映画「イロイロ ぬくもりの記憶」  監督:アンソニー・チェン  2013年シンガポール映画

ジャールとメイドのテレサ
上




組1-0





  シンガポールに住む中国系の一家の話。
  小学生のジャールーは一人っ子。両親は共働き。父母それぞれに仕事上の問題を抱えていて、日々いっぱいいっぱい。疲れが溜まっている。おまけに夫婦仲は、ぎくしゃくだ。
組2-0  ジャールーはというと、まだまだ甘えたい年頃なのに親は構ってくれない。多感なジャールーだけに、学校でも家でも、いい子に振る舞う一方、悪がき三昧、その揺れ幅が大きい子。
  ある日、テレサという名の、フィリピンのメイドさんが来た。すぐにはこころ開かぬジャールーだったが、徐々にテレサを慕うようになる。時に母親が嫉妬するくらい。

  さて、父親が勤め先をクビになったが、妻に言い出せずに時が過ぎる。職を探すが見つからない。ついに夜間の倉庫警備の仕事に就くが、慣れずに辞める。男として社会に居場所が無くなり うな垂れる父親、そんな夫を腹立たしく思う勝気な母親。そして、夫は起業を思案し、妻は新興宗教に騙される。もう、うんざりだが、かすかに残る夫婦の愛が、最後の最後で支え合う。

  シンガポールの社会情勢に翻弄されるジャールーの両親、フィリピンから出稼ぎに来たテレサの母国での境遇、メイドに対するジャールーの母親の厳しい態度と、優しく接しようとする父親の対比。ジャールーとテレサと母親の三角関係。これらのテーマが織りなす物語。行き届いた演出がいい。


下  シンガポール共和国では、多くの家庭で外国人メイドを雇用しているらしい。雇い主は、メイドの給料よりも高い額のメイド税を支払う義務がある一方、就業している女性が外国人メイドを雇用した場合、所得税控除の優遇措置があるらしい。フィリピンから見ると女性の出稼ぎであり、外貨獲得だ。

  一夜一話でこれまでに取り上げたフィリピンのメイドさんが登場する映画。
  「リトル・チュン」(香港)は、チュンという香港の男の子が主人公の映画。「母と娘」(フィリピン)や2013年の東京フィルメックスで上映の「トランジット」(フィリピン)こちらのページの中ほど は、フィリピンから見たメイドさんの物語。そして「ジェリーフィッシュ」(イスラエル)ではイスラエルに出稼ぎのメイドさんが登場する。

  ある家庭を語る映画となると、エドワード・ヤンの 「ヤンヤン 夏の想い出」 の右に出るものは無い。「イロイロ ぬくもりの記憶」が中国系の家庭を描いているので、どうしても この台湾の映画 「ヤンヤン 夏の想い出」 を思い出してしまう。ぜひ、見比べてください。
 

オリジナル・タイトル:爸媽不在家|Ilo Ilo|
監督・脚本:アンソニー・チェン|シンガポール|2013年|99分|
撮影:ブノワ・ソレール
出演:ジャールー:コー・ジャールー(許家楽)|テレサ(テリー):アンジェリ・バヤニ|ジャールーの母親:ヤオ・ヤンヤン(楊雁雁)|ジャールーの父親:チェン・ティエンウェン(陳天文)|

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