映画「南東から来た男」  監督:エリセオ・スビエラ   アルゼンチン映画

上2
組1-0  自称、地球外生物であるという男が、ある日、精神病院に紛れ込んで来た。
  この男に関心を持った精神科医デニスは、各種の検査をした結果、大いに驚く。精神異常の兆候は全くないし、群を抜く知能指数、そして先端科学の知識を持っている。
  さらには、いわゆる見識がある。特に弱者に対して、いたわりの気持ちが強い。
  男は、精神病棟の患者たちを癒やす力があるようだ。次第に患者たちは彼を慕うようになり、崇めるようになる。

  だが、男は「惑星から来た」と言う。
  さらには、地球上のあちこちに、この男と同じ星から来たものたちがいるとも言う。
  デニスは考えた。彼の言うことを認めると、自分は狂人となる。
  彼を否定すれば、彼は精神障がい者となる。
  デニスは苦しむ。かつてイエス・キリストの裁判で、ユダヤ教徒の圧力に屈し、不本意ながらキリストを十字架刑に処したと新約聖書がいう男・ピラトのように、自分はなってしまうのかと・・・。


組2-0  デニス同伴であったが、ある日、男はクラシックの野外コンサートで問題を起こし、翌朝これが新聞に大きく取り上げられた。
  問題とは、コンサート中に男が彼女と踊りだし、他の観客もつられて踊りだしたこと。 (演奏曲はベートーヴェン交響曲第9番)  さらにはステージに上がって指揮をしたこと。ただし、指揮者は彼の音楽的才能をみてとって、指揮台の傍らで彼の指揮を聴き入っていた。男の指揮する第九が、ある波動を起こし病院までそれが伝播したのか、不思議にも精神病棟にいる患者たちが一斉に浮かれ始めて、医師や看護師の制止を振り切り、大勢がコンサート会場に向かった。この騒動で、警察が出動した。


  朝刊を前にして院長は、デニスに圧力を加えて来た。
  あの男は偏執病(パラノイア)だ。 ああいう重病患者は危険人物。発作的に殺人を犯す可能性もある。男の勝手な振る舞いを抑えるにはアロビドル薬を使うしかない。
中2  これに対してデニスは、あの薬を使えば、精神分裂症になると抵抗するが、院長はそうなれば電気ショック療法を使えばいいと言う。さらには、患者たちは、あの男に扇動されたと言っている。すぐ治療を始めてくれ。



  この治療で、男はすぐに精神障がい者になった。
  デニスが病院を離れていたその日、当直医は分裂症治療のため電気ショックを男に与えていた、その最中、彼は心臓麻痺で死亡した。
中  男の突然の死を患者たちは、男が惑星に帰ったのだと理解していた。そして、いつか宇宙船に乗って自分たちを迎えに来るのだと信じて夜空を見上げるのであった。

  映画は自由と民主主義を標榜し、製作年直前まで続いた軍事政権下における弾圧を批判をしているのだろう。
  この映画と類似の、自称異星人と精神医のドラマで「光の旅人 K-PAX」というのがある。こちらの方がエンターテインメントです。レビューは、ここからどうぞ。
    
  偏執病(パラノイア)
  自らを特殊な人間であると信じたり、人から攻撃を受けているなどの強い妄想を抱いている、という点以外では人格や職業能力面において常人と変わらない点が特徴。重症化すると、妄想性パーソナリティ障害と呼ばれる。
    

オリジナル・タイトル:Hombre Mirando AlSudeste
英語タイトル:MAN FACING SOUTHEAST
監督・脚本:エリセオ・スビエラ|アルゼンチン|1986年|107分|
撮影:ルカリド・デ・アンヘリス|
出演:ランテース(ウーゴ・ソト)|精神科医デニス(ロレンツォ・クィンテロス)|ベアトリス(イレーネ・ベルネンゴ)|

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