映画「孤独な声」  監督:アレクサンドル・ソクーロフ  “  レンフィルム ペレストロイカ以前/以後  ” から

川崎市市民ミュージアムにて、シネマテーク・コレクション 「レンフィルム ペレストロイカ以前/以後」 から、次の作品を観て来た。  
  (川崎市市民ミュージアム公式サイト:http://www.kawasaki-museum.jp/
  ペレストロイカとは、1980年代後半からソビエト連邦で進められた政治体制の改革運動。


上1     上2

  戦争で精神的な後遺症(心的外傷後ストレス障害)を患った青年ニキータと、彼を愛し彼と共にその障害を乗り越えようと苦悩する村の女性リューバとの、ビターなラブストーリー。

組1-0  赤軍兵士として戦争に加わったニキータが復員し、実家に戻って来た。
  帰りを待っていた父親が驚くほどに、彼は五体満足だった。
  復員してまもなく、ニキータは幼なじみのリューバに出会う。しばらく見ぬ間に美しい女性になっていた。
  学生の彼女は、母を失いひとりだった。収入が無く、その上、続く食糧事情の悪化で彼女は食うに困っていた。
  ふたりの愛は、急速に進んだ。
  彼女の卒業を機に、ふたりは婚姻手続をし一緒に住み始める。住まいは、リューバの家。夢のような日々が始まった。
  しかし、幸せなはずのニキータだが、なぜかどうしても、この幸せを受け入れることができない。不安、無感動、疲労感、鬱、自己嫌悪、現実逃避。そして不能。順調に見えた愛に影が差しはじめた
 
  苦悩する彼は、ついに黙って家を出る。自殺も試みた。街に出てひとりで生活し始める。
  何も知らされず事情がわからないリューバも湖に身を投げたが、助けられてしまう。
  これを聞いたニキータは、我に返り急いでリューバのもとへ。

  一言で言えば、青臭い処女作。
  セリフは、ほぼ無いといっていい。監督が抱く映像イメージが先行し、観る者は追おうとするストーリーと展開される映像との乖離に苦労する。
  ただ、村の春の爽やかな風景、リューバの楽しげな仕草、ニキータが苦悩する精神世界、それぞれは心にストレートに届く。すなおに作品と向き合い、監督の若き感性を楽しみましょう。
  ちなみに、ソクーロフを信奉するあまりか、必要以上に本作を祭り上げるのはどうかな。

下
  
オリジナル・タイトル:Одинокий Годос Человека
英語タイトル:Man's Lonely Voice
監督:アレクサンドル・ソクーロフ|ソ連|1978年|86分|
原作:アンドレイ・プラトーノフ|脚本:ユーリー・アラボフ|撮影:セルゲイ・ユリズジツキー|
出演:アンドレ・グラドフ(ニキータ)|タチャイナ・ゴリャチョワ(リューバ)|V・デグチャリョフ(ニキータの父)|L・ヤコヴレワ(リューバの母)

レンフィルム関連のソ連映画  
  
  一夜一話からピックアップしました。(題名をクリックしてレビューをお読みください。)

アレクサンドル・ソクーロフ
「マリア」 1975-88年
「日陽はしづかに発酵し・・・」 1988年
「セカンド・サークル」 1990年
「エルミタージュ幻想」 2002年       

アレクセイ・ゲルマン
「道中の点検」 1971年
「戦争のない20日間」 1976年     
「わが友イワン・ラプシン」 1984年
「フルスタリョフ、車を!」 1998年  

次の2作品は、こちらからどうぞ

コンスタンチン・ロプシャンスキー  「ミュージアム・ヴィジター」 1989年
ディナーラ・アサーノワ  「パッツァーニ」  1983年  

【 アレクサンドル・ソクーロフ監督の映画 】
 これまでに記事にした、アレクサンドル・ソクーロフ監督の作品です。
 画像をクリックしてお付き合い下さい。

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「孤独な声」
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「日陽はしづかに発酵し‥」
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「セカンド・サークル」
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「エルミタージュ幻想」
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「マリア」
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「フランコフォニア ルーヴルの記憶」


【 一夜一話の歩き方 】
下記、タップしてお読みください。

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