映画「鴛鴦歌合戦(おしどり)」  監督 :マキノ正博

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時は江戸時代。
中1 70好きよ嫌いよ、男2人に娘3人、ラブコメディな ジャズ・オペレッタ。

おとみ(服部富子)が、江戸の街を歩いてる。 
オペレッタの始まりだ♪♪
可愛い彼女に言い寄る男ら五人、リズムに乗って歌って ついて行く。
だけど、おとみは、全くつれない。私は、あの人に会いに行く。


中3さて、ここは江戸近郊。  
長屋の住人、浅井(片岡千恵蔵)は、壁一枚隔てた隣のお春(市川春代)が大好き。
お春の父親、志村狂斎(志村喬)も浪人で、傘張りをして父娘二人で暮らしてる。 (睦まじい父娘の唄の掛け合い)
そして浅井は、隣の別荘の、おとみも好き。
その父親は、豪商・香川屋宗七だ。

組1-0ある晴れた日。
長屋前の空き地で、お春は父が張った日傘を干してると、そこへ別荘にいる父を訪ねて、おとみが現れた。
でも、それは言い訳で、おとみの気持ちは、浅井に会いたい恋心。
さあここで、お春とおとみの恋の鞘(さや)当てが、唄に乗せて始まった。
外がそんな事とはつゆ知らず、浅井がのっそりぼんやり出て来た。

中4そして、これまた間が悪い。
浅井の許嫁(いいなずけ)、藤尾(深水藤子)がひょっこり現れて、いきなり浅井に寄り添った。
藤尾は、父の遠山満右衛門とふたりでやって来た。この遠山なる人物は、浅井の叔父さん。叔父は浅井にそっと言う。「いつまでも先延ばしにはできないぞ。そろそろ日取りを決めよじゃないか。」
こんな場面を目の当たりにして、お春とおとみは、それぞれに、ぷいと家に入ってしまう。

さてさて、浅井の家の中。
叔父は藤尾を脇に置き、浅井になにやら苦言をたらたら言っている。それを壁越しに聞いているのは、お春の父親・狂斎だ。  「お春や、こりゃ困ったことだぞ。」

組2-0ちょうどその時、通り雨。
おお、この場を逃げるにゃ今だと、叔父の話を振り切って、浅井は干してる日傘をしまいに駆けだす。お春もあわてて飛び出て、ふたりで日傘をしまいこむ。そのうち雨が上がって、空き地の真ん中、ふたりはちょっといいポーズ。
それ見て、今度は藤尾とおとみが嫉妬する。
  
そのあと、お春は浅井の家に上がり込み、浅井の気持ちを探りに来たが、お春の話をぬらりぬらりと、はぐらかす。
「もう、あんたなんか嫌い!」とは言ったものの、乙女の不安は募るばかり。
一方、嫉妬続きの勝気なおとみは、指をくわえてはいられない。
「今日は私の誕生日」と、浅井を別荘に強引に連れて行き、にぎやかに大宴会。 浅井は、今度はお春を置いて、すっぱり行っちまった。
当の藤尾は、恋わずらい、ついに床に伏してしまい、父の遠山、娘が不憫で不憫でしかたない。
 
中5男1人に娘3人の話に、ここへ加わる男がなんと、お殿様。それは、いつもニヤニヤの峯澤丹波守(ディック・ミネ)だ。
家来従え江戸の街、大手を振って歩いていると、おとみの唄う姿は艶姿(あですがた)、それを見て聴いて、ああ一目惚れ。  さっそく、家来をおとみの家に遣わすが、けんもほろろに断られ、「側室として身請けしたい」じゃ、今の娘はNO!

ここで、ちょいとサブ・ストーリー。
通り雨をいいことに浅井に逃げられた遠山の、次のスケジュールは、殿(丹波守)と一緒に買い物のお供であった。
丹波守は大の骨董収集家、街の骨董屋によく出向く。一方、お春の父・狂斎も骨董好きで、店で三人が出くわした。
この時、計った遠山の悪企み。お春を亡き者にすれば、娘はすんなり浅井と夫婦になれる・・・。
中6で、店先で、殿と狂斎の間を取り持ちながら、誰もが絶品唸る掛け軸、狂斎の目の前でちらつかせ、高値で手が出せないところで、「どうです殿、ここは目の高い狂斎さんに、五十両、出してあげれば?」 
お人よしの丹波守は、そうだなってことになり、狂斎とマニアックに意気投合し、そのまま彼の家まで押しかけて、出会う相手は、可愛いお春。またもや娘を見初める丹波守。 「好みのタイプだ!」 なるほど、殿を知る遠山の悪企み。
そこですかさず遠山は、「五十両と引き換えに、娘のお春は当家で引き取るぞ。」
「えっ! 今さら何を言う!」 と狂斎、言ってはみたが、掛け軸よりも娘が大事。明日、軸を店に返しに行こう。
翌あさ、店を訪ねると、あるじ曰く、「実は掛け軸、ニセモノだった。」 店のあるじは、遠山の言いなりだ。 ニセモノだから買い取り価格はたったの三両。 狂斎、家にあるコレクション、全部売っても、到底足らぬ。このままでは、お春は丹波守のお屋敷に捕らわれてしまう。 
「私が悪かった、夜逃げしよう」と、父はお春に涙ながらに言うのであった。

組3-0さて、話をメインに戻そう。
お春は、別れを言いたくて浅井を探して隣のおとみの別荘へ。
ところが、おとみの企み。出てきた奉公人は浅井の代弁をする。 「帰ってくれ。浅井は、おとみの婿養子に決まったぞ。」
ダブルの悲しみ背負って、お春は父と旅姿。 

中7さあ、大団円を迎えよう。
遠山率いる丹波守の侍どもが、お春を捕えようと、大勢押しかけて来た。
外の騒ぎに気付いた浅井。おとみの別荘二階から、身を乗り出して、「何ごとぞ!」 と下を見る。
屋根から飛び降りた浅井は、侍どもをなぎたおし、愛しいお春を救い出す。

しかし、これではまだまだ問題解決しない。(ね、狂斎さん)
お春がダメなら五十両返せ、が残ってる。あわせて、その五十両、どう工面しよう。
ちょうどその時、骨董屋のあるじが急に顔を出し、「あんたの持ってる、その壺その壺。それは千両万両の価値!」
さすがの狂斎さんも、にわかに信じがたく。 「でも、ホントだよ。」
それを聞いたお春も舞い上がる。浅井に「あたしたち、大金持ちよ!」
  それを聞いた浅井は「俺は金持ち成金は嫌いだ。」と、別荘見ながら捨て台詞を吐き、ひとり長屋へ帰ろうとする。
それ見て、お春、一生の一大事。持っていた万両の壺を地面にたたき付けて粉々に割る。ああっ!父も皆も驚いた。
駆け寄るお春。浅井とお春のふたりを、大勢が取り囲む。よかったよかった。
しかし待て。まだ問題が残ってる。そうそう、藤尾とおとみは、ついにふたりの仲を許します。これでめでたし。めでたし。
  
組4-0いい映画。
作り手たちが楽しんでいるのが、観て伝わってきますか?
エイやで製作したのかもしれないが、今も全く古びない、この軽快感と斬新さが嬉しい。凄いことやってるわけじゃないが、70年以上経って、よもやこうなろうとは、当時の作り手たちは思いもしなかったろう。
ゆるい4ビートに乗って、無理のないフレーズに、日本語歌詞が上手に乗ってます。作詞作曲がんばってます。歌については、御殿様のディック・ミネと、おとみ役の服部富子が巧いのは当然だけど、お春の父親の志村喬が巧いのにびっくり。ストーリー展開は、ジェットコースターに乗った様で、軽快なスピード感と想定外のアップダウンが気持ち良い。1939年(昭和14年)に娯楽映画として公開されたけど、当時としては結構斬新で、どれだけの客が楽しんだのだろうか。

下この映画、カルトなの?! そう聞いて何となく避けて通る人もいれば、カルトなら観ようと言う人もいる。普通に観てちょうだい。 この映画、カルトのレッテル困り顔。


監督:マキノ正博|1939年|69分|
脚本:江戸川浩二|撮影:宮川一夫|オペレッタ構成・作詩:島田磬也|音楽指揮・作・編曲:大久保徳二郎|
出演:片岡千恵蔵 (浪人、浅井禮三郎)|ディック・ミネ (峯澤丹波守)|丹波守の家臣たち※1|
市川春代 (お春)|志村喬 (志村狂斎、お春の父)|
服部富子 (おとみ、香川屋の娘)|香川良介 (香川屋宗七)|小林三夫 (三吉、香川屋の奉公人)|おとみに言い寄る町の男たち※2|
深水藤子 (藤尾、浅井の許婚{いいなずけ}、遠山の娘)|遠山満 (遠山満右衛門、藤尾の父で浅井の叔父にあたる)|
尾上華丈 (骨董屋のあるじ六兵衛)|河瀬昇二郎 (医者、藤尾の「恋の病」を見抜く)|
※1 石川秀道 (松田松助)|楠栄三郎(杉浦)|近松竜太郎 (檜山)|福井松之助 (武林)|富士咲実 (柳川)|大崎史郎 (椿)|
※2 藤村平三郎 (炭屋の若旦那)|竹林大八郎 (小間物屋の若旦那)|嵐壽之助 (酒屋の次男坊)|阪東薪太郎 (米屋の息子)|石丸三平 (乾物屋の息子)|

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鴛鴦歌合戦
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弥次喜多道中記



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