映画「ヌードの夜」  監督:石井隆  出演:余貴美子、竹中直人、椎名桔平、根津甚八

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組1-0



  若いころからの腐れ縁が、大きな腫瘍のように肥大化してしまった男と女がいた。

  当時からワルだった男、行方耕三(根津甚八)は新宿のヤクザになり、女、土屋名美(余貴美子)も東京で地味なOLになった。
  しかし、ふたりの関係は依然途切れることなく、また今だ、5万10万の金を名美にせびることも続いている。 新宿の高級ホストクラブを組から任されている行方に、金が無いはずがない。だが、せびるのだ。腐れ縁。
  このふたり、もうこの関係に疲れ果て、互いに嫌悪感も抱いてるが、会うと相変らず激しくセックスする。そして、結局いい歳になった今も、こころのどこかで、微かに愛し合っている。

組2-00  ついにその日、名美は決心する。殺意だ。その計画も決めた。
  そう決めると、名美はやたらに気晴らしがしたくなった。 
  今まで、行方に貢ぐ金のために質素な生活をしてきた名美は、パッと派手に飾り立て、賑やかなトレンディな東京を見て回ることを決める。
  だが、東京に住んで久しいのに、思う場所どこもが行ったことがない。おのぼりさんのようにガイドが欲しい。ひとりじゃ寂しい。話し相手が欲しい。

中0  そんな折、名美は偶然に「代行屋」を知る。
  「何でも代行致します。あなたのお役に立ちたいのです。お待ちしています。お仕事ください。 問い合わせ:紅次郎事務所」
  この紅(竹中直人)という男、新宿にある事務所兼自宅にひとりで住んでいる。
  犬の預かりに始まり、墓掃除、親兄弟すら来ない通夜・告別式を執り行うことすらある。「人の嫌がる後始末をする商売だ」と、紅は言う。 
  彼は元証券マンだったらしい。バブルはじけて、まともな人生もはじけた様子。

  さて紅は、名美を連れ東京各所を回った。
  そしてその夜、彼女はホテルの部屋に行方耕三を呼び出し、彼を殺した。 
  女が、小さなナイフで男を殺せた。何故にやくざの男は、心の隙を名美に見せたのだろうか。 それはたぶん、大きな腫瘍のように肥大化したふたりの愛には、セックスと暴力と殺意そして人生への諦めが同居していたからだろう。

  名美はふたたび紅に仕事を発注する。「ホテルの部屋に大きな荷物がある。引きとりに行って。」
  部屋に着いた紅は驚く。バスタブに血まみれの死体。躊躇したじろいだが、紅はしかるべき行動をとった。それは仕事だからということよりも、名美のためであった。
  だが、始末屋だ。大きなカバンに男の死体を詰め、自分の事務所に持ち込んだ。さて、どうしよう・・・、そう思ったところに、行方の手下がやって来た。
  ここから、名美と紅は地獄のその先まで転がり落ちていくのであった。

組4-0





監督・脚本:石井隆|1993年|110分|
撮影:佐々木原保志
出演:土屋名美(余貴美子)|紅次郎(竹中直人)|行方耕三(根津甚八)|仙道達(椎名桔平)|正子(清水よし子)|志村(岩松了)|広瀬(小林宏史)|健三(田口トモロヲ)|中沢(小形雄二)|柏原(速水典子)|加藤(岡村洋一)|管理人(夏川加奈子)|店員・岡崎宏子(高原あきら)|店員・野崎京子 (野崎名美)|田中:歌舞伎町のヤクザ(飯島大介)|
戸塚:歌舞伎町のヤクザ(蟷螂襲)|横田:歌舞伎町のヤクザ(横田茂美)|ホテルのフロント(筑紫野はな)|葬儀場の住職(室田日出男)|

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