昭和。

あの“三丁目の夕日” だけが昭和じゃない。これも昭和30年代。監督は中平康、脚本は新藤兼人。舞台は、大阪の通天閣近く、釜ヶ崎。大将(長門裕之)と呼ばれ、釜ヶ崎じゃ名の通った男の本業は、当たり屋。当たり屋というのは、走りくる自動車に向かって故意に接触して ころんで、大げさに痛みを叫んで交通事故のケガを演技して、相手に治療費や慰謝料、示談金やら損害賠償を請求しようとする者。身体を張った商売だ。チームプレーが...
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映画「潤の街」 (ユンの街) 監督:金佑宣

潤子と雄司のラブストーリー。舞台は大阪の鶴橋あたり。高校生の潤子16歳は、在日コリアン三世。潤子は、母の利代(李麗仙)が鶴橋で営む、お好み焼屋を手伝っている、看板娘。雄司は大きな家の長男。進学するでもなく、浪人状態で工事現場のアルバイトをしている。そんな様子を雄司の母親は心配している。横浜から叔父が来て、苦言の末に、横浜に来ないかと言われた。(父親は他界したらしい)そして叔父はもう一つ雄司に言った。...
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【特集】1930年代の日本映画は、いかがですか。 (まとめ)

1930年代製作の日本映画の醍醐味を味わおう。現代の映画より、どれも、きりっと引き締まった作品です。以下、これまでに掲載した32本。※タイトルのあとのSは、サイレント作品を示しています。1926狂った一頁 S衣笠貞之助 1928十字路 S衣笠貞之助 1930何が彼女をそうさせたか S鈴木重吉 1930石川五右ヱ門の法事 S斎藤寅次郎 1932 大人の見る繪本生れてはみたけれど S小津安二郎 1932國士無双 S伊丹万作...
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【特集】アジアへ進出する、日本の映画監督。

日本の監督が、アジアを舞台にして撮った最近作です。こうした作品は、主たるセリフが日本語か否か、日本人俳優が出演か否か、あるいは製作国が日本か否か、そんなことで、邦画/洋画に区分けされようとします。しかし、たぶん、監督の意思は、邦画/洋画の垣根を越えようとしています。以下から紹介記事をご覧ください。アジアの天使 ブランカとギター弾き ホテルニュームーン ママは日本へ嫁に行っちゃ ダメと...
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映画「ちょっと思い出しただけ」(2022) 監督:松居大悟

いい映画です。照生と葉(よう)の物語。照生28歳は、ダンスチームのダンサー。演劇的なダンス作品の上演で踊っている。(池松壮亮)葉(よう)は、都内を走るタクシー運転手。深夜勤務。(伊藤沙莉)二人はいい関係。時々、葉は照生の部屋に泊まる。照生は、水族館の夜間清掃のアルバイトをしている。だから、やっちゃいけないけれど、二人は深夜、水族館を二人占め。そして、今日、2021年7月26日、照生は34歳の誕生日を迎えた。...
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映画「國士無双」(1932) 監督:伊丹万作

片岡千恵蔵 27歳、山田五十鈴 14歳昭和の一桁ごろの映画といえば、チャンバラ劇。忠臣蔵、鞍馬天狗、忍術なんていう時代劇が一世風靡の時代。当時は、不況や戦争といった風すさぶ世だけど、映画館の中は楽しい。チャンバラは気分がスカッとする。剣術達人の主人公に、自分を重ね合わせ、たちまち勢いづいて街を闊歩し、気が晴れる。そんななか、ゆる~い喜劇映画の「國士無双」。どれも同じようなストーリーの映画はそろそろ見飽...
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映画「ホテルニュームーン」 (日本・イラン2019) 監督 筒井武文

静かな映画です。テヘランに住む ひとり親家庭の、仲睦まじい母娘の物語。父親を早くに亡くした娘は父の顔を知らない。 だが母は教師で家計を支えて、家は平穏。映画はそんなことを語り出すが、しかしある日、「ママはいったい、誰なの?」という娘の台詞で、空気はがらりと変わる。ピーンと張られた、この緊張の糸は、映画後半まで続き、シンプルな物語に謎を含ませ、話をぐっと引き締める。母娘には、言うに言えぬ秘密があった。...
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「小津安二郎」その作品の魅力に迫る。 《日本映画監督 特集》

小津安二郎 監督の特集を組みました。(シリーズ記事です)監督作品の中から、一夜一話がこれまでに掲載した、選りすぐりの映画たちです。これをタップして特集ページへお進みください。以下の作品を掲載しています。【 一夜一話の歩き方 】下記、タップしてお読みください。...
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映画「宵待草」 監督:神代辰巳

1970年代はじめ当時、一部の人々の間で、「終わってしまった」と感じていた同時代感の共有も早々と消え去り、それから、かれこれ半世紀経つ。1974年公開の本作「宵待草」は、そんな当時の同時代感の上に立っている。しかし何が同時代感なの?という問いに答えようもない今、その手の人が、あらためてこの映画を観るのは、いささか勇気がいる。一方、真面目にこの映画を理解しようと、大正時代から1960年代までの現代史に目を通して...
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映画「アジアの天使」 (2021) 監督:石井裕也

全編、韓国ロケの日韓合作作品。登場人物は、こんな。デビュー作以降パッとしない小説家の青木剛(池松壮亮)と、一人息子の学(まなぶ)、それに剛の兄の青木透(オダギリジョー)。かたや、かつてはアイドル歌手だったチェ・ソル(チェ・ヒソ)、その兄チェ・ジョンウと、妹のチェ・ポム。さあ、どんな話が始まりますか。剛と学の父子が、兄の透を頼って、身ひとつで日本からソウルにやって来た。それまで住んでいた所を引き払っ...
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「霊」が見える女たちの映画。「ルームロンダリング」・「コンセント」

今回は、霊が見える女たちの物語、2本立て。「ルームロンダリング」は、明るいコメディです。ただし、チョット怖い。タイトルの意味は、前に住んでいた人がその部屋で死亡し、事故物件となったアパートマンションの部屋を、きれいにして再度、売り出すこと。(資金洗浄マネーロンダリングの、もじり)そのためには、物理的な洗浄・復旧作業の他に、業界慣行として、その後の入居実績が必要となる。そうなれば、事故物件であったこ...
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映画「閃光」(2018) 監督:石橋夕帆

いい映画です。気に入りました。36分の短編。女性監督ならではの素敵な感性が伝わってきます。ユェファを演じる女優、葉媚が輝いています。世間から浮遊したような男と、野良の子猫のような女との愛を、映画は静かにスパークするように描きます。。話は、日本映画によくあるシチュエーションですが、監督はそこから、いい話を紡ぎ出します。ぼんやり生きるフリーターの和也(田中一平)、久しく会ってない元カノの結婚、安アパート...
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「柳町光男」その作品の魅力に迫る。 《日本映画監督 特集》

柳町光男監督の特集を組みました。監督作品の中から、一夜一話がこれまでに掲載した、選りすぐりの映画たちです。これをタップして特集ページへお進みください。以下の作品を掲載しています。ほかの監督をお探しの場合は、こちらから、どうぞ。(監督別の作品リストです)題名から作品をお探しの場合は、こちらから、どうぞ。(邦画の題名50音リストです)【 一夜一話の歩き方 】下記、タップしてお読みください。...
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映画「或る夜の電車」(2014) 大みそかの渋谷の夜の物語。 監督:金允洙

きりっとした、いい映画です。尺57分。大人の辛口ファンタジー。ただし、夢は無い.。そして映画は静かに押し黙る。12月31日の夜、渋谷。大みそかに、何かしら高揚感を抱く、幸せそうな人々が、スクランブル交差点を埋め尽くしている。しかし、そんなじゃない人たちもいた。ここは渋谷の裏町、円山町、ラブホテルが密集する街。閑散として寒い。ホテルの看板だけが煌々として。そんな円山町で、風俗嬢がホテルから、仕事を済ませて...
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「成瀬 巳喜男」その作品の魅力に迫る。 《日本映画監督 特集》

成瀬 巳喜男監督の特集を組みました。監督作品の中から、一夜一話がこれまでに掲載した、選りすぐりの映画たちです。これをタップして特集ページへお進みください。以下の作品を掲載しています。ほかの監督をお探しの場合は、こちらから、どうぞ。(監督別の作品リストです)題名から作品をお探しの場合は、こちらから、どうぞ。(邦画の題名50音リストです)【 一夜一話の歩き方 】下記、タップしてお読みください。...
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映画「帰らざる日々」(1978) 監督:藤田敏八

長野県の高校生の、すなおじゃない友情と、6年後の再会の話。そして未熟な恋物語。主人公となる野崎(永島敏行)というのが、父の葬儀のため、新宿から故郷の飯田へと向かう車中で思い出す、6年前の回想を描きます。それほどの映画ではないのですが、敏八(びんぱち)と一緒に、1970年代の空気を吸いたい方へ。1972年の夏、当時野崎は高校3年、母と二人暮らし。父親は若い女性に想いを寄せ、すでに家を出ていました。野崎は、行き...
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映画「大人の見る繪本 生れてはみたけれど」(1932) 監督:小津安二郎

昭和6年ごろ、東京の麻布から、当時は郊外だった大田区※へ越して来た吉井家一家の、ちょっとした騒動が「大人の見る繪本」に至る、そんな物語。(サイレント映画です)ほんわかした雰囲気の中で、 一家で一番偉い父親(家父長制)の、サラリーマン勤めの悲哀を、一家四人の立場を通してゆっくり描きます。転校生となった吉井家の小学生兄弟は、初登校の前から近隣の子供集団のボスから虐められます。それは俺がボスだという意思表...
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映画「なくもんか」 出演:阿部サダヲ, 竹内結子, 瑛太 監督:水田伸生

ハイテンションな阿部サダヲが、泣き笑いのコメディ大暴れ。阿部サダヲ演ずる下井草祐太は、東京下町商店街の「デリカの山ちゃん」という、お総菜屋さんの店主です。その店は揚げ物の店で、コロッケなど各種の総菜はあるが、ハムカツが評判を呼んでいる繁盛店。祐太は商店街の皆から山ちゃんと呼ばれているが、実は2代目。初代の山ちゃんは、山岸正徳(カンニング竹山)で、妻の安江(いしだあゆみ)と、その一人娘の徹子の家族3人...
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映画「引っ越し大名!」(2019) 出演:星野源, 高橋一生, 高畑充希 監督:犬童一心

「引っ越し大名!」とは、江戸時代前期の姫路藩大名、松平直矩のあだ名で、この映画は、幕府による強引な大名の配置替え(国替)の命令に直面した、松平直矩とその家臣の苦労話。ですが喜劇です。そして、ラブストーリー。姫路からの引っ越し先は、豊後(大分県)の日田であった。なにしろ、国替には膨大な費用がかかる。人と馬と、姫路城にある一切合切の移動である。姫路 - 江戸往復の大名行列にかかる費用の比じゃない。まずは...
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映画「人情紙風船」(1937) 監督:山中貞雄 英題:Humanity and Paper Balloons

「人情紙風船」には、二人の主人公がいる。(↑)上で、ヤクザに痛めつけられているのが、新三。新三とは、「人情紙風船」の原作となった歌舞伎演目「髪結新三」から引用された登場人物で、新三にまつわる話が「人情紙風船」の骨格になっている。ついで、(↓)下の、左の男が浪人の又十郎。又十郎は右側の侍に、仕官の口の斡旋を頼みこんでいる。その侍の名は毛利三左衛門と言い、又十郎の父親が生前、十分世話してやった部下だったが...
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特集:大阪の映画 ~大阪を舞台にした映画を集めました。

大阪を舞台にした映画を集めました。以下、タップしてお進みください。兵庫、和歌山、奈良が舞台の映画も含めています。赤い波止場(兵庫)石原裕次郎、北原三枝監督:舛田利雄 当りや大将長門裕之、轟夕起子監督:中平康 あの手この手久我美子、森雅之監督:市川崑 大阪少女坪内花菜監督:石原貴洋 大阪ストーリー監督の一族のみなさん監督:中田統一|英国製作 大阪の宿佐野周二、乙羽信子監督:五所平之助 ...
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映画「大阪少女」(2020) これぞ、ローカル映画! 監督:石原貴洋

ううっ、いい映画。これぞ、ローカル映画!関西喜劇やけど、下町の喜怒哀楽を絶妙に描いています。尺97分。とは言え、この絶妙さを感じられないかもしれない。身内で話す時にしゃべる、気取らない生の大阪弁、登場人物は皆コテコテの大阪人(一人を除く)。これを聞いて、観るのをやめる人は多い、やろな。続いて、有名な俳優は出てないし。さらに、この話、『じゃりン子チエ』やろと、みんなが思う。そういうわけで、映画が語ろう...
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映画は、フィリピン人, 韓国人という “外人”をどう描いたか。「愛しのアイリーン」「異邦人の河」

2018年製作の「愛しのアイリーン」と、1975年製作の「異邦人の河」の2作品を取り上げます。「愛しのアイリーン」は、フィリピン人との国際結婚を、すったもんだの喜劇風味に、時にシリアスに描きます。「異邦人の河」は、在日韓国人の一世二世の物語をじっくり語ります。ともに話の軸はラブストーリーですが、映画は登場人物に、それを乗り越えるか否かの決断を迫る高い壁を用意しています。「私がフィリピン人だからなの!」、「...
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映画「秀子の車掌さん」(1941) 主演:高峰秀子 監督:成瀬巳喜男

いい映画です。すなおに撮った映画は、時に永遠の命を授かる。「秀子の車掌さん」は、そんな作品。尺は54分。時は戦前、1941年(昭和16年)の夏か秋でしょうか、舞台は甲府。(しかし同年12月8日の真珠湾攻撃によって太平洋戦争が勃発)とは言え、ほのぼのとしたユーモラスな、そして静かな物語です。農家の娘、おこまさん(高峰秀子)が車掌をする「甲北乗合」というバス会社は、保有するバスが1台っきり。それもだいぶくたびれて...
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ほぼ働かない男たちの映画「ダメジン」, 「ロスト★マイウェイ」 監督:三木聡、古澤健

ほぼ働かない男たちの、のほほんとした映画を2本。あるいは、どこかのネジが数本緩んでる男たちの物語。傑作イチオシお勧めとは言いにくいが、結構おもしろい。とにかく、作品に登場する3人組は、食えなくても、至って幸せそう。日々、アクセクしてるコッチが馬鹿らしく思えて来る。そんな羨ましい男たちのおバカな冒険をお楽しみください。なお、「ダメジン」、「ロスト★マイウェイ」は共に、それぞれの監督の初・監督作品。デビ...
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映画「硝子のジョニー 野獣のように見えて」 主演:芦川いづみ, 宍戸錠 監督:蔵原惟繕

とにかく、女優、芦川いづみに拍手を!可憐、さわやかさの売りで、石原裕次郎の相手役として欠かせない芦川いづみ、年に何本もの映画に出演する日活の大女優を、異色作といわれる本作で汚れ役といってもいい役に起用した気概と、これに応えて熱演する芦川いづみに声援を送りたい。本作の良さを、共演するアクションスター宍戸錠、人気歌手アイ・ジョージを知らない若い人にこそ、発見してほしい。まずは予告編をどうぞ。予告編です...
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「川島雄三」その作品の魅力に迫る。 《日本映画監督 特集》

川島雄三監督の特集を組みました。監督作品の中から、一夜一話がこれまでに掲載した、選りすぐりの映画たちです。「幕末太陽傳」「貸間あり」「洲崎パラダイス 赤信号」「しとやかな獣」「特急にっぽん」「雁の寺」これをタップして特集ページへお進みください。 ほかの監督をお探しの場合は、こちらから、どうぞ。(監督別の作品リストです)題名から作品をお探しの場合は、こちらから、どうぞ。(邦画の題名50音リストです...
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映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」 主演:堺雅人, 高畑充希 監督:山崎貴

これは面白い!鎌倉に生まれ今も鎌倉に住む作家、一色正和(堺雅人)と、その妻 亜紀子(高畑充希)の、鎌倉と黄泉の国を巡る、大冒険ファンタジー、かつ サスペンスと喜劇、そのうえ ラブストーリー。“年の差婚”のきっかけは、亜紀子が出版社のバイトで初めて一色正和宅へ原稿を取りに来た時だった。そして、会ったその時、一目で、ふたりは恋に落ちた。さて、結婚して亜紀子は鎌倉が摩訶不思議なところだと知ったのです。その様...
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映画「おらおらでひとりいぐも」(2020) 主演:田中裕子 監督:沖田修一

田中裕子が主演だから成り立った映画です。75歳になる桃子(田中裕子)は、一人住まい。家族4人が暮らした一戸建住宅は今やガランとしている。夫に先立たれ、息子は音信不通、娘(田畑智子)は時折都合のいい時だけ現れる。孫娘はカワイイ。桃子の日々は、図書館通いとクリニック通い。親しい人は、そういない。だけども桃子は寂しくない!なぜなら、認知症による幻視で現れる、陽気な三人(濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎)がいる...
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映画「かあちゃん ~“粘土のお面”より 」(1961) 監督:中川信夫

ここは、東京の下町、荒川と隅田川に挟まれる曳舟あたり。お人好しのぼんくら亭主と、かかあ天下の女房を主人公にしたこの話は、荒川土手近くの貧乏長屋に住む一家四人の貧しさを、努めて明るく描く物語。時は敗戦間もない昭和24年の年末か。家主の家賃催促や、借金取りが訪れる。落語の長屋生活の話を、戦後の混乱期に移したような話だが、原作者の自伝小説をもとにしている。由五郎(伊藤雄之助)は、真面目なブリキ職人。仕事が...
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映画「朝が来る」(2020) 主演:永作博美 監督:河瀬直美

赤ちゃんの養子縁組を接点に、「縁」の二面性を語る物語です。不妊治療の末に、養子縁組の会を通じて赤ちゃんを授かった夫婦のそれまでと、それから6年後の話、そして、中学生14歳の実母が出産に至ったそれまでと、その後の6年間の苦難を描きます。都内の湾岸の、タワーマンションに住む、ちょっといい暮らしの共稼ぎ夫婦、栗原清和(井浦新)と妻の佐都子(永作博美)。結婚後、時が経つにつれ佐都子は子供が欲しくなる。清和は佐...
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「市川 崑, 今井 正」その作品の魅力に迫る。 《日本映画監督 特集》

市川 崑、今井 正の両監督の特集を組みました。監督作品の中から、一夜一話がこれまでに掲載した、選りすぐりの映画たちです。タップして特集ページへお進みください。 ほかの監督をお探しの場合は、こちらから、どうぞ。(監督別の作品リストです)題名から作品をお探しの場合は、こちらから、どうぞ。(邦画の題名50音リストです)【 一夜一話の歩き方 】下記、タップしてお読みください。...
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映画「喜劇 愛妻物語」(2019)監督:足立紳

結婚して10年目、妻が先に倦怠期に入った夫婦の話。夫の豪太(濱田岳)は恐妻家。妻のチカ(水川あさみ)の、口の悪いキツイ悪妻ぶりをコミカルに描きます。なにしろ、脚本家の豪太の年収、50万円。ひとり娘はすくすく育ち、妻チカの働きで一家を支える。そりゃ豪太は、頭が上がらない。ただし振り返れば10年前、豪太にも夢や野望があったし、それにチカは惚れたのです。とは言っても豪太は遊んでいるわけじゃない。連載テレビドラ...
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映画「晩菊」 監督:成瀬巳喜男

時は昭和29年ごろ。(製作年当時)後半の人生を歩む元芸者たちの悲哀を、愛情を持って描きます。この群像劇の奥底で、わずかだが見え隠れするユーモアを感じ取れれば、話に厚みが増すでしょう。彼女たちにとって、戦前、戦中はそれなりに華やかだった。その残滓(ざんし)が今を生きる彼女たちの心の支えになっているのだろうか。まずは、おきん (倉橋きん) のこと。‥‥杉村春子登場人物の中で一番いい生活をしている女。金貸しをし...
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京都の物語 ~京都を舞台にした映画を集めました。

京都を舞台にした映画を集めました。(含む滋賀県)今では味わえぬ京都の空気を存分にお楽しみください。どれも魅力ある作品です。言い換えると、京都観光PR的な、いかにも的な風景を背景に借りて物語る、最近ありがちな映画じゃないです。(その手の映画にかぎってツマラナイ)以下、50音順です。タップして紹介記事へお進みください。偽れる盛装京マチ子監督:吉村公三郎 雨月物語(滋賀県)京マチ子監督:溝口健二 雁の...
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映画「メランコリック」(2018) 監督:田中征爾

いい映画です。猫実〇丁目にある銭湯の話です。この映画、プロットが強力で、これが頭に浮かんだ時点で、映画はもう、ほぼ完成したようなもの‥、だったんじゃないだろうか。次に、主人公の恋人役に吉田芽吹を選んだことが大成功で、話に味が出て、サイドストーリーがサイドに終わらず物語全体が豊かになった印象。また無口な主人公の人物描写も、吉田芽吹との会話の中でうまく描かれています。この映画の監督はなかなかのストーリ...
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蒼井優が出演の映画 《まとめ》

おらおらでひとりいぐも 彼女がその名を 知らない鳥たち 百万円と苦虫女 人のセックスを笑うな TOKYO! クワイエットルームに ようこそ 亀は意外と速く泳ぐ 花とアリス 鉄コン筋クリート 声優・シロ役 女優男優の特集を、こちらでまとめています。お進みください。【 一夜一話の歩き方 】下記、タップしてお読みください。...
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映画「雁」(1966) 主演:若尾文子 監督:池広一夫

東京の空を、雁(がん)が群れ飛んでいた時代、明治13年(1880)当時のお話です。上野不忍池の端から坂道を上がって右側に、しんこ細工屋※の娘、お玉(若尾文子)の家がある。とは言っても妾宅。旦那は高利貸しの末造(小沢栄太郎)。大学の小使い(用務員)をして、教授や学生の使いっ走りで小銭を稼いできた男。初めて妾を囲い、小ぶりながらも妾宅を用意し、男の甲斐性。足繁く通う。末造には、本妻・お常(山岡久乃)と二人の幼...
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映画「一度も撃ってません」(2020) 主演:石橋蓮司 監督:阪本順治

主役を務める石橋蓮司と、脇を固める桃井かおり、岸部一徳、大楠道代。その誰もが、そこら辺の役者にゃ到底 手の届きようがない高みの演技力。だから、この四人、無理なく息が合う。と同時に個性丸出し。これがみどころ。映画中の教会内シーンから察するに、石橋蓮司と桃井かおりは、相性が良いようにみえる。この二人が共演したのは、遡ると、1968~71年当時の臭いがプンプンする「あらかじめ失われた恋人たちよ」(1971)。地下の...
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映画「WOOD JOB!(ウッジョブ) 神去なあなあ日常」 主演:染谷将太 監督:矢口史靖

これは、大学受験のすべてに失敗した者にしか分からない、18歳の笑える物語。周りの皆が無事、大学生になって、結果、世間から置き去りとなった平野勇気(染谷将太)。WOOD JOB!(ウッジョブ)に挑戦したが、果たしてGood Job!(グッジョブ)だった?そんな、お話。それは山の神のお導きだったのか?(あるいは、ガムの神か)平野勇気は、自衛官募集チラシの束の間に、一枚まぎれていた「林業研修プログラム」のチラシに目が留ま...
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映画「影を斬る」 天守閣のてっぺんで殿様と昼寝する侍の話。 主演:市川雷蔵, 瑳峨三智子 監督:池広一夫

ここは江戸、隅田川、川面を渡る夜の風。粋に浮かべた屋形舟には、ふたつの影が。それは、芸者君竜(瑳峨三智子)と、仙台藩(伊達藩)家臣 井伊直人(市川雷蔵)。仙台藩の御天守奉行(兼)剣術指南役たる井伊直人が、なぜ今、ここ江戸にいる、無頼に身を落としたか。そして、仙台藩62万石2代藩主、伊達忠宗が井伊直人に語った「ぐ」と「げ」の違いとは‥。★ ★ ★この頃すでに世は太平、仙台藩に限らず...
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