映画「ショーシャンクの空に」  監督:フランク・ダラボン

上組1-0

  1947年、終身刑となった男がショーシャンク刑務所に移送されてきた。
  名はアンディ。 妻とその浮気相手を銃殺した罪である。地方銀行の副頭取らしいが、まだ若い。そして、彼は冤罪(えんざい)被害者であった。

  入所後、アンディ(ティム・ロビンス)は銀行員のキャリアを生かし、刑務官に対して所得申告や遺産相続やらの相談と実務を引き受けて彼らに便宜を図り、とりわけ刑務所所長個人の財産管理を任された。その見返りとして、彼は所内での身の安全と自由を得るに至っていた。
  刑務所は囚人の社会奉仕を名目に、近辺の建設工事を格安で受注していたが、地元の建設会社は受注の機会均等を期待して、所長の懐に多額の金を送っていた。
  所長の信任を得たアンディは、所長ために法の目をかいくぐって架空の人物を作り上げ、金融知識を駆使して所長の悪徳財産を洗浄し、架空名義の口座に蓄え始める。つまり、アンディは刑務所に入ってから法を破り始めたのだ。
  今となっては、所長の悪徳に対する守秘義務と所内の自由が、天秤に乗っていた。同時にアンディは、所長の奴隷となっていった。アンディが所長に刃向かうと、懲罰房(ちょうばつぼう)という真っ暗な独房に放り込まれた。そして時は過ぎ、貯蓄金額は一生遊んで暮らせる金額に達していた。

組2-0  入所当初、アンディは多くの犯罪者たちに混じって刑務所の中で異質であった。
  孤立していたアンディが、こころを許した最初の男は古株のレッドという男だった。互いに気が合った。彼は、この年上のレッド(モーガン・フリーマン)を通して所内の事情をつかみ始める。
  アンディは、所内での優遇をひとり占めせず、レッドやレッドに親しい者たちと分け合った。そして徐々にショーシャンク刑務所の住人となって行った。

  アンディは、レッドのツテで鉱物調査用のロックハンマーと女優の大判ポスターを手に入れた。それは、後に分かる事であるが、レッドすら知らなかった脱獄の道具であった。長い年月を費やし、分厚い牢の壁を破り、ある日アンディは脱獄に成功する。

  脱獄後すぐアンディは、自分が作り上げた架空の人物に成りすまし、銀行で全財産を受け取り、新車でメキシコの海岸に向かった。そして、所長の悪徳のすべてを記した文書を新聞社に郵送した。
  彼は、司法の不条理と所長の奴隷から抜け出し、自分の人生を奪い返したのだ。さらには、アンディがメキシコの海で始めた小さなホテルで、刑を終えたレッドを雇うことを忘れなかった。


中  観る者の心をわしづかみし、ラストでほっこりさせて優しくリリースする術は、なかなか。
  だが、映画冒頭の裁判シーンで、アンディの答弁は実にたどたどしいし、弁護士のシーンもない。副頭取として社会的地位ある人物が、世の人脈を使わず冤罪弁護団も作らず、ひとり冤罪被害者になって行く。ここが納得いかない。残念。また、ポスターで隠してきたという監獄の壁の、ぽっかり大きな穴は失笑。

  要するに、落ちぶれた男が刑務所内で、鶏群の一鶴になり大空へと飛んで行く・・・。
  うん、アメリカの立身出世物語の刑務所版。
  私腹を肥やす所長が、ショーシャンクにいたことが実にラッキーだった。


下オリジナル・タイトル:The Shawshank Redemption
監督・脚本:フランク・ダラボン|アメリカ|1994年|143分|
原作:スティーブン・キング|撮影:ロジャー・ディーキンス|
出演:アンディ(ティム・ロビンス)|レッド(モーガン・フリーマン)|サミュエル・ノートン刑務所所長(ボブ・ガントン)|ヘイウッド (ウィリアム・サドラー)|バイロン・ハドリー主任刑務官(クランシー・ブラウン)|トミー・ウィリアムズ(ギル・ベローズ)|ボッグス・ダイアモンド(マーク・ロルストン)|ブルックス・ヘイトレン(ジェームズ・ホイットモア)|検察官(ジェフリー・デマン)|トラウト(ポール・マクレーン )|マート(ジュード・チコレッラ)|


特集:刑務所は出たけれどの物語
「刑務所は出たけれど」という切り口で、映画を集めました。
(ただし、「ショーシャンクの空に」では、脱獄した後の事は、ラストですけど‥)
刑務所は出たけれど


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