映画「足にさわった女」 1952年  監督:市川崑  主演:越路吹雪、池部良

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宝塚出身のスター・越路吹雪の素直な演技と、池部良の軽妙な演技が楽める。

大阪府警のスリ担当刑事(池部良)は、上司から有給消化を言われ渋々だが休暇をとって上京することにした。
偶然にもその日、大阪では名の通った美人スリ師・さや(越路吹雪)が、訳あって故郷の伊豆下田へ向かうことになっていた。
そして、人気作家の男(山村聡)は、出版社の男を伴って東京に帰るスケジュールになっていた。
映画は、この三人が東海道線の同じ特急列車に乗り合わせたことから話が始まる、ライトでスピーディなコメディ。

特急列車は大阪駅を出発し、客車を連ねて東京へと走り始める。
さやには少し障害のある弟分(伊藤雄之助)がいて、周辺警備役のこの男が列車に刑事が乗っていることを発見する。片や、さやはボックス席の向かいに座る男の財布を狙っている。食堂車でひとり暇をもてあそんでいる刑事は、作家が編集者相手に阿呆な議論しているのを聞いている。
  
列車は東京へとひたすら走るが、当時大阪・東京間8時間かかっている。ドラマが展開する時間は、まだまだあった。
列車がトンネルに入った。弟分が、あらかじめ車内灯の制御スイッチをオフにしておいたために、客室は真っ暗になる。すかさず さやは、向かいの男の胸ポケットから財布をスリとった。トンネルを出て明るくなり、向かい席の男が騒ぎ始めたが、財布はすでに弟分の手にあった。この騒ぎで、さやは会いたくもない刑事と出くわすことになる。刑事は休暇中に仕事はしたくなかったし、大阪を遠く離れた今、刑事としてさやに接したくなかった。

列車が、わびしい駅で突然停車した。
線路の不具合で次の駅まで歩いてくれと車内放送が流れる。仕方なく乗客全員が線路を歩いて行く。ひとりの老婆(三好栄子)が歩くのに難渋しているのを見兼ねて、さやは老婆を背負って歩き始める。途中で刑事も老婆を背負ってやって、ようやく次の駅に着いた。刑事は、さやの優しい面を垣間見た。
待機していた列車に乗り込もうとしたさやは、続いて乗ろうとした刑事に言う。「あッ!腕時計を落とした」
さやの計略とは知らず線路に降りて時計を探すうちに列車は動きだし、刑事は乗り遅れてしまった。

さて東京へと走り出した車内で、弟分がさやに言った。「さっきスったこれ、名刺入れだよ」 それから、さやは気付いた。里帰りのために用意した多額の金をすられている。あの老婆だ! そのころ、刑事も財布を盗まれていることを知る。さやだ!(実はやはり、あの老婆であったが・・・)

中熱海駅に到着したさやと弟分は、列車を降り下田港への連絡船に乗り換えた。 (当時まだ伊豆急行線は無かった)
船が出港すると、なんとあの作家も刑事も船に乗っている!
ここから話はさらに展開する。
作家は、さや目当てに乗船し、すられた金を貸そうと誘いをかける。
そう、刑事もさやを追っていた。さやがすった財布を取り返すこと。合わせて、刑事の男としての本能が、さやを追いかけていた。
さてさて話は、この先どうなりますでしょうか。
船上での話、さやの故郷下田での話、そして東京警視庁内での話と続きます。もちろんラストは期待通り、大阪へ帰る下りの列車では、さやと刑事が並んで座っています。

どうでもいいことだが、警視庁内の廊下のシーンで、刑事と作家が立ち話する。その背後のドアに「33」と部屋番号が記されていた。本作の3年後に公開の谷口千吉監督映画「33号車応答なし」は、警視庁警官たちの物語であり池部良主演であった。この映画のレビューは、こちらからどうぞ。

下監督:市川崑|1952年|84分|
原作:澤田撫松|脚本:和田夏十、市川崑|撮影:安本淳|
出演:美人の女スリ・塩沢さや(越路吹雪)|刑事・五平太(池部良)|小説家・坂々安古(山村聡)|小説家の姪(岡田茉莉子)|女の弟分(伊藤雄之助)|女万引(沢村貞子)|女の向かいに座った重役(見明凡太朗)|警視(藤原釜足)|大阪の警部(村上冬樹)|熱海の巡査(加東大介)|スリ師の老婆(三好栄子)|留置場警官(渋谷英男)|車掌(堺左千夫)|かつぎ屋(柳谷寛)|
こちらで市川崑監督の作品をまとめています。
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