一夜一話

Category映画 1/35

映画「青べか物語」  監督:川島雄三

話の舞台は千葉県、東京湾に面する浦粕。浦粕とは、架空の地名で場所は浦安。およそどんな話かは、原作が山本周五郎の「青べか物語 」(1960年)ですので、下記青空文庫で原文が読めますので……https://www.aozora.gr.jp/cards/001869/files/57574_63587.htmlですので、今ここでは筋書きは横に置いて、注目は1962年当時の浦安(浦粕)の風景。とりわけ、果てしなく広がる干潟(ひがた)※に目が行く。ここは東京湾の最奥部、江戸川(...

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映画「スモール・アパートメント ワケアリ物件の隣人たち」  監督:ジョナス・アカーランド

ロサンゼルス郊外の安アパートを舞台とする、バカバカしくも、ちょっぴり悲しい喜劇。しかし先に言うと、一般受けするものじゃない。意味不明、拒絶反応、異端、カルト映画?とか言われるんでしょうか。そんな雰囲気の映画です。主人公の男は、上の画像の中心にいるフランクリン・フランクリン。いつもパンツ姿。出かけるときは、カツラをかぶる身だしなみ。もちろん、一人住まい。趣味は、アルプホルン。スイスの山で吹くあれだ。...

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映画「スランバーランド」(2022)  監督:フランシス・ローレンス

大人も楽しめるファンタジー・アドベンチャー。孤独で薄幸な少女が、夢の中で大冒険、という超・ありふれた筋書きですが、作り手はこれに挑戦した。見ないでおくには、もったいない、いい映画いい脚本。VFXバシバシだが、他とは一線を画す。手間のかかるVFX製作に振り回されるあまり、よくありがちな「肝心なところが、おろそか」、にされていない。話は、灯台に住む父娘、灯台守の父とニモ。ニモは、毎夜、父が話す おとぎ話を聞...

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映画「当たりくじを奪還せよ!」 (タイ2022) 監督:プルック・エマルジ

タイの、ドタバタ・サスペンス・コメディ。路上で、宝くじを売り歩く母子が、借金のかたに、手元にあった宝くじを全部、ヤクザに持って行かれた。ここから始まる物語。なんで扇風機なのか?は、カメラ側に借金取り立てに来たヤクザが‥、それは見てのお楽しみとして。主人公の青年テイは、タイの田舎で生まれた。父親が家を出てから母子は、より貧しくなったが、母親の努力で、都会(バンコク?)に出て、宝くじ稼業をして、なんと...

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映画「はちどり」  監督:キム・ボラ

進学校の中学2年生14歳の少女ウニの心の動きを数か月にわたって、ていねいに描きます。1994年の韓国ソウル。ウニの一家は、兄姉と両親の5人家族。兄は親の後押しで有名大学進学を目指す、一方、姉は進学よりも彼氏とのことで頭がいっぱい。ウニは、他校に通う大親友ジスクと、万引きやタバコやらと、ワルをやっている。そして彼氏ジワンがいる。ウニは親友ジスクと、小さな漢文塾に通っている。この塾の先生で、大学生のキム・ヨン...

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映画「影の軍隊」(フランス1969)  監督:ジャン=ピエール・メルビル

「影の軍隊」とは、ナチス・ドイツに抵抗するフランスのレジスタンス。ジャン=フランソワ・ジャルディ(ジャン=ピエール・カッセル)は、レジスタンスの指導者であり、国際的な要人。その指示で、主人公フィリップ・ジェルビエ(リノ・ヴァンチュラ)が現場の作戦を指揮する。物語は、主人公フィリップ・ジェルビエの逮捕、収容所収容、連行、脱出、再逮捕、射殺寸前の脱獄を軸に、部下たちの生死を描きます。以下、2種の予告編...

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映画「完全なる独裁」  監督:ルイス・エストラーダ

メキシコ映画です。政治とマスコミの癒着をコミカル風味に風刺しています。映画は、冒頭にこう言います。登場人物の名はすべて架空ですが、物語は現実の出来事に基づいています、と。話は、メキシコのどこかの州の州知事、カルメロ・バルガス総督と、地元のギャングとのいい関係、これを良しとしない民主派議員が、賄賂受け渡しの映像を記録したDVDを、全国放映のテレビ局、テレビ・メキシカーナへ送った事から始まる。一方、こ...

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映画「運命の回り道」(英2020)  監督:ベン・シャーロック

シリア人、アフガニスタン人、ナイジェリア人、ガーナ人‥‥。内戦などで祖国を脱出せざるを得なかった人々。難民と呼ばれる彼らの、乱れるを抑え込もうとする心境、それぞれの事情。難民キャンプに収容され、難民申請の許可がいつ下りるか否かを待つ、途方に長い空虚な時間。共に待つ、離れ離れになった家族、その絆。そして、もしも、許可が下りたら、のこと。映画は、スコットランドの沖合、離れ小島を仮想の難民キャンプ地にして...

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映画「MEMORIA メモリア」 (コロンビア2021)  監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン

自国タイでの製作を断念し、独自の表現形式を携え、初めて海外へ、コロンビアで製作した作品。しかし、映像を観たその瞬間に、いかにも監督の作品だと分かる。話は、ある日突然、幻聴の症状に襲われた女性の話。ただし物語というほどの筋はない。主人公役はティルダ・スウィントン。コロンビア在住のジェシカを演じるが、個性強き役ではなくナイーブな女性を演じている。それは演技を極力抑え込んだティルダ・スウィントンの姿。で...

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映画「ホワイト・ノイズ」(2022)   監督:ノア・バームバック  主演:アダム・ドライバー

喜劇映画です。ファミリー映画。反・ディズニー映画。予告編は、愛する家族、突然の大惨事、広がる衝撃、と言っている。予告編をご覧ください。https://www.youtube.com/watch?v=9YfLhL1fI5Uノア・バームバック監督が爆発。本作は、どうのこうのの解説を読まないこと。観ればネ、ほら、すべてが分かる。メディア不在と地域住民のパニック、正常性バイアス、デマと情報通、集団心理、カルト医療と治験モニター、そして永遠のテーマ...

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映画「未来は今」 監督:ジョエル・コーエン

コーエン兄弟の初期の作品です。時はアメリカ1950年代。世界は冷戦の時代だけれど、アメリカでは、日常生活を豊かに楽しくしてくれる商品が次々に世に送り出され、世間は浮かれていた、戦後パクス ・アメ リカーナの全盛期。大手企業も一般大衆も、繁栄を謳歌していた。本作は、そんな時代への郷愁と、人の愚かさを、ファンタジーで包み込んだ、喜劇&ラブストーリーの娯楽映画です。聞いたこともない田舎の大学の新卒が、何の手立...

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映画「サード・パーソン」 監督:ポール・ハギス

パリ、ローマ、ニューヨーク、三つの愛が生み出す、三つの話が、組みひもを編むように語られる映画です。シーンの切り替えが絶妙です。こういう作風は「クラッシュ」同様、監督の十八番。そして女優に注目。この映画は女優で語る映画。とりわけ、次の4人。愛らしさと勝気が入り混じる可憐なアンナを演じる、オリヴィア・ワイルド。押し出しが強い一方、正体不明の色気を醸し出すモニカを演じる、モラン・アティアス。世間の常識に...

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映画「右側に気をつけろ」  監督:ジャン=リュック・ゴダール

この映画を、監督は、「俳優とカメラと録音機のための17もしくは18景のファンタジー」と言い、さらに監督はこう言ったらしい。映画館の外で、例えば町を歩く時、空を見上げる時、ただ普通に見て感じるだけ、これと同じように、この映画を観てほしいと。ということで、観る者へ、監督からの指示(?)があったらしいが、ま、こっちはお金払っているし、あまり、ぼーとしてはいられない。とにかく観てみましょう。まず、印象に残るのは...

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映画「ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択」  監督:ケリー・ライカート

ここは、カナダ国境に接するモンタナ州というところ。人口密度がとても低い。広大な荒野に、時折貨物列車が通る時に、やっと人の気配を感じるくらいだ。そんな風景のなか、作り手は、三つの話に登場する四人の女性の、それぞれの心中に焦点を絞る。ローラ・ウェルズ ジーナ・ルイス ジェイミー べス・トラヴィスローラ・ウェルズは街で弁護士事務所を開く独身女性。そのローラに、無理な弁護を依頼する初老の男フラー...

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映画「フォトコピー」 (インドネシア2021) 監督:レガス・バヌテジャ

ここは、ジャカルタ。大学の演劇サークル内で、繰り返し起こった事件のサスペンスドラマ。主人公は、自分の背中の裸の画像が、ネットに無断で公開されてしまった女子学生、スール。なぜ、そうなったのか?まずは彼女のこと、学内サークルのことから。一人娘スールの家は、父母一家3人で、なんとか小さな店を営む。スールはコンピュータサイエンス専攻で、大学の奨学金を得るための面接が迫っている。一方、スールは大学の演劇サー...

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映画「バルド、偽りの記録と一握りの真実」  (メキシコ2022) 監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督好きには、ぐっと来る作品です。映画は、シルベリオ・ガマという男の物語。シルベリオは、アメリカ在住の有名なジャーナリストで、ドキュメンタリー映画作家でもある、メキシコ生まれのメキシコ人。今回、彼が国際的な賞を受賞し、母国メキシコへ帰国したあたりから、話は始まる。映画はもちろん、メキシコでの嬉しい祝賀ダンスパーティーを映し出すが、同時にシルベリオが抱える創作へ...

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映画「2本立て」鑑賞の魅力をどうぞ!

何か、互いに通じ合う映画を2本、抱き合わせで観ると、なぜか不思議に、魅力が倍増します。それはたぶん、作品が双方に影響し合い、その持ち味がより引き立つからでしょう。あるいは、新たな視点が発見できるからかもしれません。これは、そんな味わいを持つ映画を2本選んで作った特集です。今後もこの企画を継続していきますので、都度ここに追加します。アジアン・コメディ映画2本立てマンハッタン発シンガポールの話、ジャカ...

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映画「ボックストロール」  監督:グラハム・アナベル、アンソニー・スタッチ

この作品、あなどってはいけない。話のあちこちで、言外に語る台詞やシーンが多いし、それは多弁で深い。まるでイソップ寓話みたいに、読み手の立場によって、さまざまな解釈ができて、さまざまな世界観が現れる。一番の見どころは、この作品を通して、現実社会の諸問題の根っこが見てとれること。「ボックストロール」とは、ボックス・トロール、箱に入っている妖精(トロール)。主人公の少年エッグスは、幼い頃から、ボックスト...

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映画「リバー・オブ・グラス」監督:ケリー・ライカート

ヤケッパチな女、コージー30歳の話。ここはフロリダ州南部、フロリダ半島の先っぽにある大湿地帯のそば。地域経済開発が、とん挫している地域。この地でコージーは、幼い子たちと父親とで、家族6人暮らし。だが、どうもコージーは育児放棄に近い。彼女のこころは、どん詰まりの限界状態のようだ。育児も家庭も世間も、もう、何もかもがイヤ!のヤケッパチ。できれば、夢みたいなヤバイ恋、通りすがりの見知らぬ男と一緒に、この町...

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映画「ラ・ポワント・クールト」 (フランス1954) 監督:アニエス・バルダ

アニエス・ヴァルダ監督のデビュー作品。フランス南部、地中海沿岸の大きな湖。(砂州によって海と分離した湖)この湖畔で漁業で生きるしかない人々が住む、ラ・ポワント・クールトという集落が話の舞台。集落と言っても僻地ではなく都市郊外だが、周辺の開発からポツンと取り残された、殺伐とした貧しい地域だ。この集落生まれの夫と、初めて夫の出生地に来た都会生まれの妻。この夫婦の関係が、いま、妻の心に翻弄されてギクシャ...

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映画「アルファ 殺しの権利」(フィリピン2018)  監督:ブリランテ・メンドーサ

麻薬犯罪の撲滅をはかるドゥテルテ大統領は2016年の就任後、「麻薬戦争」を掲げ、強硬な取り締まりを主導し、警官による麻薬犯罪容疑者の超法規的殺害を事実上容認してきた。これを背景に、本作「アルファ 殺しの権利」はフィリピン警察のある警察官の顛末を描く作品。警察官エスピノは仕事が出来て上司からも信頼があるようだ。SWAT(特殊部隊)を交えた今回の大規模な取り締まりも、彼が面倒をみている密告者(内部通報者)エラ...

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映画「ウェンディ&ルーシー」  監督:ケリー・ライカート

この映画は一編の詩。こころ静かな時に観てください。沈鬱へ落ち込むその前に、淡々としている何かが、彼女に、次へ進むための、少しの浮力と気力を授ける。それは一見、あきらめへの心の準備や、投げやりな振る舞いに見えなくもないが、そうじゃない。宿る力がある。かつてのホーボー(Hobo)に近い。 どういうワケがあったのか。ウェンディは、愛犬ルーシーと一緒に、世間を浮遊している。アラスカを目指しているらしい。ところ...

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【アジアン・コメディ映画2本立て】   マンハッタン発シンガポールの話「クレイジー・リッチ!」、ジャカルタ発ブルックリンの話「アリ&クイーンズ」

この2作品は、アジアとニューヨーク間を、アクティブに行動する若きアジア人を主人公に、その親世代との確執をコメディタッチで描いています。「クレイジー・リッチ!」は、マンハッタン発シンガポールへ旅立つ話。ラブコメディです。話は、マンハッタンに住む中国系二世レイチェルの、シンデレラ物語。レイチェルの彼氏の一家が、実はシンガポール一番の、とんでもない大富豪と分かった事で始まる、ど派手な大騒動。「アリ&...

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映画「ウェンデルとワイルド」 (2022)  監督:ヘンリー・セリック

とにかく、質感あるストップモーション・アニメーションが素晴らしい、高速ファンタジー。現世と地獄、悪魔に引き込まれ、さらには生と死をまたいで死者が墓から復活し‥の悪魔たちとの大冒険。よく出来ています。大人が楽しめます。主人公の少女カットが両親といっしょに乗っていた車が橋から落下し水没!カットだけが助かった。孤児となったカットは、強制的に教会の施設に送られ、そこでの生活が始まるが、あの事故は私のせい、...

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映画「彼女のいた日々」  監督:アレックス・ロス・ペリー

ニューヨーク市ブルックリンが話の舞台の、群像劇。すなおで地味なナオミ(エミリー・ブラウニング)が持つ、生来の小悪魔性を、無意識に、周囲に発して巻き起こす、ひと騒動。これを映画は喜劇にせず、というところが見どころだし、エミリー・ブラウニングがズバリ適役。自宅の地下室を個室の仕事場にしている中年のニックが、若いナオミを助手として雇ったことで、妻アリッサが抱きはじめる、夫が浮気?と精神不安。ニックとナオ...

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映画「鉄コン筋クリート」 監督:マイケル・アリアス

浮浪孤児のシロとクロ。二人は陽と陰、だから二人で一体。そして、シロの夢と、年上のクロの現(うつつ)の、二人の持ち味が、少年達の生き抜く力。そんなシロとクロは、「ネコ」と呼ばれ、驚異的な身体能力を持つ。これは、日本のある都市の話だ。宝町は、商業開発から取り残されたエリアだが、人情に厚い街。憩いを売る店、求める大衆、地場のやくざ、人情ある警察が、あうんの呼吸で支え合う。だが、時の流れに逆らえぬ、街の景...

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映画「無防備都市」 監督:ロベルト・ロッセリーニ

第2次世界大戦の1943年、連合国に降伏したイタリアはその直後、ドイツ軍に占領された。この映画は、翌1944年のローマを舞台に、反ナチ・ファシズムを掲げ戦ったレジスタンスたちの物語。見どころは、製作年が1945年、製作国がイタリアというところ。そして、戦時下、宗教の使命を貫く神父に注目したい。彼は地域の子たちを愛し、またレジスタンスに協力する市井の人でもある。レジスタンスのフランチェスコを密かに愛する子持ちの...

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映画「ぐれん隊純情派」 監督:増村保造

タイトルはヤクザ映画そのものだが、中身は地方巡業の大衆演劇一座のてんやわんやの話。そして群像劇。早いテンポでサクサクと話は進む。ヤクザの端くれ3人組、銀之助、松、豊。負けん気は強いが、東京下町の、大人のヤクザ業界では、うまく立ち回れない負け犬。銀之助の親父は名の通った旅役者で中村座という一座を率いて、浅草はじめ東京下町の芝居小屋を、そして関東各地を巡業して来た。だが、その親父が死んで一座は散り散り...

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映画「素足の娘」 監督:阿部豊 主演:南田洋子

どうってこと無いが、素直な映画。佳作とまでは言えないが、テンポが良い喜劇風味な作品。南田洋子が演じる地味なロマンス。時は昭和30年代はじめ。話の舞台は、広島県尾道の、海(狭い尾道海峡)を挟んで、目の前にある向島という名の島。大きな造船所がある。桃代18歳(南田洋子)は早くに母を亡くし、長崎の叔父の家で育った。しかしその叔父が死んで、桃代の居場所がなくなってしまう。そこで、向島の造船所で庶務をしている桃...

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映画「クラークス」 (米1994)  監督:ケビン・スミス

これといったストーリーも無く、ただただ、ダラダラゆらりと続く、笑える映画。クセになる映画。いいねぇ。こういうアホな映画が好きな人向けの作品です。コンビニとは言いにくい雑貨屋のアルバイト君と、レンタルビデオ(テープ)店のアルバイト君。両名ともに、まったく仕事にやる気がない。そんな客対応と、一癖以上の客たちとの会話が次々に展開します。それに加えて、女の子たちや、店先にぼんやりいる少々やばい売人やらが、...

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映画「画家と泥棒」 (ノルウェー2020)  監督:ベンジャミン・リー

なかなかの映画です。ある画家の作品が、夜間、街中のギャラリーから盗まれた。しかし、その犯行は監視カメラに記録されていて、犯人はすぐ捕まり裁判となった。ところが法廷で、画家がはじめて犯人を見た、その瞬間、なぜか彼女は彼に心ひかれはじめる。ここから話は始まる。そしてそのうち観客は、この映画は劇映画じゃなく、ドキュメンタリーだ!と気づくだろう。なぜなら、出演者のふるまいがあまりに自然すぎるから。話が進み...

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映画「当りや大将」  監督:中平康  なんとかここで精いっぱい、生きるしかない人々。“三丁目の夕日” じゃない昭和。 

あの“三丁目の夕日” だけが昭和じゃない。これも昭和30年代。監督は中平康、脚本は新藤兼人。舞台は、大阪の通天閣近く、釜ヶ崎。大将(長門裕之)と呼ばれ、釜ヶ崎じゃ名の通った男の本業は、当たり屋。当たり屋というのは、走りくる自動車に向かって故意に接触して ころんで、大げさに痛みを叫んで交通事故のケガを演技して、相手に治療費や慰謝料、示談金やら損害賠償を請求しようとする者。身体を張った商売だ。チームプレーが...

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映画「はなればなれに」 (仏1964)  監督:ジャン=リュック・ゴダール

一気に観てしまえるゴダールの映画。向こう見ずな、男と女と男の話。こういうコメディタッチな映画が、オシャレに見えるところが見どころ。オディル演じるアンナ・カリーナの魅力がいっぱい。ここらで、予告編をどうぞ。予告編バックに流れる音楽について。本編では、こんな風に流れません。http://mermaidfilms.co.jp/hanarebanareni/三人の、このダンスシーンは有名らしい。そのシーンはこれでご覧ください。ダンス・シーンhttps...

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マンハッタンの古書店と図書館。本の世界、本から外への世界。 映画「ブックセラーズ」・「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」

マンハッタンにある古書店と図書館のドキュメンタリー映画をどうぞ。本の世界、本から外への世界を描きます。「ブックセラーズ」は、古書をめぐっての世界を描く映画、古書をこよなく愛する人々を映す。マンハッタンの老舗古書店の店主らを中心に、同じく希少本を追い求める古書ディーラー、収集家、競売会社たちの熱いドキュメンタリー映画。宣伝文句は‥世界最大のニューヨーク・ブックフェアの裏側から見る、ブックセラー達の世...

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映画「夏時間」 (韓国2019) 監督:ユン・ダンビ

この姉弟が、父親と一緒に、一人住まいのじいちゃんの家へ引っ越しして来た、そこから始まる、父子3人の話。思春期を迎える姉、ヤンチャだけど まだ幼い弟、この二人の純な心を味わう、静かな、いい作品です。姉弟の父親は、商売に失敗したらしい。それまで住んでいた賃貸アパートの、半地下の家賃も苦しくなり、じいちゃんの家に転がり込んだのが、事の次第。家は住宅街にある大きな家だ。(下画像) (じいちゃんの家は、姉弟が...

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映画「声優夫婦の甘くない生活」  (イスラエル2019)  監督:エフゲニー・ルーマン

ソ連(ロシア)で、ながらく声優をしていたヴィクトルとラヤ、このユダヤ人夫婦の話。イスラエル製作の、憂いあるコメディ作品です。ソ連(共産国)でも、ハリウッドはじめ欧米映画が、これまで数多く上映されて来て、特に、主役スター俳優の、魅力ある吹替えが必要でした。この需要に応えてきたのが、この夫婦でした。英語タイトル:Golden Voicesところがソ連崩壊がはじまるを機に、二人は1990年、イスラエルに移民しました。当...

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映画「キャッチ22」 (アメリカ1970)  監督:マイク・ニコルズ

映画は、戦争の愚かさ、人の愚かさを、シニカルに、時にリアルに、そして全編をコミカルに描きます。話の進行は、時間軸を行ったり来たり。かつ、話の枝には、たくさんのエピソードがぶらさがっていて、ですが、それら個々のエピソードの筋を追っても、本作の魅力は捕まえられません。たぶん、観終わって初めて、この映画の語るところが分かる、そんな仕掛けの作品です。話は、第二次世界大戦中、1944年ごろのこと。1943年、ムッソ...

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映画「潤の街」 (ユンの街)  監督:金佑宣

潤子と雄司のラブストーリー。舞台は大阪の鶴橋あたり。高校生の潤子16歳は、在日コリアン三世。潤子は、母の利代(李麗仙)が鶴橋で営む、お好み焼屋を手伝っている、看板娘。雄司は大きな家の長男。進学するでもなく、浪人状態で工事現場のアルバイトをしている。そんな様子を雄司の母親は心配している。横浜から叔父が来て、苦言の末に、横浜に来ないかと言われた。(父親は他界したらしい)そして叔父はもう一つ雄司に言った。...

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映画「10人の泥棒たち」 監督:チェ・ドンフン

これは、楽しめる!エンターテインメント。「太陽の涙」という大きなダイアモンドを強奪するため、集結した10人のプロたち。話のスタートは韓国、そしてマカオ、香港へと舞台は移って行く。映画は10人の群像劇でもある。それぞれの個性を巧く描き、各人の専門技術が披露され、その中で愛が行きかい、やがて案の定、仲間割れ。シーンの展開がスピーディーで小気味よいが、その分、10人のキャラを追うのに遅れると、置いてきぼりにな...

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【特集】1930年代の日本映画は、いかがですか。 (まとめ)

1930年代製作の日本映画の醍醐味を味わおう。現代の映画より、どれも、きりっと引き締まった作品です。以下、これまでに掲載した31本。※タイトルのあとのSは、サイレント作品を示しています。1926狂った一頁 S衣笠貞之助 1928十字路 S衣笠貞之助 1930何が彼女をそうさせたか S鈴木重吉 1930石川五右ヱ門の法事 S斎藤寅次郎 1932 大人の見る繪本生れてはみたけれど S小津安二郎 1932國士無双 S伊丹万作...

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映画「心のうた」 (トルコ2022) 監督:ソネル・ジャネル

ピロス(左)と、スンブルのラブストーリー。エキゾチック満載で楽しい映画。ここは、トルコの草原地帯。見渡す限り、人家は無い。そんなところに、ロマ(ジプシー)たちのキャンプ地がある。彼らの生業は楽団だ。結婚式や葬式に呼ばれて、ダンス音楽を演奏する。ピロスは、その楽団の一員。父親の稼業を引き継いでいる。トルコ人の花嫁スンブルは、結婚式が迫っている。だけど嬉しくない。悲しく、悶々としている。彼女は夫になる...

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映画「風が吹くまま」  監督:アッバス・キアロスタミ

イランの首都テヘランから、ずっと遠く離れた小さな村での話。そこはクルドの人たちが住む村。あたりは山岳の乾燥地帯、おそろしく広大な風景だ。人々の暮らしは貧しい、いや、古来からの伝統的な衣食住に、なに不自由なく、民族衣装で質素な暮らしをしている。例えば、文明の利器、携帯電話は谷あいの村じゃ無理で、山のてっぺんまで行かないと電話が通じない。これにイラつくのは都会の、この人。さて、どう見ても地元の人間には...

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映画「1秒先の彼女」 (台湾2020) 監督:チェン・ユーシュン

台湾の、ちょっと変わったラブストーリー。ファンタジー味でコミカルでもあり。郵便局に勤務してウン年経つ、独身30歳、一人住まいの、恋に恋するシャオチー(リー・ペイユー)の、奇想天外な物語。ただし、話が時間軸に沿って真っすぐ進まない、また、ふたつの話が実は同時進行だったりする語り口なので、観る側に、ちょっと観る力を求める映画。ですが、そういう語り口が、シャオチーの日常にミステリーっぽさや、ファンタジー味...

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やばいブツを密かに運ぶ【運び屋】が主人公の映画。 クリント・イーストウッドの「運び屋」、トム・クルーズの「バリー・シール アメリカをはめた男」

やばいブツを密かに運ぶ、運び屋という職種の人が出て来る話は多いですね。今回は、その中から2本をピックアップ。クリント・イーストウッドが主演・監督の「運び屋」と、トム・クルーズ主演の「バリー・シール アメリカをはめた男」。「運び屋」は、ニューヨークタイムズ紙に掲載された記事「90歳の運び屋」をベースにして出来上がった、味のある作品。「バリー・シール アメリカをはめた男」は、運び屋にして腕っ利きパイロッ...

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映画「浮き雲」 (フィンランド)  監督:アキ・カウリスマキ

共働きの夫婦が、相次いで、突然の失職。決して本人が悪いわけじゃない。そんな不運で始まる「浮き雲」ですが、ラストには‥。ヘルシンキの空に漂う憂き雲。不景気の中、八方 手を尽くすが、夫婦ともに仕事が見つからない。夫のラウリは、ヘルシンキの市街を走る路面電車の運転手だった。市交通局による突然の人員整理は、あとくされ無いようにと、なんと、クジ引きで退職者が決められ、瞬時にラウリの運命が決まった。ラウリはふて...

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ロシアが、東から侵略してくる映画。 「アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場」  (フィンランド2017) 監督:アク・ロウヒミエス

フィンランドに向けて、東側からロシア(当時ソ連)が侵略してくる映画です。ただし戦争アクションじゃない。史実。フィンランド歩兵のリアルな体験を描く映画です。林の中で身を隠すロシア兵が撃つ銃弾が、観客の耳元をかすめます。時は1941年から1944年。戦場はフィンランド南部のカレリア地方。(下記地図のKarelia、赤い地域をロシアが奪う)映画は群像劇ですが、ストーリーに組み込む数人の兵士がピックアップされて、話は進...

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映画「逃げた女」 監督:ホン・サンス

題名の「逃げた女」とは、誰?結婚して5年になるというガミ(キム・ミニ)が、敬愛する先輩二人や昔の恋敵(こいがたき)に久々に会った、お話。何も飾らない隠さない、女たちの語らい三つ。そのなかで、まずは旧友3人の生き様が浮かびあがってくる。そしてガミの不思議。ガミは、旧友に会った時に、決まって同じセリフを言う。私は結婚して以来この5年、一度も夫と離れたことがない、なぜなら夫は私と一緒にいることが一番幸せだ...

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映画「アカシアの通る道」 (アルゼンチン2011)  監督:パブロ・ジョルジェッリ

静かな、すなおなロードムービー。いい映画です。台詞が極限まで削られた脚本。シーンの多くは、古いトラックの運転席と車窓のながめ。そうなんだけど、実に細やかに心情を物語る、その魔術!とは言っても、映像表現に頼った様子は無い。また、俳優が美形なわけじゃない、ごく普通の感じなのですが‥。大型トラックのベテラン・ドライバーのルベン。彼は、伐採した原木を目一杯積んで、パラグアイから国境を越え、アルゼンチンのブ...

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予期せぬ妊娠、その時。カサブランカの女と、アルゼンチンの女、それぞれの場合。映画「モロッコ、彼女たちの朝」・「見えない存在」

予期せぬ妊娠。その時、カサブランカの女とアルゼンチンの女、二人のそれぞれの決断を描く映画。ともに静かな現代劇です。モロッコ、彼女たちの朝原題:Adamモロッコ最大の都市カサブランカの下町。大きなお腹を抱えた未婚の妊婦サミアは、行くあて無く、その界隈の片隅にいた。サミアは、故郷からカサブランカに出て、これまで、一人住まいしながらビューティーサロンで働いていたらしい。だが、未婚のサミアが妊娠と分かると、サ...

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【特集】アジアへ進出する、日本の映画監督。

日本の監督が、アジアを舞台にして撮った最近作です。こうした作品は、主たるセリフが日本語か否か、日本人俳優が出演か否か、あるいは製作国が日本か否か、そんなことで、邦画/洋画に区分けされようとします。しかし、たぶん、監督の意思は、邦画/洋画の垣根を越えようとしています。以下から紹介記事をご覧ください。アジアの天使  ブランカとギター弾き  ホテルニュームーン  ママは日本へ嫁に行っちゃ    ダメと...

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