最近読んだ本から、ピックアップ。 「ジャーナリズム崩壊」 「報道の脳死」 「ショック・ドクトリン」
2014年07月14日 公開
◆ 最近読んだ本から、3冊をピックアップしました。
「ジャーナリズム崩壊」 上杉隆・著 幻冬舎新書089 2008年発行
「報道の脳死」 烏賀陽弘道・著 新潮新書467 2012年発行
以前から既にそうかもしれないが、こと3.11以降や第2次安倍内閣になってからの、新聞・テレビの報道に、大いなる違和感を感じている方々にお勧めです。
なんだか日本のマスコミは、やばいと薄々感じていたが、この本を読んで、「報道のウラで、報道人が何をやっているのか」 が、ハッキリして来て、すごく憤りを覚えます。
上杉隆氏が本の冒頭で言う、ジャーナリズムとワイヤーサービスの違いや、日本と海外マスコミの記者の仕事の違いをまず知ってから、この2冊を読むといいです。また、烏賀陽弘道氏の本を読んで、マスコミ各社の横並びの記事内容、政府お膳立てセレモニー記事、ニュースリリースのリライト記事など、記者の問題意識はどこに行ったんだろうか、と思います。
なお、上杉隆氏はNHK、ニューヨークタイムズ東京支局を経験、烏賀陽弘道氏は朝日新聞を経験した記者であり、現在はともにフリー。
<目次>
「ジャーナリズム崩壊」
第1章 日本にジャーナリズムは存在するか?
第2章 お笑い記者クラブ
第3章 ジャーナリストの誇りと責任
第4章 記者クラブとは何か
第5章 健全なジャーナリズムとは
「報道の脳死」
第1章 新聞の記事はなぜ陳腐なのか
第2章 「断片化」が脳死状態を生んだ
第3章 記者会見は誰のためのものか
第4章 これからの報道の話をしよう
第5章 蘇生の可能性とは
「ショック・ドクトリン 惨事便乗型 資本主義の正体を暴く」 ナオミ・クライン・著 岩波書店:2011年発行 原著:2007年発行
市場原理主義や新自由主義という手法は、どういうものなのか、何ゆえに批判されるのかを知る本。
著者が批判するのは、シカゴ大学の経済学者フリードマン率いるシカゴ学派が、1970年から30年以上にわたって世界各国で行って来た反革命運動。社会福祉政策を重視し、政府の介入を是認する「ケインズ主義」に反対し、いっさいの規制や介入を排して、自由市場のメカニズムに任せれば、自ずから均衡状態が生まれるという考えに基づく改革運動。著者はこの手法をショック・ドクトリンと呼ぶ。
シカゴ学派の経済学者は、ある社会が政変や自然災害などの危機に見舞われた時、人々がショック状態に陥って、なんの抵抗も出来なくなった時こそ、「市場原理主義」に基づく経済政策を一気に導入する最大のチャンスと捉え、この手法をこれまで世界各地で実践してきた。
フリードマンのこの過激な自由市場経済は、市場原理主義、新自由主義と呼ばれている。軍事までも含めた徹底した民営化と規制撤廃、自由貿易、福祉と医療などの社会支出の削減を柱とする。この経済政策は、大企業や多国籍企業、投資家の利害と密接に連携するものであって、貧富の格差拡大やテロ攻撃等の社会的緊張増大につながる悪しきイデオロギーだと著者は言っている。
ショック・ドクトリンの実際の適用事例として、チリのクーデターをはじめとする70年代のラテンアメリカ諸国、サッチャー政権時、ポーランドの連帯後、鄧小平の自由主義経済導入と天安門事件、アパルトヘイト後の南アフリカ、ソ連崩壊時、アジア経済危機、9.11後の米国とイラク戦争、スマトラ沖津波後、米国南部を襲ったハリケーン・カトリーナ後など、種々の例をあげて、ここ30年の現代史に沿って各ケースを検証する。
自由と民主主義の美名のもとに語られてきた、復興・改革・グローバリゼーションの裏に、暴力的破壊的ショック・ドクトリンが存在したことを暴いている。
ぜひ、読んでいただきたい。目からうろことは、このことだ。今の政治や経済がはっきりと見えてきた。
<目次>
◆上巻目次 ◆下巻目次
序 章 ブランク・イズ・ビューティフル 第五部 ショックの時代――惨事便乗型資本主義複合体の台頭
第一部 ふたりのショック博士―研究と開発 第14章 米国内版ショック療法
第1章 ショック博士の拷問実験室 第15章 コーポラティズム国
第2章 もう一人のショック博士 第六部 暴力への回帰―イラクへのショック攻撃
第二部 最初の実験―産みの苦しみ 第16章 イラク抹消
第3章 ショック状態に投げ込まれた国々 第17章 因果応報
第4章 徹底的な浄化 第18章 吹き飛んだ楽観論
第5章 「まったく無関係」 第七部 増殖するグリーンゾーン―バッファーゾーンと防御壁
第三部 民主主義を生き延びる―法律で作られた爆弾 第19章 一掃された海辺
第6章 戦争に救われた鉄の女 第20章 災害アパルトヘイト
第7章 新しいショック博士 第21章 二の次にされる和平
第8章 危機こそ絶好のチャンス 終 章 ショックからの覚醒
第四部 ロスト・イン・トランジション―移行期の混乱に乗じて
第9章 「歴史は終わった」のか?
第10章 鎖につながれた民主主義の誕生
第11章 燃え尽きた幼き民主主義の火 第12章 資本主義への猛進
第13章 拱手傍観
「ジャーナリズム崩壊」 上杉隆・著 幻冬舎新書089 2008年発行
「報道の脳死」 烏賀陽弘道・著 新潮新書467 2012年発行
以前から既にそうかもしれないが、こと3.11以降や第2次安倍内閣になってからの、新聞・テレビの報道に、大いなる違和感を感じている方々にお勧めです。
なんだか日本のマスコミは、やばいと薄々感じていたが、この本を読んで、「報道のウラで、報道人が何をやっているのか」 が、ハッキリして来て、すごく憤りを覚えます。
上杉隆氏が本の冒頭で言う、ジャーナリズムとワイヤーサービスの違いや、日本と海外マスコミの記者の仕事の違いをまず知ってから、この2冊を読むといいです。また、烏賀陽弘道氏の本を読んで、マスコミ各社の横並びの記事内容、政府お膳立てセレモニー記事、ニュースリリースのリライト記事など、記者の問題意識はどこに行ったんだろうか、と思います。
なお、上杉隆氏はNHK、ニューヨークタイムズ東京支局を経験、烏賀陽弘道氏は朝日新聞を経験した記者であり、現在はともにフリー。

<目次>
「ジャーナリズム崩壊」
第1章 日本にジャーナリズムは存在するか?
第2章 お笑い記者クラブ
第3章 ジャーナリストの誇りと責任
第4章 記者クラブとは何か
第5章 健全なジャーナリズムとは
「報道の脳死」
第1章 新聞の記事はなぜ陳腐なのか
第2章 「断片化」が脳死状態を生んだ
第3章 記者会見は誰のためのものか
第4章 これからの報道の話をしよう
第5章 蘇生の可能性とは
「ショック・ドクトリン 惨事便乗型 資本主義の正体を暴く」 ナオミ・クライン・著 岩波書店:2011年発行 原著:2007年発行
市場原理主義や新自由主義という手法は、どういうものなのか、何ゆえに批判されるのかを知る本。
著者が批判するのは、シカゴ大学の経済学者フリードマン率いるシカゴ学派が、1970年から30年以上にわたって世界各国で行って来た反革命運動。社会福祉政策を重視し、政府の介入を是認する「ケインズ主義」に反対し、いっさいの規制や介入を排して、自由市場のメカニズムに任せれば、自ずから均衡状態が生まれるという考えに基づく改革運動。著者はこの手法をショック・ドクトリンと呼ぶ。
シカゴ学派の経済学者は、ある社会が政変や自然災害などの危機に見舞われた時、人々がショック状態に陥って、なんの抵抗も出来なくなった時こそ、「市場原理主義」に基づく経済政策を一気に導入する最大のチャンスと捉え、この手法をこれまで世界各地で実践してきた。
フリードマンのこの過激な自由市場経済は、市場原理主義、新自由主義と呼ばれている。軍事までも含めた徹底した民営化と規制撤廃、自由貿易、福祉と医療などの社会支出の削減を柱とする。この経済政策は、大企業や多国籍企業、投資家の利害と密接に連携するものであって、貧富の格差拡大やテロ攻撃等の社会的緊張増大につながる悪しきイデオロギーだと著者は言っている。
ショック・ドクトリンの実際の適用事例として、チリのクーデターをはじめとする70年代のラテンアメリカ諸国、サッチャー政権時、ポーランドの連帯後、鄧小平の自由主義経済導入と天安門事件、アパルトヘイト後の南アフリカ、ソ連崩壊時、アジア経済危機、9.11後の米国とイラク戦争、スマトラ沖津波後、米国南部を襲ったハリケーン・カトリーナ後など、種々の例をあげて、ここ30年の現代史に沿って各ケースを検証する。
自由と民主主義の美名のもとに語られてきた、復興・改革・グローバリゼーションの裏に、暴力的破壊的ショック・ドクトリンが存在したことを暴いている。
ぜひ、読んでいただきたい。目からうろことは、このことだ。今の政治や経済がはっきりと見えてきた。
<目次>
◆上巻目次 ◆下巻目次
序 章 ブランク・イズ・ビューティフル 第五部 ショックの時代――惨事便乗型資本主義複合体の台頭
第一部 ふたりのショック博士―研究と開発 第14章 米国内版ショック療法
第1章 ショック博士の拷問実験室 第15章 コーポラティズム国
第2章 もう一人のショック博士 第六部 暴力への回帰―イラクへのショック攻撃
第二部 最初の実験―産みの苦しみ 第16章 イラク抹消
第3章 ショック状態に投げ込まれた国々 第17章 因果応報
第4章 徹底的な浄化 第18章 吹き飛んだ楽観論
第5章 「まったく無関係」 第七部 増殖するグリーンゾーン―バッファーゾーンと防御壁
第三部 民主主義を生き延びる―法律で作られた爆弾 第19章 一掃された海辺
第6章 戦争に救われた鉄の女 第20章 災害アパルトヘイト
第7章 新しいショック博士 第21章 二の次にされる和平
第8章 危機こそ絶好のチャンス 終 章 ショックからの覚醒
第四部 ロスト・イン・トランジション―移行期の混乱に乗じて
第9章 「歴史は終わった」のか?
第10章 鎖につながれた民主主義の誕生
第11章 燃え尽きた幼き民主主義の火 第12章 資本主義への猛進
第13章 拱手傍観
◆上巻目次
第13章 拱手傍観
第13章 拱手傍観
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